2013 Fiscal Year Research-status Report
機能性微生物を用いた植物根圏への芳香族化合物の吸着・濃縮と分解の促進
Project/Area Number |
25340068
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
森 一博 山梨大学, 医学工学総合研究部, 准教授 (90294040)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 靖浩 山梨大学, 医学工学総合研究部, 助教 (50377587)
遠山 忠 山梨大学, 医学工学総合研究部, 助教 (60431392)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 生物吸着 / 水生植物 / 根圏微生物 |
Research Abstract |
水生植物根圏における芳香族化合物の浄化作用を強化することへの応用を目的として,供試化学物質(2-ニトロフェノール(2-NP),3-ニトロフェノール(3-NP),4-ニトロフェノール(4-NP),2,4-ジニトロフェノール(2,4-DNP),2-クロロフェノール(2-CP),3-クロロフェノール(3-CP),4-クロロフェノール(4-CP),ビスフェノールA(BPA),ビスフェノールF(BPF),アニリン)に対して優れた吸着作用を示す菌株の探索を試みた。予備試験の結果,特に2,4-DNP,4-CP,BPA,BPFにおいて比較的高い生物吸着作用が観察された。そこで,複数の水生植物の根面,及び活性汚泥より216株の微生物を網羅的に分離し,各分離株のこれら4種類の供試物質懸濁液中(初期菌体濃度OD600で1.0に調整)での吸着作用の比較を試みた。その結果,何れの菌株においても30分以内に濃度の減少は終了し,全供試菌株の平均除去率は2,4-DNPで1.11%,4-CPで2.99%,BPAでは9.29%,BPFでは4.17%であったが,各物質に対して最大吸着除去率として2,4-DNPで平均の9倍,4-CPで平均の3倍,BPAで平均の3.4倍,BPFで平均の3.6倍の吸着効果を示す菌株が確認され,特に,2,4-DNPでは平均吸着率の5倍を上回る菌株を十株以上得ることに成功した。一方,同じく芳香族化合物を効率的に分解する微生物を馴化した水生植物の根面において探索した結果,特にBPAにおいて優れた分解菌の存在が確認された。今後,分離された吸着あるいは分解微生物の詳細な特性試験を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1 芳香族化合物を特異的に吸着する微生物の探索 本年度は,水生植物の根面より微生物を分離し,供試化学物質の吸着作用を示す微生物のライブラリーを構築することを試みた。複数の水生植物根面並びに活性汚泥より216株の微生物株を分離し,10種類の芳香族化合物を用いた予備試験から生物吸着の可能性が期待された2,4-DNP,4-CP,BPA,BPFの4種類の芳香族化合物とこれら分離株(600nmの吸光度として同一の菌体濃度)の全ての組み合わせについて吸着試験を実施した。この結果,菌株により各供試物質に対する吸着除去作用は大きく異なることが明らかとなった。得られた結果を整理し,全供試菌株平均の3~9倍優れた吸着作用の菌株を含めて多数の吸着性微生物の分離に成功した。また,次年度に先駆け2,4-DNPに関しては,除去作用が優れていた選抜菌株による詳細な吸着試験を実施し,何れの株でもFreundlichあるいは Langmuir吸着等温式によく適合する吸着作用を確認した。2,4-DNPは広い産業利用と水環境中からの検出状況から処理技術の開発が急がれる物質である。 2 芳香族化合物を効率的に分解する微生物の探索 上記1と同様に,芳香族化合物に焦点を絞り,分解微生物を同じく水生植物の根面より分離することを試みた。水生植物の根面から単一炭素源を用いた平板培養法による分解菌の探索を試みた結果,2,4-DNPやBPAの分解作用を示す菌株を分離した。BPAもプラスチック可塑剤をはじめ広く産業利用される一方内分泌攪乱作用の疑いから浄化技術の開発が望まれる有機化学物質である。 以上1並びに2の結果より,本研究は水環境への影響が危惧される芳香族化合物を吸着または分解する作用をもつ微生物の探索に成功し,今後その詳細な特性解明と水質浄化系への応用が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に継続して根圏の機能改善に用いる機能性微生物の探索を上述の1芳香族化合物を特異的に吸着する微生物の探索,及び2芳香族化合物を効率的に分解する微生物の探索,により行うと共に,新たに下記の課題を進める。 3 分離微生物の吸着特性の解明 上述の1で得られた微生物ライブラリーより,特に優れた株から順次,供試物質を用いた詳細な吸着試験を実施する。その際に,微生物の培養フェーズ,温度,pH,他の共存物質,植物との共培養条件などの影響を詳しく検討する。さらに,吸着モデルの適用性やどのような細胞部位あるいは代謝物に吸着・濃縮するのかなどの詳細な観察結果を交えて多様な視点から吸着・濃縮のメカニズムを明らかにする。なお,植物との共培養には無菌化処理した植物も用いるが,既に我々は多数の水生植物の無菌化に成功しており植物材料の調整等に支障は生じない。 4 分離微生物の分解特性の解明 上述の2で得られた微生物ライブラリーより,優れた分解作用を持つ株を選択し,詳細な分解試験を実施する。その際に,基質特異性,濃度に対する応答,温度,pH,植物との共培養条件などの影響を詳しく検討する。
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