2015 Fiscal Year Annual Research Report
鉄酸化物分別溶解法を用いた土壌から地下水への砒素溶出メカニズム解析手法の開発
Project/Area Number |
25340079
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Research Institution | Center for Environmental Science in Saitama |
Principal Investigator |
石山 高 埼玉県環境科学国際センター, 土壌・地下水・地盤担当, 専門研究員 (80297621)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
濱元 栄起 埼玉県環境科学国際センター, 土壌・地下水・地盤担当, 専門研究員 (40511978)
八戸 昭一 埼玉県環境科学国際センター, 土壌・地下水・地盤担当, 主任研究員 (70415397)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 砒素 / 地下水汚染 / 鉄酸化物分別溶解法 / ジチオナイト-クエン酸ナトリウム抽出法 / 砒素溶出メカニズム |
Outline of Annual Research Achievements |
砒素による地下水汚染は、日本をはじめ世界各地で大きな環境問題となっている。砒素汚染に有効な対策を実施するには、汚染源や汚染範囲の特定とともに土壌から地下水への砒素溶出メカニズムの解明が不可欠である。本研究では、鉄還元型の砒素溶出メカニズムに着目し、土壌中の鉄酸化物を選択的に抽出する鉄酸化物分別溶解法を適用した砒素溶出メカニズムの解析手法を開発した。 最終年度は、開発した解析手法を用いて、埼玉県中西部地域(砒素が検出される井戸が多数存在)における砒素溶出メカニズムについて解析を試みた。解析の結果、当該地域では水田用灌漑用水の利用に伴い地下水位が一時的に低下し、このことにより帯水層直上のシルト層から砒素が溶出したことが判明した。また、この地域一帯には泥炭土が堆積していることが認められた。泥炭土による地下水の還元化と水田利用に伴う地下水位の低下により、本地域では自然由来の砒素が溶出したことが明らかとなった。 3年間の研究成果からは、①鉄還元型の砒素溶出メカニズムの解析手法として鉄酸化物分別溶解法は非常に有用であること、②鉄酸化物分別溶解法としてはDC法(ジチオナイト-クエン酸ナトリウム抽出法)が最適であること、③DC法を埼玉県中西部地域で掘削採取した地質試料に適用して砒素と鉄の間に良好な相関性を見いだしたこと、④本地域の地下水砒素汚染は有機物含量の高い泥炭土の存在と農業利用に伴う地下水位の低下が原因で発生していること等を明らかにした。鉄酸化物分別溶解法として一般的に用いられている改良BCR法(塩化ヒドロキシルアンモニウム抽出法)やTamm法(酸性シュウ酸塩抽出法)では、砒素と鉄の抽出量の間に良好な相関性は認められなかった。 本研究の成果は行政施策にも活用されており、埼玉県が実施している地下水質管理事業における継続監視調査や周辺調査の効率化等にも多いに役立っている。
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