2015 Fiscal Year Annual Research Report
海産ゴカイ類への消化管経由でのPFOSの移行動力学の解明
Project/Area Number |
25340088
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
櫻井 健郎 国立研究開発法人国立環境研究所, 環境リスク研究センター, 主任研究員 (90311323)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 淳 熊本県立大学, 環境共生学部, 准教授 (00414368)
矢部 徹 国立研究開発法人国立環境研究所, 生物・生態系環境研究センター, 主任研究員 (50300851)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 汚染質動態とモデリング / 残留性 / 生物蓄積 / 底生動物 / 動力学 / 吸収 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)の、海産多毛類イソゴカイへの、消化管を経由した移行動力学を明らかにすることを目的とする。本研究で確立した個体別飼育曝露系、添加餌作成方法を用いて、今年度は移行本実験を実施し、本実験試料中PFOS濃度の分析、結果の動力学解析を行った。本実験は対照区と曝露区とを設定し、それぞれでゴカイを個体別に飼育容器内に導入した上で、水位を一日周期で規則的に変化させた。1日目に、曝露区ではPFOSを添加し対照区では無添加の配合餌料を、それぞれ摂餌させた。曝露時の摂餌率は、両実験区共に30%程度だった。導入前と、曝露給餌後に17日目まで、ゴカイおよび生息環境の水試料を定期的に採取した。これら試料および添加、無添加餌中のPFOS濃度を既報に従い分析し定量した。曝露は、摂餌数によりおよそ3.2~19 ngの範囲であった。水試料および対照区試料の分析により、汚染の無い環境で実験が行われたことが確認できた。曝露区において、摂餌数で規準化した体内存在量について、一次動力学によるモデル解析を行った。消化管からの取り込み効率(消化管を通過するPFOSのうち体内に取り込まれる割合)はほぼ100%と推定された(モデルによる計算値は150%(95%信頼区間120%~200%)で、100%より高い値となったのは実験上のばらつきなどが原因と考えられる)。これはPFOSについての魚類における既往知見と同様であった。体内からの消失半減期は91日と計算されたが、体内存在量は、5日目以降ほとんど減少しておらず、減少は統計学的に有意ではなかった。この半減期は、PFOSについての他の水生動物における先行研究や別に実施したイソゴカイへの海水からの取り込み実験で得られた半減期と比しても長く、この理由は現時点ではわからない。今後、類縁の化合物を含めてさらに検討を進める必要がある。
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Research Products
(3 results)