2014 Fiscal Year Research-status Report
塗布型擬似酵素によるポリオレフィンの機能性オリゴマー化技術の開発
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25340090
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
中谷 久之 長崎大学, 工学研究科, 教授 (70242568)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ポリプロピレン / オリゴマー / マイクロファイバーセルロース / 相容化剤 |
Outline of Annual Research Achievements |
擬似酵素(TiO2/ポリエチレンオキシド(PEO)/リノール酸メチル(ML))を用いて作製したPPオリゴマーの構造分析および相容化剤性能の詳細な検討を行った。PPオリゴマーは、作製条件が同一ならば、オリゴマー化率約10%、数平均分子量(Mn)=2,000および分子量分布(Mw/Mn)=2.3のものが得られることを確認した。このオリゴマーの分子構造はMLのオリゴマー体がグラフト重合したものであることが分かった。そのグラフト率はPP鎖に対して28 mol%であった。詳細な分光分析により、マイクロファイバーセルロース(MFC)に対する修飾性能を確認した。PP/MFC複合材料に対する相容化剤性能は、一般的な相容化剤であるマレイン酸変性PP(MAPP:Mn=4,000, Mw/Mn=2.3, マレイン酸含有率8-10%)と比較しながら、MFCの分散性およびPPマトリックスとの接着性を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて検討した。その結果、PPオリゴマーおよびMAPPとも、これらの添加によりMFCの凝集体の生成の抑制に対しては改善効果を示した。しかしながら、MAPP添加の場合、部分的にMFCの表面が観察され、接着性が良くないことが分かった。一方、PPオリゴマー添加ではMFC表面の露出は観測されず、接着性が良いことが分かった。力学的測定からPP/MFC界面の強度を見積もった所、PPオリゴマーの添加の方がより高い弾性率を与えることが確認された。各相容化剤添加によるPP/MFCの親水性の変化を調べた所、PPオリゴマーの添加では親水性が上がり、MAPPの場合は下がることが分かった。この結果より、PPオリゴマーの優れた接着性能は、PPマトリックスと相溶化してマトリックスの親水性を上げるためと結論付けた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度に引き続き、PP/ナノセルロース複合材料用相容化剤としてのPPオリゴマーの作製を行った。本年度は次の検討を行った。1)塗布型で擬似酵素を使う。2)オリゴマーの回収率の目標を30%とする。3)片末端に親水基を持つオリゴマーを主に作製する。 1)および2)に関しては塗布型では効率が悪いこと。回収率を上げると分子量が低下するという結果を得た。3)に関しては、NMR等を使って分析を行い、オリゴマーの構造を明らかにした所、MLのオリゴマーがPPオリゴマー主鎖にグラフト重合していることが明らかとなった。この構造は、片末端に親水基を持つオリゴマーのようにPPマトリックスの親和性(相溶性)を維持することが分かった。 高密度ポリエチレン(HDPE)オリゴマー化に関しては、擬似酵素によるオリゴマー化は難しいことが分かった。これの結果を踏まえ、ポリ塩化ビニル(PVC)の官能基変換によるポリビニルアルコール(PVA)化およびポリスチレン(PS)のオリゴマー化の検討を行った。その結果、PVAへの変換率は現段階で2%程度と低い値であるが、可能であることを確認した。またPSのオリゴマー化はPPオリゴマー化よりも緩やかな条件で行えることも確認した。 PPオリゴマーの作製に関しては、高収率化は達成できなかったが、現段階で作製できたオリゴマーが市販の相容化剤より優れていることが分かった。また特殊な構造を持つオリゴマーであることも明らかにした。HDPEオリゴマーの代わりにPVCのPVA化やPSオリゴマーの作製に成功した。さらには、年度途中の11月に大学移籍を考慮して、本研究の現在までの達成度を「おおむね順調に進展している」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
PPオリゴマー回収率の向上、擬似酵素の塗布型および長波長吸収型への転換を目標としていた。しかしながら、回収率を上げるとオリゴマーの分子量低下が伴うこと、塗布型および長波長吸収型では回収率が極端に低下することが分かった。そこで、最終年度では、現回収率約10%の条件に固定し、オリゴマーの構造および組成を相容化剤用に最適化する。目標の達成のために、擬似酵素およびMLを変えて得られたオリゴマーの構造および組成をNMRや熱分解GC/MS等で詳細に分析しながら、最適化する。 実用化を図るために、PP/セルロース系複合材料の一番の問題点である吸水時における弾性率の大幅な低下に取り組む。具体的には、他の相容化剤を添加したものと比較検討しながら、弾性率の低下が少ない構造にPPオリゴマーを分子設計する。 同様な手法を用いてPVCおよびPSの官能基変換およびオリゴマー化を行う。三級水素を持たないポリエチレン構造のものは劣化速度が極端に遅く、オリゴマー化に適していないのが本年度のHDPEのオリゴマー化の検討で明らかとなったことから、PVCに関しては塩素から水酸基への官能基変換によるPVA化の検討を続ける。一方、PSに関しては、現在までの予備実験において、数平均分子量が2千程度のオリゴマーが塗布型かつ長波長吸収型擬似酵素で得られることを確認した。このPSオリゴマーは生分解性も有していることが分かったので、このPSオリゴマーの構造を分析し、今後、この生分解性を生かした用途の開発を行う予定である。
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Causes of Carryover |
擬似酵素(TiO2/ポリエチレンオキシド(PEO)/リノール酸メチル(ML))を用いてポリプロピレン(PP)オリゴマーおよびポリエチレン(PE)オリゴマーを得て、それぞれ複合材料用の相容化剤および生分解性界面活性剤として応用することを計画していた。PPオリゴマーは得ることができ相容化剤としての検討を行った。しかしながら、PEオリゴマーは得ることができず、生分解性界面活性剤への検討へ進めなかった。そのため、一部、使用額が余った。また、11月に大学を異動した。そのため2か月ほど実験が滞ったので使用額が予定より少なくなった。 以上により、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
実用化を図るために、PP/セルロース系複合材料の一番の問題点である吸水時における弾性率の大幅な低下に取り組む。具体的には、弾性率の低下が少ない構造にPPオリゴマーを分子設計する。 同様な手法を用いてPVCおよびPSの官能基変換およびオリゴマー化を行う。三級水素を持たないポリエチレン構造のものは劣化速度が極端に遅く、オリゴマー化に適していないことが本年度のHDPEのオリゴマー化の検討で明らかとなったことから、PVCに関しては塩素から水酸基への官能基変換によるPVA化を引き続き検討する。一方、PSに関しては、現在までの予備実験において、数平均分子量が2千程度のオリゴマーが塗布型かつ長波長吸収型擬似酵素で得られることを確認した。このPSオリゴマーは生分解性も有していることが分かったので、このPSオリゴマーの構造を分析し、今後、この生分解性を生かした用途の開発を行う。
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Research Products
(4 results)