2013 Fiscal Year Research-status Report
電気化学的手法を用いた廃棄物系有機物からの高純度水素の製造技術の開発
Project/Area Number |
25340098
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
加茂 徹 独立行政法人産業技術総合研究所, 環境管理技術研究部門, 研究グループ長 (10186017)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | リサイクル / 水素製造 / 水蒸気ガス化 / 燃料電池 |
Research Abstract |
本研究では、多様な廃棄物の中で塩素や臭素等の有害なハロゲン化合物等を多く含み、処理が困難な使用済み電子機器中のプラスチックから電気化学的な手法を用いて燃料電池用の高純度水度を1段で製造するプロセスを開発することを目的としている。提案者は、水蒸気ガス化反応速度が混合炭酸塩中のカリウムの濃度に比例し、混合塩の融点が低くなるに従って大きくなること見出した。しかし炭酸塩は腐食性が高く、リチウムは高価であるなど問題も多かった。使用済み電子機器には、ニッケル等の水蒸気ガス化触媒や多孔質電極材とし利用できる金属も多く含まれている。初年度は、水蒸気ガス化に対する反応系内に共存するニッケル微粒子の影響を既存の実験装置を用いて研究すると共に、溶融塩浴に電極を隣接させる新型反応器を設計・製作する。 ①フェノール樹脂の水蒸気ガス化は、触媒が共存しない場合には通常950℃以上の高温下で起きることが知られている。本研究では、ニッケル微粒子存在下でフェノール樹脂を水蒸気ガス化するとニッケル微粒子が触媒となって650℃程度の比較的低温でもガス化が促進され、水素および二酸化炭素の生成が確認された。また、混合炭酸塩中にニッケル微粒が共存しても同様の触媒作用が観測され、使用済み電子機器を水蒸気ガス化することによってタール等の炭素質残渣をほとんど含まない金属を回収することができることが確認された。 ②従来の固体酸化物電解セルを用いた高純度水素の製造では、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)の両面にニッケルとYSZ の複合材(Ni-YSZ サーメット多孔質)を三層に積層したセル用隔膜が使用されてきた。本研究では初年度に固体酸化物電解質に炭酸溶融塩浴を接合し、水蒸気を炭酸塩に吹き込みながら700℃で試料を水蒸気ガス化し、生成したガスをエネルギーとして固体電解質表面に電位差を発生させる反応装置を試作した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当研究室では、水蒸気ガス化を用いて使用済み電子機器から有用資源およびエネルギーを回収する一連の研究に対し、金属を回収する部分は産総研の独自の予算を用い、科研費では水蒸気ガス化および高純度水素の製造に特化して研究する計画である。 ニッケル微粒子単独、あるいはニッケル微粒子と混合炭酸塩共存下では、水蒸気ガス化反応は促進され、600~700℃の比較的低温下でもフェノール基板から効率的に水素を製造できることを明らかにした。ニッケル微粒子を用いた場合、ガス化反応の活性化エネルギーやA因子は小さく、ニッケル微粒子が触媒となっていると共に、ニッケル粒子と固体試料および水蒸気との物理的接触が重要であることが分かった。これらの成果は科研費の対象であるが、既存の反応器や分析装置を用い共通部分も多かったので金属回収の研究予算を主に利用した。本成果を特許として申請すると共に、インドで開催された国際プラスチックリサイクル研究会議で発表し、現在、論文を投稿するための準備を行っている。 本研究では、両面にニッケルとYSZ の複合材を積層した円盤状のイットリア安定化ジルコニア(YSZ)に同じ径のセラミックパイプを上下に接着し、溶融炭酸を入れて上下から水蒸気を吹き込み円盤の両面に電位差を発生させ電位を測定する。しかしセラミックの円盤とパイプを接続し、800℃付近まで昇温して一定に保つと溶融炭酸塩が接着面より少しずつ漏洩したために新型の反応器の設計・製作が遅れ、納入がH26年4月15日となった。円盤状の電極は高価で、多種類の電極の購入および実験が必要であり、科研費は主に電極の購入および実験補助員の人件費に充てる予定であった。しかし反応器の発注が遅れたために電極の発注が年度内に間に合わず、実験することもできなかったので多くの予算を繰り越すことになった。
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Strategy for Future Research Activity |
1)反応器の試作:直径30 mmの円盤状のセラミックと同径のセラミックパイプを確実に接着させるため、各種の高温用セラミックを検討する。また円盤状のセラミックの表面およびセラミックパイプの断面を少し削り接着材が付着し易く加工すると共に、パイプが触れる円盤表面を凹面に削り、接着が確実に行われるよう改造する。さらに接着する際は上下から常に圧力をかけてゆっくり加熱し、隙間やヒビが入らないよう保持する。また加熱・実験中も常に上下から圧を掛けて溶融した炭酸塩が隙間から漏洩しないように反応器を製造する。それでも溶融炭酸塩が漏れる場合は、末端の閉じたセラミックパイプを特注して反応器を製造する。 2)電極の試作:両面にニッケルとYSZ の複合材(Ni-YSZ サーメット多孔質)を積層した直径30 mmの円盤状のイットリア安定化ジルコニア(YSZ)を組み込んだ反応器を試作し、上部から燃料ガス、下部から酸素を吹き込み燃料電池が形成されていることを確認する。次に上部に混合炭酸塩を入れ、モデル反応として700℃で加熱した炭酸塩中で活性炭を水蒸気ガス化して発生した水素によって燃料電池が形成されていることを確認する。さらに下部から水蒸気を導入し、水蒸気の電気分解によって水素が生成されることを確認する。円盤状の固体電解質の性状や厚さ、表面金属の種類や形状およびの電極の各種パラメータと反応との関係を明らかにし、より適した電極・反応器を作成する。 3)反応条件の検討:電気化学反応に対する炭酸塩の組成、反応温度、水蒸気の導入量および試料の量・性状の影響を検討する。また、電極や電極上での反応に対する試料中に含まれる臭素や塩素の影響を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
新型の反応器の設計・製作が遅れ、納入がH26年4月15日となったために見かけ上H25年の備品費の使用が0円となった。科研費は高価な円盤状の電極を多数購入する費用および実験補助員の人件費に充てる予定であった。しかし反応器の納入が遅れたために電極の発注が年度内に間に合わず、実験することもできなかったので多くの予算を繰り越すことになった。 溶融炭酸塩の漏洩防止を完了したので、予定の実験を進める計画である。
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