2014 Fiscal Year Research-status Report
土壌における消毒剤散布が及ぼす消毒副生成物の発現および消長に関する研究
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25340102
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Research Institution | Azabu University |
Principal Investigator |
高木 敬彦 麻布大学, 獣医学部, 教授 (30163182)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 土壌 / 消毒剤 / 副生成物 / 変異原性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は感染症対策で散布される消毒剤の土壌への影響に関する検討の一環として、変異原性検出を指標に生成される有害な消毒副生成物についての基礎的な検討を行っている。平成26年度は、前年度における研究結果から首都圏で採取した黒ぼく土、褐色低地土、灰色低地土の各2試料(計6試料)にアルカリ系、複合系、塩素系の各消毒剤をそれぞれ散布して生成された副生成物で塩素系消毒剤を散布した6土壌についてアセトンを用いた超音波抽出法により得られたものに高い変異原性が認められた。これによりアセトン+超音波抽出による前処理で変異原性物質を効率的に抽出できることが認められたことから、この試験系を用いて市販されている他の塩素系消毒剤で、過去において使用履歴がある2品について検討した。測定はSalmonella TyphimuriumTA100およびTA98株を使用したmicrosuspension法によりそれぞれのアセトン抽出物で行った。今回も前年度と同様にそれぞれ6土壌に散布(計12試料)して得られた副生成物の変異原性について調べた結果、1市販品において6土壌全てで変異原性を示す副生成物が確認された。これらにより塩素系消毒剤には散布後に土壌環境へ悪影響を及ぼすものがあることが示唆された。一方、前年度で高い変異原性を示した塩素系消毒剤について、散布後に生成された変異原性物質の消長についても検討した。被験試料はそれぞれ塩素系消毒剤を散布した土壌を多めに作製して用い、処理後初日、1週間後、2週間後、1ヶ月後~6ヶ月後まで定期的に適量を採取して変異原性測定を行った。その結果、各土壌における塩素化反応副生成物は、6ヶ月後には低下傾向が窺えるものの、長期間に亘り高い変異原性を保持することが分かった。今後は計画通り、6土壌について1年後まで測定を続け、消毒副生成物の変異原性の挙動について検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成26年度末までに6土壌における変異原性の消長について散布後6ヶ月までのデ-タを取る予定であったが、前年度の土壌採取の遅れが原因となり全体に若干の遅れを生じている。この遅れの原因は、研究開始年度での土壌の採取にあたり、採取の根拠とすべき全国版土壌分類図(公的資料)と現状の土壌分布が一致せず、正確な情報を得られなかったことにある。また土壌分類も専門家の間で世界標準に合わせた新たな改正がなされている段階であったため、新しい分類に関する情報を基にした土壌採取に手間取ったことも影響している。これらの理由により、当初の研究計画よりも少し遅れを生じているが、最終年度中には当初の計画通り散布後1年間の消長に関する測定は終了する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、引き続き生成された変異原性物質の消長をモニタリングすると共に、新たな菌株を用いて主たる変異原性物質の推定を行う予定である。また、これまで作製した塩素系消毒剤散布土壌の一部をそれぞれ冷凍保存してあることから、変異原性を示す物質の推定を機器分析で行う予定である。
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Causes of Carryover |
。次年度使用額が発生した理由については、平成26年度計画において当初の計画に遅れが生じた試薬分の一部である。当初は平成26年度に散布後6ヶ月までのモニタリングを行う予定であったが、その分を平成27年度で行う予定でいる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額については、試験に必要な培地を作製するための試薬として使用する予定である。
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