2015 Fiscal Year Research-status Report
生物多様性と防災機能の両立に向けた海岸林と海浜草原のデザイン案出
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25340109
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
永松 大 鳥取大学, 地域学部, 教授 (20353790)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 海浜砂丘 / 草原生態系 / 外来植物 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は研究3年目にあたり,昨年度に引き続いて,主に海浜草原と砂丘環境の関係解明に取り組んだ。野外調査は鳥取砂丘を対象に精力的にデータを蓄積した。一方,計画していた東日本大震災津波被災地における海浜生態系の現状把握については,調査区を設置した福島県相馬市松川浦における災害復旧工事のため,現地への立ち入りが難しく,立ち入っても改変による影響が大きすぎたため,27年度は野外調査を断念した。28年度に松川浦を訪れ,25年度に測定した結果と比較する計画である。 海浜草原と砂丘環境の関係解明については,鳥取砂丘で集中的な植物調査を実施し,砂丘内に分布する1087群落を認識した。優占種分類では,19種の群落に区分され,面積の6割はケカモノハシ,コウボウムギ優占群落となった。砂丘幅との関係から見ると,汀線からの距離に応じて分布する群落も一部にはあったが,ほとんどの群落は汀線(砂丘幅)との関係ははっきりしなかった。28年度にむけて,砂丘の物理的な要因,人為的な撹乱要因を含めた環境要因との関係解析をおこない,この結果から鳥取砂丘を事例に,砂丘幅と海浜草原の関係についてとりまとめを行う予定である。このほか,特異な分布を示すハマゴウを対象に,詳細な分布調査を行っている。これについては28年度も継続して形態調査・成長解析をおこなう予定である。 本課題の研究成果の発表について27年度は,英語論文の投稿準備および,成果の一部に関する国内学会での成果発表をおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
27年度は4年計画の3年目であった。研究成果の発表について,2年目にはとりまとめた投稿論文2報が掲載されたが,3年目は1本にとどまった。投稿に先だって行う学会発表に関しては,国内学会にて3件の発表を行った。投稿論文については現在英文誌に投稿準備を行っているところで,これは想定の範囲内である。 調査については,当初計画にて掲載した,海浜砂丘での風速・塩分の観測が一部欠測となっている。これは1-2年目の調査の結果,比較対象に想定していた北条砂丘の現況が,想定していた研究目的と異なっていたためで,これらの測定計画は断念することとした。 計画遂行上は,東日本大震災の津波被災地における野外調査地が最も問題で,研究の当初計画で示した宮城県沿岸では大規模な防潮堤・土盛り・クロマツ植栽が実施され,一部に残ると考えていた保全地が全く残らないことが明らかとなったため,これを回避して福島県松川浦に代替地を求めた。松川浦は調査に適しており,平成25年度に調査地を設定して現況を把握することはできたが,当時の情報とは異なりその後この場所も復旧工事の進展により調査した海浜植物群落が全面的に消失した。このため,当初計画どおりに調査が進んでいないが,工事の終了を待って,その間の変化をさぐる調査を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
28年度は,研究の最終年にあたる。データ採取については一部が当初計画通りには進行していないが,研究期間内に蓄積されたデータは膨大で有用性に満ちている。これらのデータを使って解析を進め,研究成果をとりまとめる方向性を重視する。 ただし,東日本大震災被災地(福島県相馬市松川浦)については,工事が一段落したところでできるだけ28年度中に現地調査を行う予定である。松川浦の調査地については,福島大学黒沢高秀教授の協力をいただいており,定期的に現地を訪れている黒沢教授からの情報をもとに調査の実施について検討していく。 本研究の最終とりまとめにあたっては,海浜砂丘の自然草原保全と背後の海岸林のバランスについて検討を進めるとともに,これらを外部に積極的に発信していく。成果発信は学会発表や論文投稿,地域社会でのイベント等での話題提供等が考えられる。当初計画とは少し異なったものとなるが,砂浜海岸,砂丘における生物多様性と防災機能の両立に向けて,海岸林と海浜草原のバランスについて新たな知見を生み出していきたい。
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Causes of Carryover |
東日本大震災被災地に設置した調査地(福島県相馬市松川浦)での現地調査が現地の状況によりととのわず,現地への出張をキャンセルしたことを主な要因である。現地調査にかわり,調査・解析に必要な必要な文献類等を購入したが,計画していた旅費との差額が次年度使用額として繰り越された。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
28年度は,福島県相馬市松川浦の状況に応じて現地調査を行う予定であり,次年度使用額はこの旅費の一部として使用される。松川浦では28年度中に工事が終わらず調査データが取れない場合でも,その状況を経時的な記録として残しておくために現地への再訪が必要であり,次年度使用額は使用が確定的である。
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