2013 Fiscal Year Research-status Report
亜臨界と微生物の逐次反応による未利用バイオマス資源化の分子機構
Project/Area Number |
25340117
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Muroran Institute of Technology |
Principal Investigator |
菊池 愼太郎 室蘭工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70148691)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 亜臨界水 / リグニン / エタノール発酵 / リグノセルロース系バイオマス / 発酵阻害物質 / リグニン分解糸状菌 |
Research Abstract |
既にトウモロコシなどのデンプン系バイオマスを原料とするバイオエタノール製造が実用化されている。しかしリグノセルロース系バイオマス多糖類はデンプンよりも化学的に安定なセルロースであり、さらにセルロース層がリグニン層で被覆されて機械的・化学的に強固な構造体であるため、実用的な発酵原料としては未だ十分には利用されていない。 他方、水を密閉容器内に封入して100℃以上の温度で加熱して亜臨界状態の水(亜臨界水)とすると、水分子間の水素結合が破壊されて親水性と親油性の両親媒性を示すようになると共に、酸と同様に強い加水分解能を発現する。 本研究では高リグニン含有バイオマス(エゾノネジモク等の未利用海藻、アーモンド等の種実類硬殻及び籾殻などの農産廃棄物)を供試材料とし、亜臨界水処理によって細胞壁セルロースを被うリグニン層のみを選択的に分解除去した後、露出したセルロースを酵素によってグルコースへ糖化し、これを発酵基質とするリグノセルロース系バイオマスのエタノール変換について検討する共に、亜臨界水処理に伴うリグニンと糖類の分子挙動について検討した。 その結果、セルロース系バイオマスを比較的低温の亜臨界水で処理するとリグニン層のみが低分子化してセルロース層から遊離し、セルロースの酵素糖化濃度が大きく上昇するする事を見出した。しかし、亜臨界水処理条件によっては供試材料からの理論的エタノール生成濃度(対糖モル収率)が大幅に低下し、亜臨界水処理に起因するエタノール発酵阻害物質が生成したと推定された。以上の成果は、セルロースを被覆するリグニン類の化学構造、あるいは被覆態様がリグノセルロース系バイオマスによって異なることを示唆するものである。 なお、研究の過程でリグニン類分解活性を有する新規の糸状菌を単離した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究は、亜臨界水の加水分解活性を利用してリグノセルロース系バイオマスからリグニンを除去し(脱リグニン)、結果的に露出するセルロースを糖化してエタノール発酵基質として利用することを計画したものであり、種々の高リグニン含有バイオマス(未利用海藻、種実類硬殻、農産廃棄物など)をエタノールへ転換し得ることを実証している。この成果は当初の研究計画を十分に達成している。さらに亜臨界水処理条件によっては発酵阻害物質が生成する場合のあることを見出し、この結果からリグノセルロース系バイオマスにおけるリグニン類の化学構造の違いや、リグニン類によるセルロース被覆態様について考察しており、この事は当初の研究計画以上に進展していることを示す。また新規のリグニン分解糸状菌の分離は、リグノセルロース系バイオマスのエタノール転換の観点からして、平成25年度の研究が当初の研究計画以上に進展していることを示すものである。
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Strategy for Future Research Activity |
亜臨界水によって生成するリグニン分解分子種を同定し、当該分子がエタノール発酵菌(酵母 Sacharomyces cerevisiae)のエタノール発酵系に及ぼす影響について生化学的に精査する。さらに亜臨界水処理に起因する発酵阻害分子(リグニン分解分子種)生成の有無、あるいは生成濃度が供試験材料によって異なることから、亜臨界水によるリグニン類分解は単に亜臨界水の加水分解性に依るだけではなく、リグニン分子種も関与していると推定されることから亜臨界水によるリグニン分解機構についても研究する。 他方、従来は担子菌類である白色腐朽菌のみが高いリグニン分解活性を発現するとされてきたが、新規のリグニン分解糸状菌を分離したことから、この糸状菌のリグニン分解活性について担子菌のそれとの異同について明らかとし、また遺伝子工学的手法によって糸状菌リグニン分解遺伝子を他の微生物特に細菌類に導入することを試みる。 さらに亜臨界水による脱リグニン、糖化、エタノール発酵と新規糸状菌によるそれらとを比較してリグノセルロース系バイオマスのエタノール転換の実際についても研究する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度未使用額と平成26年度交付額を併せて、機器等の購入及び謝金に充当するため。 購入計画機器:微生物増殖自動計測装置及び消耗品類 謝金:岐阜大学・生物資源学部・高見澤一裕教授(目的:リグノセルロース系バイオマス糖化の実際に関する技術指導)
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Research Products
(6 results)