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2014 Fiscal Year Research-status Report

亜臨界と微生物の逐次反応による未利用バイオマス資源化の分子機構

Research Project

Project/Area Number 25340117
Research InstitutionMuroran Institute of Technology

Principal Investigator

菊池 愼太郎  室蘭工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70148691)

Project Period (FY) 2013-04-01 – 2016-03-31
Keywordsバイオマス / リグニン / 亜臨界処理 / リグニン分解微生物 / エタノール発酵 / バイオエタノール
Outline of Annual Research Achievements

海藻エゾノネジモク(Sagassum yezoense)は、乾燥重量の40%以上に相当するリグニンを含有するため、バイオエタノール転換にはリグニン除去(脱リグニン)と細胞膜(セルロース、グルコース重合体)露出が必須である。この海藻を亜臨界水で処理したところ、90%以上のリグニンが分解除去され、他方、セルロースに由来する少糖類や単糖類は殆ど検出されなかった。次いで処理後の海藻に複数の糖化酵素を作用させたところ、初発海藻乾燥重量1Kgから乾燥重量で約600gのグルコースを得たので、これをビール酵母(Saccharomyces cerevisiae)を発酵菌とするエタノール発酵に供したところ、対糖モル収率は約30%に留まった(理論値:51.1%)。しかし処理後に残存するセルロース残渣を水洗し、再度、糖化とエタノール発酵を行ったところ、対糖モル収率は理論値にまで回復した。以上の結果は海藻の亜臨界水処理で生じるリグニン分解物が、糖化酵素あるいは発酵菌の活性を阻害する事を示唆するが、モデルリグニン分解物は糖化酵素活性に全く影響を及ぼさなかった。以上から高リグニン含有バイオマスを亜臨界水処理すると脱リグニンとセルロース糖化が可能であるが、同時にリグニン分解物による発酵阻害が推定された。他方、高リグニン含有海藻の表面に微生物の増殖が認められたが、微生物はリグニンを栄養源としないので海藻表面に観察された微生物はリグニンを分解して細胞質から栄養源を獲得していると推定された。この微生物による被検海藻の脱リグニンとバイオエタノール転換を試みたところ、ほぼ理論的対糖モル収率に一致するバイオエタノールが生成した。この微生物は、糸状菌 Talaromyces amestolkiaeの1株と同定され、リグニン分解活性を有する白色腐朽菌(担子菌類)に比べて培養が容易で、分解活性も高い特徴を有する。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

(1)亜臨界水処理の条件を温度200℃、時間60分とするなら被検材料に存在する殆ど全てのリグニンが除去されてセルロースの露出が可能であり、この脱リグニン条件においてセルロースは殆ど低分子化しないことを明らかとした。以上の結果は、高リグニン含有バイオマスの亜臨界水処理が脱リグニンとセルロース露出に有効であることを示す。(2)従来、セルロース糖化に用いられてきた単一糖化酵素のみでは糖化が不十分で、複数種の糖化酵素の併用が必須であることを明らかにした。この結果は、亜臨界水処理によっては完全な脱リグニンが進行せず、低分子リグニンがセルロースに残存する分子機構を示唆する。(3)他方、エタノール発酵における対糖モル収率が極めて低値であったことから、前記(1)の亜臨界水処理による低分子リグニンがエタノール発酵菌の代謝活性を阻害すると示唆された。この事は、亜臨界水処理後のセルロース画分を洗浄してエタノール発酵に供すると対糖モル収率が理論値まで回復したことからも支持され、さらに、前記(2)の“低分子リグニンがセルロースに非特異的に吸着し残存している”と言う考察をも補強する。(4)発酵を阻害するリグニン分解物は複数の二環構造をもつ物質であり、その分子中の側鎖は阻害に影響を及ぼさないと推定した。(5)被検海藻表面に増殖した微生物を単離し、新規の糸状菌Talaromyces amestolkiaeの1株と同定した。このT. amestolkiaeの1株はグルコース含有最少塩類培地で良好に増殖し、わずか2日間乃至3日間で最大増殖量に達した。(6)さらにT. amestolkiaeの1株は増殖と同時に高いリグニン分解活性を発現し、その活性は代表的なリグニン分解微生物として知られる白色腐朽菌の分解活性に比較して著しく高く、未利用バイオマスの生物工学的バイオエタノール転換に有意の新規微生物である。

Strategy for Future Research Activity

(1)亜臨界水による脱リグニンで生成するエタノール発酵阻害物質(すなわち発酵菌 S. cerevisiaeの代謝活性阻害物質)を有機化学的に同定して化学構造を明らかにするとともに、この物質(群)が発酵菌代謝に及ぼす影響(すなわち標的部位)を微生物科学的に明らかにする。それによって発酵阻害効果が発現しないための亜臨界水処理条件、あるいは発酵菌によるバイオエタノール発酵条件の設定を試み、当初研究課題である「亜臨界と微生物の逐次反応による未利用バイオマス資源化の分子機構」に関する研究の完成を図る。(2)単離したTalaromyces amestolkiaeの1株は、従来は知られていなかった新規リグニン分解微生物(糸状菌類)であり、また亜臨界処理とは異なって脱リグニンに際してエタノール発酵阻害物質を生成しないことから、この微生物のリグニン分解特性を微生物科学的に明らかにする。(3)この微生物を亜臨界水に代えて用い、あるいは新規微生物と亜臨界処理を併用する脱リグニンと未利用バイオマスのバイオエタノール転換を試みる。特に、後者(併用系)においては前記(1)において露出セルロースに非特異吸着してエタノール発酵を阻害する低分子リグニンを新規単離の微生物で逐次的に処理して完全に脱リグニンし、当初研究課題である「亜臨界と微生物の逐次反応による未利用バイオマス資源化の分子機構」に関する研究の完成を図る。

Causes of Carryover

消耗品(試薬類)の納入額が当初予定額より低額であったため。

Expenditure Plan for Carryover Budget

次年度に購入予定物品(旅費を含む)に充当することを使用計画とする。

  • Research Products

    (1 results)

All 2014

All Presentation (1 results)

  • [Presentation] 亜臨界水処理と生物反応による未利用海藻のエタノール転換2014

    • Author(s)
      二階堂健吾、佐藤正義、椎名亮太、安井肇、チャン・ヨンチョル、菊池慎太郎
    • Organizer
      土木学会 環境工学研究フォーラム講演集
    • Place of Presentation
      北海道大学(札幌市)
    • Year and Date
      2014-11-19 – 2014-11-21

URL: 

Published: 2016-05-27  

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