2015 Fiscal Year Annual Research Report
「心理的近接性」の概念に基づくエネルギー技術の社会影響評価
Project/Area Number |
25340120
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
本藤 祐樹 横浜国立大学, 環境情報研究科(研究院), 教授 (90371210)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 再生可能エネルギー / 太陽光発電 / 心理的近接性 / 見える化 / 省エネルギー / 省エネ行動 |
Outline of Annual Research Achievements |
太陽光・風力発電など再生可能エネルギー技術の特徴のひとつは小規模分散型の設置が可能という点にある。これらの技術は、日常生活の目に見える場に存在することによって、人々のエネルギーや環境に関する態度や価値観、さらには行動を変化させる可能性がある。本研究では「人々のエネルギー・環境に関する態度や規範は、エネルギー技術に対する愛着や認知など人々と技術との心の距離(心理的近接性)の影響を受け、心理的近接性は技術自体が持つ工学的特性からの影響を受ける」という仮説を出発点に、エネルギー技術の導入がもたらす人々の心理的・行動的変化の解明を試みた。 本研究では第一に、心理的近接性を測る尺度を開発した。公共施設に設置された太陽光発電(PV)システムを取り上げ、それを心理的に近しく感じられる程度を測定するための質問項目を作成し、信頼性の高い尺度を開発した。また、VBN (Value-Belief-Norm Theory) 理論を想定し上記仮説を検証するために必要となる、利他的・生態系価値、重要性認知、責任感、規範などの尺度も、既往研究を参考にして質問項目を作成した。 第二に、質問紙調査により得られたデータを用い共分散構造分析などを実施した結果、PVシステムへの心理的近接性が人々の省エネルギーに関する行動や政策受容性に影響を与えている可能性を見出した。さらに、その心理プロセスとして以下の二種類の可能性が認められた。ひとつめは、公共施設のPVシステムに親しみや愛着を抱くことが、社会や他人のために自然環境を大切にしようという利他的な気持ちを持たせ、次いでエネルギー環境問題に関する責任感や規範などに影響し、最終的に省エネ行動・政策受容性を促すという認知的なプロセスである。ふたつめは、親しみや愛着を抱くことが、責任感や規範などを介することなく、省エネ行動・政策受容性を高めるという無意識的なプロセスである。
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Research Products
(3 results)