2014 Fiscal Year Research-status Report
ナノセルロース分散高性能バイオポリオールの創製と機能性ポリウレタン発泡体への応用
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25340123
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
吉岡 まり子 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 講師 (30220594)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | バイオマス / ポリオール / グリセリン / 液化 / セルロースナノファイバー / 連通性 / フルクトース / 固体酸触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
①従来からの硫酸/メタノール触媒系を用いてデンプンをグリセリン液化し、液化反応温度の違いによる生成物の化学構造の特徴をまとめた。次に、それらへのセルロースナノファイバーの添加が及ぼす物性への影響を検討し、引き続きそれらから調製したポリウレタン発泡体の力学特性、熱的特性、連通性の評価を行い、有意で興味深い結果を得た。 ②近年のバイオリファイナリー技術の発展により、木質など非可食バイオマスから単糖であるグルコースやフルクトースを工業的に大量生産できる可能性が高まりつつある。これらの単糖類を、より高付加価値なバイオポリオールとしての利用により本研究の目的を達しようとする検討も進めている。まず、フルクトースを、酸触媒を使用する場合、使用しない場合の2通りについて、グリセリンで液状化し得られたポリオール、さらにそれらから調製したポリウレタン発泡体の諸特性比較を行い酸触媒使用の有無によるそれぞれの物性の違いを明らかにした。 ③固体酸触媒として、「強カチオン交換樹脂Amberlyst36(Amberlyst)」と「カーボン系固体酸触媒(CSAC)」の2種類を選択し、デンプンの液化反応に対する効果及びそれらから調製したポリウレタン発泡体の物性評価を行いつつある。酸密度は、AmberlystがCSACに比べて約1.5倍高いが、時間が進むにつれて加溶媒分解よりも加水分解をやや優先的に進める傾向にある。このことは、水酸基価を高くし、ポリウレタン発泡体調製時にブレンドする市販ポリオール(グリセリンのPO付加物)の割合を多くすることにつながる。したがって、CSAC触媒を用いて調製したバイオポリオールからの発泡体は、そのセル壁により大きな割合でピラノースリング構造を含むことになり、圧縮特性、熱安定性が、より高くなるという結果を得た。現在、さらにそれらの使用の可能性を種々の角度から検討を続けている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
申請者らだけの判断に固まらず、専門家の意見を聞き、また、調製したポリオールの評価を適宜依頼し、研究の方向性を常に絞ってきていることが当初の計画以上に進展していることに大きく影響していると考える。バイオポリオールの調製において、加溶媒分解を利用する場合は、酸触媒の種類(使用の有無を含む)、反応温度、セルロースナノファイバーの添加方法等、種々条件を変えることで実際性があり、かつ、種々の物性を備えたポリオールを得る方法に結びつくことが知られてきた。また、単糖を原料とする場合も、その化学構造と得られる液状ポリオールとの関連を調査することで有意なバイオポリオールとする可能性が見えてきている。
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Strategy for Future Research Activity |
①単糖の液状ポリオール化、および、固体酸触媒の利用の可能性について引き続き検討を進めると共に、それらから得られるポリウレタン発泡体の諸物性についての関連性を体系付ける。 ②セルロースナノファイバーへの化学修飾の有無が、それを添加したポリオール、発泡体のそれぞれの物性に与える影響について評価する。 ③プロピレンオキシド(PO)液化によって得られるバイオポリオール、および申請者らがこれまでに検討してきたバイオポリオール、あるいはそれらに精密PO付加して得られるポリオールを用いて調製されるポリウレタン発泡体の諸特性比較を行う。 ④3年間の研究の総括を行う。
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Causes of Carryover |
購入予定していた液クロ用分取カラムのメーカーにおける製造が、申請者らの必要とする時期に間に合わず、やむを得ず他社のカラムを購入することとなった。性能として劣らないにもかかわらず、より安価で、かつ、時期的にそのメーカーが偶然半額キャンペーンを行っていたため、予想外に、予算の使用を抑えることができた。また、GPC用カラムについて、随分長く使用を続けているのだが、未だ分離能にほとんど低下がなく、2014年度中に更新する必要が認められなかったため、さらにその分も次年度使用に回すことができた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
液化生成物の化学構造を調査するため、新たな種類の分取用液クロカラムを購入する予定である。 これまでより50倍ほどサイズの大きい発泡体を作製し、スコーチの有無の観察、耐湿性、耐水性等を含む特性評価を行うため、100ml容テフロン内筒耐圧反応管の新規購入や発泡体調製に欠かせないマイクロピペッター用チップ、SEM用試料台、X線回折測定用試料板等も購入予定であり、おかげさまで昨年度の残額を生かさせていただくことができる。
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