2014 Fiscal Year Research-status Report
木材資源(セルロース)から高分子原料を製造するための触媒反応技術の開発
Project/Area Number |
25340130
|
Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
三村 直樹 独立行政法人産業技術総合研究所, コンパクト化学システム研究センター, 研究員 (50358115)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | セルロース / リン酸カルシウム / ヒドロキシメチルフルフラール(HMF) |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は昨年度に行ったグルコースから重要中間体であるヒドロキシメチルフルフラール(HMF)の製造に適していることを見出したリン酸カルシウム触媒を用いてやセルロースの変換によるHMF製造について実験条件の最適化や幅広い原料への適用可能性について、詳細な検討を行った。 前年度は反応条件の最適化まではできていなかったが、今年度に検討を行い、温度、時間、触媒使用量について最適化した。また、反応の時間経過を測定することで、反応経路はセルロースからグルコースが生成し、そのグルコースからHMFが生成するという逐次反応機構が示唆される経時変化のデータを得た。 前年度に行った天然木材への適用以外に、古紙や古布への適用性も検討し、ボールミル処理を行うことで反応性が高まり、比較的高い収率でHMFが生成することが分かった。従って、リン酸カルシウム触媒は、純度の高い生成セルロース(試薬)だけではなく、天然物や廃棄物由来物などからも効率的にHMFを得ることができる実用性の高い触媒であり、資源の有効活用に貢献出来る技術となる可能性が高まった。 天然木材中にはグルコースのような6炭糖だけではなく、5炭糖成分もヘミセルロース中に含まれているので、5炭糖成分も効果的に触媒化学的に変換できれば、原料の有効利用率も高まる。5炭糖の代表例として、キシロースを原料に使用して反応を試みた。その結果、目論見通りに反応が進行することが分かり、次年度に温度や時間などの条件最適化へと、詳細な検討へと進める予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度(25年度)に見出したリン酸カルシウム触媒をグルコース、セルロース (試薬)、木材、セルロース含有廃棄物と適用性を広げることができ、かつ、回分式反応による最適反応条件も明らかになっている。酸化反応への取り組みが手薄であるが、HMF合成の進捗が大きく、トータルで見ればおおむね順調と言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
25~26年度は回分式(バッチ式)反応器を用いて活性試験を行ってきたが、バイオマス資源の有効利用には連続的な製造方法が必須である。最終目標はワンポットまたはワンパス合成を実現すると記載したが、連続流通式反応によるワンパス合成の達成を目指して、水に良く溶けるグルコースからのHMF合成を流通式装置を用いて連続的に行う。その後、連続的に酸化反応を行う触媒反応器と接続することで、グルコース→HMF→フランジカルボン酸の連続製造が可能になる。条件によっては酸化がうまく行かない可能性もあるので、その時は水素化を行い、ジメチルフランのような有用物質を公知の触媒または独自開発触媒を用いてHMFから製造する。最終的にはセルロースから流通法でHMFを経由して酸化生成物であるフランジカルボン酸を製造に取り組みたい。
|
Causes of Carryover |
備品や消耗品類に関しては、現有の備品類を有効利用したり運営費交付金で購入した消耗品などを有効活用したりするなどの工夫を行い、科研費では真に購入が必要な物を十分検討の上買うなど、予算の有効利用に努めた。また物品類の購入の際には、仕様と価格について十分な調査と比較検討を行い節約に努めた。出張旅費は、航空券の早期購入割引を活用するなど貴重な予算を無駄遣いしないように節約に努めた。海外の国際学会で成果発表を行う予定で予算計画を立てていたが、適切な学会がなかったために次年度に行く計画に変更して今年度は旅費を使用しなかった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
2014年度は適切な学会がなかったために海外出張を行わなかったが、2015年度は、今研究課題の成果発表に適した学会が数多く開催予定であるので、参加学会を厳選して2~3回の海外出張を計画している。さらに国内においても成果発表を数多く行う計画であるので、出張も増加する予定である。出張の際には引き続き、エコノミークラスの早期購入割引のような安価な航空券を十分に比較検討するなど節約に努める予定である。また、2015年に実施予定の研究内容は、貴金属試薬や高圧反応用配管部品類など高価な試薬や消耗品類を多く購入する必要が生じるので、2014年度同様に十分に検討を行い節約に努めて、繰り越した予算を有効に活用する予定である。
|
Research Products
(10 results)