2014 Fiscal Year Research-status Report
経済モデル分析を中心とした炭素制約が国際競争力に与える影響の学際的分析
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25340135
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
明日香 壽川 東北大学, 東北アジア研究センター, 教授 (90291955)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 炭素制約 / 国際競争力 / 排出量取引制度 / 国境税調整 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、炭素制約が企業活動に与える影響を、経済モデル構築および計量経済的な手法によって分析すると同時に、国境税調整などの影響軽減政策を経済学、法学的、政治学、倫理学的な側面から検討する。具体的には、すでに明日香らが構築したアジア地域を対象とする部分均衡経済モデル(CASE Asia)を、最新の各国の政策動向を取り入れ、新たにEUやアメリカなども含めた多地域モデルである一般均衡経済モデル(CASE Global)に拡張し、炭素制約の経済影響(例:GDP、生産量、市場占有率の変化)を国および産業レベルで明らかにする。本年度は、昨年度に続いて、CASE Asiaモデルのマクロモデルへの改良を行った。また、中国における大気汚染対策としての石炭削減政策などが、エネルギー消費量およびCO2排出量にどのような影響を与え、直接的あるいは間接的に企業に対して具体的にどのような経済的な負担を与えているかについて分析した。さらに、紛糾しているEU ETSの航空分野への域外適用について、現状を把握すると同時に、自主的な炭素制約の有効性や政治的受容性など、各国および企業が妥協できるような政策案を検討した。それらの結果、中国では大気汚染対策の影響によって、2014年に石炭消費量が減少し、CO2排出量も減少した可能性が高いことが明らかになった。企業は、排出量取引制度で課せられた排出量の削減を順守するためにクレジットなどを市場から購入しており、経済的負担が大きいという声が少なくなかった。EU ETSの域外適用に関する交渉は難航しており、気候変動枠組条約の下での交渉の結果を待つような状況になっている。一方、中国では、排出量取引制度とは別に炭素税の導入も検討されており、国境税調整の必要性も議論になりつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
モデルのマクロモデルへの改良は、プログラムの大幅な書き換え、細かい統計データの収集、モデルを動かした後の調整、などが必要であり時間がかかっている。一方、中国における炭素制約の状況に関しては、現地調査などによって多くの情報を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
モデルの改良を続け、データ収集なども、中国の研究者とより緊密に交流することでより充実させる。また、これまでの成果を論文などにもまとめて行く。なお、聞き取り調査に関しては、聞き取り調査対象者の同意を得ながら研究を進める。
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Research Products
(2 results)