2013 Fiscal Year Research-status Report
管理行為を包括する総合的土地利用マネジメントの仕組みの検討
Project/Area Number |
25340137
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
秋田 典子 千葉大学, 園芸学研究科, 准教授 (20447345)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 森林環境税 / 土地利用コントロール / 空間マネジメント |
Research Abstract |
研究の初年度は、近年、国内の多くの広域自治体が採用している森林の空間マネジメントのための新たな仕組みである森林環境税の調査に重点を置いて研究を実施した。調査対象地としては、人口が多く森林面積が小さく森林環境税総額の最も大きい神奈川県、森林面積が大きく人口が少ない秋田県(東北エリアの森林環境税導入県のうち被災地は除いた)を選定し、森林環境税による空間管理の実態を現地調査も含めて明らかにした。また、これに加えて都市部の面積の大きい愛知県、兵庫県でも森林環境税の運用実態に関する調査を行った。研究の結果、いずれの自治体でも人工林のうち条件が悪いエリアを環境林に遷移させることを主な目的として森林をゾーニングし、これに基づき森林環境税を活用して強間伐を行うこと、その条件として20年程度の協定を地権者と締結し土地利用を維持する規制を行うこと、一方で林業や生態学分野において人工林を自然林に遷移させるための研究の蓄積がなく、間伐による効果の発現に時間もかかることから、森林整備事業の効果等が科学的に測定できないこと、この結果、各県における森林環境税の歳入により森林空間管理のために実施する事業内容や間伐の頻度に違いがあることが明らかになった。 次に、森林エリアに含まれることが多く、非集約的な土地利用が行われている都市計画区域外の土地利用の実態について、比較的人口の多い千葉県内の都市計画区域外のエリアを対象として実態調査を行った。また、被災地における浸水エリア等の非集約化エリアの土地利用の方向性について、現地で実際に緑化による土地利用を行っている事例を対象に調査を行った。海外の自然的土地利用のマネジメントについては、フランス農村における農村活性化政策と自然的土地利用の維持・管理が景観という観点から実現されている事例の現地調査を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究初年度の目標として設定した国内の森林環境税による空間のマネジメントに関する研究は、想定していた神奈川県に加えて秋田県、愛知県、兵庫県の4県で調査を実施することができ、森林環境税による空間マネジメントの実態が明らかになり、目的は概ね達成できたと評価できる。ただし、本研究を進めるなかで、都市化の状況により森林環境税による空間マネジメントの目標や方法が異なっていることが明らかになった。本年度は都市化が進んだ地域に重点を置いて調査を実施したが、来年度は都市化が進んでいない林業中心のエリアを対象に調査・分析を行う予定である。 また、本年度は都市計画区域外の土地利用の実態に関する現地調査を実施したが、時間軸による空間変化の実態の調査を次年度以降に実施することで、非集約化エリアの開発を伴う土地利用の動態を把握する予定である。 一方、海外の空間管理に関する調査として、フランスの農地のマネジメントに関する資料収集や現地調査を行い、景観と農業振興施策の連携が二次的自然環境を有する土地利用のマネジメントに重要な役割を果たしていることが把握された。今後は、具体的なエリアを設定して施策の展開方法や空間管理の実態について調査を進めたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き国内の森林環境税を通じた森林の空間管理についての調査、分析に取り組む。人工林における植林後の「時間軸」のマネジメント、「県」という主体による土地利用マネジメントの実効性、広域レベルでの森林空間の価値化の方向性についての検討を行う。次に、これまで殆ど把握されていなかった都市計画区域外の土地利用の動向についても「時間軸」に沿ってその実態を明らかにしてゆく。被災地の空間マネジメントは、現地の状況が刻一刻と変化していることから、引き続き慎重に調査を続ける。海外の景観の観点を通じた土地利用マネジメントの実態については、対象地を設定して具体的な調査に取り組む。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
冬季に森林環境税の使用実態に関する現地調査が降雪等により出来なかったため、調査補助に必要な謝金の支払いが少なくなり、今年度使用する予定だった物品費(分析用PC)についても、データの蓄積量が予定より少なく既存のPCを活用することで対応できた。 平成26年度は現地調査を出来るだけ春から秋までに実施するように計画を立てて実施する。 また、平成25年度の調査の結果、森林環境税は都市型(神奈川県や愛知県など)と地方型(秋田県など)で森林空間の管理手法が異なることが分かってきたことから、調査対象地を増やす必要が生じた。調査補助の学生数は今年度と来年度で大きく変わらないため、調査補助として謝金を今年度と同様に使用し、余剰分を調査旅費に充当する予定である。
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