2015 Fiscal Year Research-status Report
管理行為を包括する総合的土地利用マネジメントの仕組みの検討
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25340137
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
秋田 典子 千葉大学, 園芸学研究科, 准教授 (20447345)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 土地利用マネジメント / 管理放棄地 / 低平地 / 都市計画区域外 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、人口減少や少子高齢化の進行に伴い、管理行為が放棄された土地が増加することにより生じる課題に対応するために、土地利用制度に時間軸・行為主体という2つの概念を新たに組み込むことにより、持続的・包括的な土地利用マネジメントの方法論を検討することを目的としたものである。 本年度は、人口が低密で自然環境が豊かな都市計画区域外における開発の実態と、東日本大震災により津波の被害を受けた低平地の土地利用の実態について明らかにした。 都市計画区域外は、土地利用制度上は、農地や山林が主な土地利用であり、開発が基本的に行われないエリアとして想定されている。しかし、実際には周辺の都市計画区域における開発圧力や地価の動向に応じて農地や林地の開発が行われており、更に、開発された土地の多くが短期間のうちに放棄され、農林地において開発を通じて土地の荒廃が進行している実態が明らかになった。 津波の被害を受けた低平地は、従前市街地であった場合でも、津波で浸水したことにより土地利用が放棄されていることが多い。本研究では先行的に土地利用が行われると考えられる津波浸水エリアの公立小中学校の跡地について調査を行ったが、震災から5年が経過しても未だに土地利用が殆ど決まっておらず、ごく限られたエリアで産業及び住宅系の土地利用が行われていることが明らかになった。一方で、津波の被害を受けた低平地におけるコミュニティガーデンを通じた土地利用の実態を把握し、供給できる資源に様々な制約がある場合でも、外部の人的・物的資源の活用により、土地利用のマネジメントが可能であり、また広域的・面的な土地利用が出来なくとも、質の高い空間が存在することで周囲の土地にも積極的な影響が見られることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、リバーススプロールやスマートシュリンク等の時間軸を含んだ土地利用の変容と、荒廃した土地の新たな管理の主体について明らかにすることを予定しており、これらは以下に示すようにおおむね順調に進展した。まず、前者については、都市計画区域外の開発動向から、農林地の荒廃を伴うリバーススプロールが数年という短い時間で発生している実態を明らかにできた。また、低平地の土地利用の実態から、スマートシュリンクが現実的には困難であり、別の観点からの土地利用の集約化を検討しなくてはならないことを明らかにした。一方、後者については、低平地におけるコミュニティガーデンの発現事例から、限られた人的・物的資源であっても、外部資源の活用を通じて、地元の住民が主体となり一定面積の土地利用管理が可能であり、更にそれが周辺にもたらす影響を踏まえると、広域的には面的管理ではなく点的管理であっても、空間の質が維持できることを明らかにできた。以上のことから、研究は概ね順調に進展していると言える。ただし、昨年度のテロの発生により海外渡航を自粛したことから、海外事例の調査を実施し研究全体を完成させるために期間の延長を行うこととした。
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Strategy for Future Research Activity |
海外における土地利用マネジメントに関する調査を実施する。海外において、特にオープンスペースに関する土地利用マネジメントの取り組みは近年、急速に変化しつつある。これらの最新情報を踏まえながら、本研究課題に沿った適切な調査を実施する予定である。海外の調査結果と、これまでの国内での調査結果を併せて、本研究全体の成果として取りまとめを行う。
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Causes of Carryover |
前述のとおり海外調査を予定していたタイミングでテロが発生し、渡航を断念せざるを得ない状況が発生した。このため海外事例調査と、それに伴う国内での追加調査や情報収集に今年度の予算を使用する。海外のオープンスペースの管理の状況は近年、急速に変化しつつあることから、昨年度の調査計画を再度見直し、本研究の目的に最もふさわしい形で調査を実施する予定である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
海外における土地利用マネジメントの実態に関する調査と、これに対応する国内の追加調査に予算を使用する。また、海外の調査結果を踏まえた研究全体のとりまとめに不足している情報があれば、追加の作業や調査を実施して研究全体のとりまとめを行う。
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