2014 Fiscal Year Research-status Report
非常時における化学物質の流出に伴う環境リスクのコミュニケーションツールの開発
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25340139
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
村山 武彦 東京工業大学, 総合理工学研究科(研究院), 教授 (00212259)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 環境リスク / 危機管理 / 非常時 / 拡散シミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は事例対象を神奈川県川崎市内に所在する一つの施設に絞り、施設の種別や対象物質、貯蔵条件、施設の破損条件などを特定あるいは想定したうえで気象条件の年間を通した連続的なデータを基にシミュレーションを行い、リスク評価を試みた。消防庁のアセスメント指針が総体的な事故のリスクを概算で求めるのに対し、本研究では個別の事故のリスクを各施設の条件や気象条件を反映させて、一年間を通じたリスクの把握を行った。 まず、防災アセスメント指針を参考に、リスク評価を目的とした場合の利用可能性を検討した。そのうえで、防災アセスメント指針の方法では実現できない個々の事例を対象に、リスク評価を行うための分析手法と手順を整理した。 次に、神奈川県、横浜市、川崎市を対象に情報公開請求を行い、個々の施設において取扱いがある有害物質の情報について、可能な限り詳細に入手するよう努めた。これらの情報をもと、取り扱っている物質の種類や量とともに、周辺の土地利用状況を勘案し、特定の事例を選定した。その結果として、川崎市内に所在する工場を対象とし、物質はアクリロニトリルとした。 さらに、事故時の拡散シミュレーションのソフトと地理情報システム(GIS)を用いて、年間を通じたリスクの把握を行うための手順を整理した。拡散シミュレーションには、米国EPAが開発したALOHAを用い、GISはArcGIS10.2を使用した。 上記の条件のもとにシミュレーションを実施し、季節ごとの変化とともに、年間のリスクの分布を地図上で示し、比較的リスクが高い地区を特定した。これによって漏えいが発生した際の拡散の様相とリスクの分布状況を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定であった非常時に生じる有害物質の拡散状況について、シミュレーションの事例を示すための手順を整理し、事例を通じて具体的なリスク分布を示すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに得られた結果を材料として、地域の市民団体を中心として個人またはグループを対象とした面接調査を行い、結果の利用可能性ととともに、改善点や追加すべき点などについて整理する。
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Causes of Carryover |
当初予定していた海外調査を次年度に行うこととしたことが、次年度使用額が生じた主たる理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
影響評価に関する国際学会に参加するとともに、東アジアや北米を中心に非常時の危機管理対応について調査を行う。
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