2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25340149
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
鈴木 龍也 龍谷大学, 法学部, 教授 (30196844)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
嶋田 大作 福岡女子大学, 文理学部, 講師 (40527876)
泉 留維 専修大学, 経済学部, 教授 (80384668)
廣川 祐司 北九州市立大学, 公私立大学の部局等, 講師 (80635649)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | コモンズ / オープンアクセス / 環境政策 / 地域的公共性 |
Research Abstract |
本研究は、私権性が強く閉鎖性を有する日本の入会等、閉域としてのコモンズから変遷を遂げたイングランド等のオープンスペースやフットパス、公的性質の強い北欧等の万人権を比較検討してコモンズの環境政策論的視座を獲得しようとするものである。 平成25年度は、上記3つの研究対象について歴史・現状に関する文献研究を進めた。そしてそのうち北欧の万人権については研究会での中間的な報告を行った(嶋田)。また、日本の入会の変形物である財産区制度については、その生成の歴史と近年の裁判例の分析を行い、論文として発表した(鈴木)。さらに、イギリスのフットパスについては、これまでの研究成果をも含め、その歴史・現状・今後の展望についてまとめた論考を発表した(泉)。 実態調査としては、日本のフットパスについて重点をおいて実施した。イギリスのフットパスが囲い込まれた土地への過去における通行慣行を根拠として通行権の存在を認めさせる運動の成果たるものであるのに対し、日本のフットパスは既存の里道等をフットパスとして表示するものに過ぎないが、閉域としての集落を公衆に開くものであるとともに、地域における新しい共同性の創出にもつながるものとして、本研究の対象として大変興味深いものである。25年度においては、東京都町田市、北海道(黒松内など)、九州のフットパスの共同調査を行った。特に九州では美里町をはじめとする多数のフットパスの立ち上げが行われたため、これに参与しつつ、そこにおける設立当事者の関心や地域住民との関係などの調査を行い、その成果の一部を論文として発表した(廣川)。その過程では、フットパス関係者をも対象としたシンポジウムを2回開催し、研究成果としての知見を提供するとともに、課題の共有を行った。また、これまでの研究成果をも含めた日本におけるフットパスに関するウェブページを作成し、公開した(泉)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度は本研究の初年度であることに鑑み、日本の入会等、イングランド等のオープンスペースやフットパス、北欧等の万人権についての歴史や現状に関する文献的な検討、国内外における実態調査を計画していた。 上記の3つの対象に関する文献的な研究については、ほぼ計画した通りに進んでおり、今後も継続する予定である。 実態調査については、九州でのフットパスの立ち上げの時期に遭遇するというチャンスを生かして、精力的に調査を行うことができた。フットパスは入会のようなコモンズそのものではないが、地域社会における地域資源の管理という側面を有することに加え、地域社会がどのように自らを外部社会に開き、外部社会との意味ある交流を実現していくかという、本研究のテーマにまさに適合的な研究対象である。この面での研究は計画以上の進展をみたということができる。また、この調査の過程では、フットパスの設立を目指す方々に、イギリスや日本の他地域におけるフットパスに関しての知見を提供することも行い、研究成果の公表としても予想以上の達成状況ということができる。日本におけるフットパスに関するウェブページの作成、公表も、計画を上回る成果ということができる。 計画通りに進まなかった点としては海外実態調査を実施できなかったことがある。これは海外での受け入れ側の予定者との日程調整等がうまくできなかったためであるが、26年度以降における確実な実施に向けて準備を進めている。なお、当初の研究計画において、このような事態も一応は想定には入っており、基金化の趣旨を生かしての対応を行うこととしているが、上で述べた日本におけるフットパス調査における計画以上の達成度分を相殺するマイナスといわざるを得ないであろう。
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Strategy for Future Research Activity |
26年度以降においても、引き続き日本の入会等(フットパスの展開をも含む)、イングランド等のオープンスペースやフットパス、北欧等の万人権について、歴史や現状等の文献を中心とする分析・比較研究等を進める。特に、イギリスにおける2000年のカントリーサイドおよび歩く権利法の生成過程等、それぞれの法整備の画期における議論状況等について焦点を当て、それぞれの制度を支える所有観念や公共性観念等に接近すべく研究を進める。 日本における実態調査としては、25年度と同様にフットパスに焦点を当てつつ、他のコモンズにおけるオープンアクセスの進展等との比較をも含め、できるだけ共同での調査を行う。その際には調査の質的な向上を目指し、たとえばアンケート等を用いたフットパス振興のための課題の抽出等を行うべく、予備的調査から順次進める。 海外における実態調査を実施する。それぞれの制度をめぐる近年の展開や今日における課題等について資料収集や聞き取り等の調査を行うとともに、それぞれの制度を支える人々の意識、特に地域資源等に関する所有観念や地域的な公共性に関する考え方等に焦点を当てた聞き取り等の調査を行う。 上記の研究を基礎としつつ、コモンズの地域環境保全的機能の維持や回復、あるいはコモンズの現代社会への適応を有効化する鍵になると思われる地域的公共性のあり方の検討、さらには現実的な政策提言等のための基礎的な検討を行う研究会を開催する。これは外部の研究者の参画も含め企画していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度に計画していた海外調査を、受け入れ側との日程調整がうまくいかなかった等の事情から実施できなかったため、多くの次年度使用額が生じることとなった。 平成26年度以降に25年度計画分の内容も含めた海外調査を実施すべく、受け入れ側と調整を行っており、25年度の次年度使用額は主に海外調査のために使用する計画である。
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