2013 Fiscal Year Research-status Report
沿岸域が里海として持続的に存続するための管理システムの構造と機能
Project/Area Number |
25340151
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
日高 健 近畿大学, 工学部, 教授 (30309265)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 里海 / 沿岸域管理 / ネットワーク組織 |
Research Abstract |
◯文献調査:里海管理システムの分析枠組みを構築するため、共有資源の共同利用に関する研究分野として沿岸域管理(海洋政策研究財団2006、2007、2011など)、コモンズ論(Ostrom1990、Burger etc2001、井上真編2008、新保輝幸ほか編2012など)、ネットワーク管理・組織に関する先行研究としてネットワーク組織論(若林直樹2009、西口敏宏2009、中野勉2011など)、ネットワーク論(バラバシ2002、安田雪2001など)の文献研究を行い、共有資源の共同利用の状態をいかなる管理組織によってルールを形成し、いかにしてモニタリングとガバナンスをするのかについて検討した。その結果、ネットワークの構造とネットワーク・ガバナンスについての分析論点と分析の枠組みを整理した。 ◯事例のアンケート調査:文献その他に掲載された里海あるいは自発的沿岸域管理として注目されている取組み内容を分析し、里海が持つ基本的な管理システム上の特徴や問題点を抽出し、里海の要件について仮説をたてたうえで、アンケート調査表を作成し、全国における里海の取組みを対象にアンケート調査表を配布した(約100件に配布、30件より回答)。さらに、全国の都道府県を対象に、沿岸域利用管理の取組み事例を探索するためのアンケート調査を実施した。これらのアンケート調査結果は、現在分析中である。 ◯訪問調査:里海あるいは自発的沿岸域管理の事例として名の知られている地域を対象に、訪問による聞き取り調査を実施した。調査対象地は、三重県志摩市(英虞湾、的矢湾、太平洋)、沖縄県石垣島(白保地域)、沖縄県竹富町(細崎地区)、福岡市(博多湾)である。調査結果は、現在分析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度は文献調査による分析枠組み作り、事例のアンケート調査、事例の訪問調査を行う予定であった。分析枠組み作りに関しては、里海の管理組織をネットワーク組織ととらえ、従来のヒエラルキー組織とは異なる組織原理で管理することが必要であることが判明したが、具体的に両者がどのように異なり、それをアンケート調査や訪問調査を通してどのように実証的に把握していくのかという、方法論に関する課題が残った。ネットワーク分析に関しては、日本でも安田雪らによってネットワーク分析の方法が紹介されているものの、里海管理の組織分析に適用するための具体的な方法を詰めるに至らなかった。 アンケート調査は、著名事例と都道府県を対象に行った。里海事例として環境省などの資料に掲載されている事例のうち、本研究で捉えようとする組織的な管理の取組は少なく(例えば、行政による保全活動は含まない)、また回答率の問題もあり、統計分析に耐えうるサンプル数が得られなかった。このため、都道府県を対象として、事例探索のための追加アンケートを実施した。これは探索的な調査としては成果があり、26年度の追加的なアンケート調査やボーリング調査を行う際の有効な情報を提供してくれた。 事例の訪問調査は、事例の全体像が把握されていなかったため、計画していた調査件数の半分しか実施できなかった。また、先方との業務の都合で一事例での調査に時間をかけられず、事例の深堀をできなかった。次年度は、25年度のアンケート調査を参考に、文献調査で抽出される分析枠組みを使うことによって、より有効な事例の訪問調査ができるとともに、25年度の調査結果についても活かすことができると期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度の文献調査に基づき、ネットワーク分析の方法論を里海マネジメントの分析に合わせて修正することが必要である。また、ネットワーク・ガバナンスに関する文献調査を進め、上記と合わせてネットワーク組織による里海マネジメントの分析枠組みを詳細なものにする予定である。 その上で、25年度に行った事例を対象としたアンケート調査に加え、都道府県へのアンケート調査から得られた新たな事例を対象としたアンケート調査を行い、それらの結果を合わせてSPSSの統計ソフトを用いて多変量解析を行う。また、事例の内容から成長段階に位置付けて類型化し、成長・発展の様相を捉える。 上記のアンケート調査で整理した事例の成長段階別の類型の中から代表的と思われる事例を抽出し、訪問によるボーリング調査を行う。調査結果は、地理情報システムを用いて地図上に各種情報を載せられるようにする。現時点で想定する調査地域は、兵庫県播磨灘、岡山県日生町、石川県七尾湾である。他にも調査地域を追加する予定である。
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