2014 Fiscal Year Research-status Report
地方都市の自律分散協調型社会の形成を促す地域ブランディング・デザイン
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25350015
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
都甲 康至 九州大学, 芸術工学研究科(研究院), 教授 (90437765)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 社会システムデザイン / 自律分散協調 / 産業政策 / 産学官連携 / 地域ブランド / プロジェクトマネジメント / マーケティング / 産業クラスター |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究はまず、平成25年度の研究で地方都市の自律分散協調型社会の形成を促すモデルの初期仮説として、地域産品の産業振興に焦点をあてて考案した「地域ブランディング・デザイン基本モデル(初期仮説)」の有効性と適用範囲について、唐津市等が推進している唐津コスメティック構想の理事や会員企業、事務局員等と、産品唐津ブランド確立協議会の関係者と定期的なディスカッションを行った。 次にそれらを通じて得られた知見と初期仮説をもとに、地域産品の生産・製造・流通・販売等のプロセスを概念化した「地域産品生産・流通等基本プロセス図」を作成し、次にその基本プロセス図に、①6次産業化とグローバル化の視点及び、②地域資源を活用した原材料に関する研究開発や商品企画・開発・ブランド化・情報発信等の公的支援事業と、それを統括する総合プログラムマネジメント機能並びに、③地域産業を支えるICTシステム、エコシステム、金融等の総合ビジネス支援サービスプラットホーム機能等の三つの概念を加えた新たなモデル「地域産業活性化プログラム・マネジメントスキーム(仮説)」を考案した。 そして、その仮説モデルの有効性と適用範囲を考察するために、日本デザイン学会九州支部と第8回プロジェクトマネジメント学会国際会議(マレーシア・クアラルンプール)において口頭発表を行い、その結果、日本及びアジア諸国において有効の可能性があることがわかった。 本年度の研究成果として、地域産業振興方法の全体像を示した新たな仮説モデルを考案したことと、その仮説モデルについて日本及びアジア諸国において有効の可能性があるということ、そして地域産品の産業振興には唐津市の「化粧品関連産業集積構想」のように地域全体の中長期的なビジョンの提示を通じて地域産業を牽引する「ビジョン・ドリブン」と「産学官連携プロジェクト」のアプローチが重要であるとの知見を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、地方都市が自律・発展するための新たな方法論として「地域ブランディング・デザイン基本モデル」を導出することを目的としたものであるが、本年度の研究において、その骨格をなす「地域産業活性化プログラム・マネジメントスキーム(仮説)」を仮説モデルとして考案し、日本及びアジア諸国における有効性と適用範囲等について考察した。 このモデルには、①6次産業化とグローバル化の視点及び、②地域資源を活用した原材料に関する研究開発や商品企画・開発・ブランド化・情報発信等の公的支援事業と、それを統括する総合プログラムマネジメント機能並びに、③地域産業を支えるICTシステム、エコシステム、金融等の総合ビジネス支援サービスプラットホーム機能等を包含している。 このモデルをベースに、「地域資源発掘方法」や「地場産品ブランド・観光地ブランド・サービスブランド・都市イメージブランド等の創生・育成・評価方法」、「地域ブランド戦略策定方法」、「地域ブランドの定義・文書化方法」、「地域ブランド情報発信方法」、「都市間連携方法」、「ホスピタリティサービス方法」、「来訪客による地域ブランド評価方法」、「地域資源への再投資方法」、「固定客づくり方法」、「地域ブランド知的財産権管理方法」、「地域ブランド文書・画像・映像等のデジタルアーカイブ方法」、「地域ブランディング組織デザイン方法」、「総合ブランド・マネジメント方法」、「地域ブランディング人財育成方法」等の位置付けと計画・設計方法を関連付けることができる可能性があることがわかった。 加えて、その仮説モデルを有効に機能させるためには、地域全体の中長期的なビジョンの提示を通じて地域産業を牽引する「ビジョン・ドリブン」と「産学官連携プロジェクト」のアプローチが重要であることの知見を得た。 以上の観点から、総合的な自己評価として、概ね順調に進展しているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、昨年度に新たに考案した「地域産業活性化プログラム・マネジメントスキーム:The Scheme of Regional-Industry Activation for City Program Management(仮説)」の有効性と適用範囲をさらに考察するために、事例研究として、地域全体の中長期的な産業政策ビジョンの提示を通じて地域産業を牽引する「ビジョン・ドリブン」と「産学官連携プロジェクト」を平成25年度より唐津市が実践している「社団法人ジャパン・コスメティックセンター(JCC)の「唐津コスメティック構想」を選定し、その関係者等へのインタビュー調査等を通じて仮説モデルの評価を行う。なおJCCには佐賀県、唐津市、玄海町等の自治体や約110社の民間企業が参加している。 具体的には、昨年度まで研究を進めてきた全体像の構成要素である次の「①地域資源発掘方法」から「②地域ブランド創成プロセス」、「③地域ブランド・マーケティング・プロセス」、「④地域ブランド・ネットワーク・プロセス」、「⑤観光客受入・交流プロセス」、「⑥地域ブランド・マネジメント・プロセス」「⑦地域ブランド総合マネジメント・プロセス」までの各プロセスと「地域産業活性化プログラム・マネジメントスキーム」との関係を明確化と、それらの個別プロセス間の関係を考察し、集合としての全体プロセス「地域ブランディング・デザイン基本モデル(仮説)」を訂正・作成する。 仮説モデルの関係者への聞き取り調査による評価結果等を踏まえ、「地域ブランディング・デザイン基本モデル(仮説)」について、各構成要素の分類の妥当性、各構成要素間の関係、各構成要素のインプット情報とアウトプット情報等及びそれらに必要なツール・方法論等について総合的に考察し、研究の成果として「地域ブランディング・デザイン基本モデル」を完成させる。
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Causes of Carryover |
国際会議での研究成果発表を当初計画では2回予定していたが、1回しか行わなかったこととにより次年度への繰り越し金が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
6月ごろに韓国での学会発表を予定していることと、8月ごろに九州各県の自治体の地域産品に関する支援事業や支援制度等に関する調査を予定しているため、その旅費に充当する予定である。
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