2014 Fiscal Year Research-status Report
有松・鳴海絞りを用いた多様性・機能性に対応する病衣デザインの研究
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25350023
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
藤井 尚子 名古屋市立大学, 芸術工学研究科(研究院), 准教授 (30511977)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | デザイン学 / 病衣 / 有松・鳴海絞 / 機能性と審美性の両立 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、さまざまな症例ごとに適合する多様性・選択性を考慮した「病衣」デザインの研究および開発をめざすものである。特に、女性患者を対象とし、入院加療時の病衣をめぐる種々の問題点を明らかにするとともに、女性特有の着衣に関する作法もふまえた病衣の提案を行なうことが最終目的である。研究計画としては、症例別身体的負担部位と病衣構造の相関性を考察することを予定しているが、当該年度は、女性特有の着装時の審美性の課題に注目した。なかでも、選択性に対応する病衣における機能性と審美性を両立するために採用した、「絞り」の研究を中心に行った。 その上で、「有松・鳴海絞」にみるテクスチャー表現および種々の技法と機能性の相関についての分類を行った。まず「有松・鳴海絞」の技法を従来の絞り加工全般を技法特性から大別したものと、今日的技法であるヒートセット加工、塩縮加工、縮絨加工で使用されるものを整理し、それらを視覚的特性と触覚的特性に分け、なかでも触覚的特性を「伸縮性」「復元性」「嵩高感(立体感)」「触感」などの項目から、布特有の機能性について考察を試み、それぞれの機能性と審美性の両立の関わりをまとめた。さらに、これらについて日本の社会文化的視点を交えながら、海外での研究成果発表を実施した(「9th International Shibori Symposium in China(ISS)」(中国・杭州))。当該会議は世界中の「絞り染色技法」を「SHIBORI」の概念において統合した上で、それぞれの独自性や発展性について、作品展示と研究発表の実践と理論の両面から検証し共有する仕組みとなっている。本研究のように看護・介護分野における「絞り」の有意性を示したものは多くはなく、本研究の意義を国外にも広く周知することができ、有意な成果をあげることができた点が、当該年度の実績の一つである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当該年度の成果として、「有松・鳴海絞」を用いた病衣の可能性について周知することができたが、当初の計画にある、女性患者を対象とした症例別病衣の設計要件を精査する上で必要なヒアリングが実施できていない点と、具体的な症例に対する病衣デザインに着手できていない点において、達成度を(3)とした。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進には、ヒアリング調査を充実させることをめざす。なお、病衣デザインの設計要件を抽出するにあたり「上衣」を主体に調査・考察を推進することで、より症例別身体的負担部位と病衣構造の相関性を探りやすくなると考えている。
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