2013 Fiscal Year Research-status Report
平安王朝宮廷装束の紅と琉球王朝宮廷衣装紅型にみる紅のルートを探る
Project/Area Number |
25350054
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Koriyama Women's University |
Principal Investigator |
難波 めぐみ 郡山女子大学, 家政学部, 准教授 (00326761)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 紅のルート / アジア海上交易 / 琉球宮廷衣装紅型 / 日本染色文化 / 公家装束 / 植物染料 |
Research Abstract |
日本の民族文化表層化の結実といえる平安公家装束と、琉球王朝宮廷衣装染色における紅の色料(材)の時間的・物理的限界点を明らかとし、日本における色料(材)のルートを解明することを目的としている本研究において、平成25年度は、1.中世アジア海上交易の状況分析として、沖縄を取り巻く国々の中世アジア海域における交易状況及び交易品の分析から、中世琉球(現:沖縄)の諸外国との活発な海上交流の実態が明らかとなった。殊に日本では自生が難しい蘇芳が、海上交易品として琉球と明帝国(現:中国)との冊封体制の中で、東南アジアから海を渡り染料として定着したことから、色料(材)の流入は、アジア海域を自由に渡航が許された琉球の存在が大きかったことを明らかとすることができた。一方で、中世における琉球(流求・瑠求)が現在の台湾を指している史料の存在が明らかとなり、漢籍における琉球の交易が今言われる琉球(現:沖縄)であったのか、新たな究明が求められる大きな課題を見出すことができた。 更に、2.科学的調査として、古紅型試料をエネルギー分散型エックス線分析装置を活用し分析調査(蛍光X線分析:外部委託)を実施した。色別に8カ所を選定し分析した結果、赤色の染料にはFe(鉄)やHg(水銀)が検出され、更に、As(ヒ素)の検出により赤色顔料・鉱物のベンガラ、鉛丹、朱などが併用されていた可能性が高い結果となった。中世における紅型の染色は、現在使用されている顔料・鉱物と大きな変化がない結果となった。 目的としていた史料・試料の分析と実地調査を主体として、日本色料(材)のルートを明らかとする本課題研究の趣旨に沿う研究を進めることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
史料・試料分析を実施し、一定の進展を見たと言える。 特に、色料(材)の流入にはアジア海域を取り巻く国々との社会的背景を鑑みた交流状況を理解することが重要であり、その交流状況を分析し、1.中世海上交易品に見る色材-アジア海域を取り巻く国々-として、日本家政学会第66回大会でポスターセッション形式にて発表することができた。また、2.科学的調査として分析試料となる古紅型を入手することができたことは、本研究を遂行する上で非常に大きな意味があった。その試料を使用して蛍光X線分析を実施し、中世における紅型の染色は現在使用の色料(材)である可能性が高い分析結果となった。 当初予定の通り、順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画通り推進していく予定である。 今年度の推進方策として昨年度同様、1.紅花の収集及び分析、2.調査地調査(染色実験及び聞き取り調査)、3.科学的調査(蛍光X線分析・AMS法)を行う。また新たに、今までに得られた結果及び標本をデータベース化し公表(オープンアクセス)するとともに、広く発表を予定している。なお、平成26年度はゲノム分析法も活用し、日本における色料(材)遺伝子の分布統計調査を行い、紅の色料(材)ルートをより明確なものとする。アジアの海を取り巻く国々との交易状況及び交易品の分析から、日本色料(材)ルートの究明を行い、日本染色文化の一端を明らかとする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
試料の科学的調査(外部委託)にかかる経費が、支払請求書提出後当初予定の金額よりも下回ったため残金が生じる結果となった。 次年度も、科学的調査(外部委託)費用として、平成25年度に生じた残高を有効的に活用予定である。
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Research Products
(2 results)