2015 Fiscal Year Annual Research Report
平安王朝宮廷装束の紅と琉球王朝宮廷衣装紅型にみる紅のルートを探る
Project/Area Number |
25350054
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Research Institution | Koriyama Women's University |
Principal Investigator |
難波 めぐみ 郡山女子大学, 家政学部, 准教授 (00326761)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 紅のルート / アジア海上交易 / 琉球宮廷衣装紅型 / 日本染色文化 / 平安王朝公家装束 / 植物染料 / 顔料 / 蛍光X線分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
17、8世紀制作と考えられてきた古紅型試料の高感度蛍光X線(非破壊)分析を実施し、蛍光X線スペクトルを測定した結果、①辰砂(HgS)の検出。②色材の混合により色表現が変化。③ベンガラの主成分である鉄(Fe)の検出も見られたが、水銀(Hg)が明らかに多いことから赤色は朱であり、ヒ素(As)の検出から天然の朱であった。また、アジア海域における交易に注目し究明を進めていた中で、アジア海域の交易品の中の色材に大きな意味があったことが明らかとなりつつある。ことに、明帝国への交易品として琉球が大量に赤色の染料“蘇木”を買い付けしていたのは、何を意味していたのか。申請者所蔵の古紅型試料が、那覇市歴史博物館蔵「国宝黄色地松皮菱に菊藤流水菖蒲模様衣裳」と同型と仮説を立て、①年代測定。②古紅型の型の照合。を実施し、19世紀前半の古紅型に使用された色材と制作年代を明らかとすることを目的に研究調査を進めた結果、那覇市歴史博物館蔵「国宝黄色地松皮菱に菊藤流水菖蒲模様衣裳」の撮影及び聞き取り調査から、紅型の型は3枚一緒に彫り、制作終了後は衣裳の献上と同時に納付するため、一般的に王家装束と同型の染色品が制作されることは無いという。今回の分析試料は、保存状態が悪く退色が激しかったため、地は無色と考えられていたが、今回の分析により①地に黄の残留色素が認められたこと。②型も99%一致したこと。③年代測定分析により、1810年から1850年代に制作されたことが示されたことから、本試料と国宝紅型の型と制作年代はほぼ一致したと言える。従って、本研究から得られた分析結果の色料は、1800年代に使用されていた色料であったことが明らかとなった。
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