2013 Fiscal Year Research-status Report
日本の伝統的染織技術の持続可能なテキスタイル・デザインへの展開に関する研究
Project/Area Number |
25350061
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tama Art University |
Principal Investigator |
深津 裕子 多摩美術大学, 美術学部, 准教授 (20443145)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川井 由夏 多摩美術大学, 美術学部, 教授 (70407815)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 文化資源 / 染織技術 / 葛布 / 芭蕉布 / テキスタイルデザイン / 伝統的染織品 / 持続可能性 / 植物繊維 |
Research Abstract |
本研究は文化資源の保存研究にマーケティングとデザインの手法を組み込み、分野横断型の新たなスタイルを構築し、研究成果を持続可能な社会づくりに応用する提案までの研究を目的とする。 平成25年度は地域社会に根ざした葛布(静岡県島田市)と芭蕉布(沖縄県八重山郡)を研究の対象事例とし現地調査を実施しながら基礎情報を収集した。 まず聞き取り調査では、技術保持者らから過去・現在における染織事情を聞き取り情報を収集した。具体的な染織技術や制作工程については静止画・動画・音声による記録と保存を行った。調査の結果、伝統的染織品の多くは時代や社会の急激な変化のもと衰退の一途をたどってはいる一方、天然素材を使用し最小限の動力により制作されるプロダクトでもあることがわかった。そのため地球環境にやさしいプロダクトへの転換が可能であり、衰退する伝統技術の救済および文化保護へも繋がることが見いだされた。調査対象の地域では住民と共に、伝統に内在する技と英知を再発見すること、持続可能なテキスタイル・プロダクトに応用展開すること、新しい伝統を創成しながらものづくりの新しい価値観を提示すること、への可能性が示唆された。また26年度に実施するマーケティングリサーチに備え、地域社会で販売されてきたテキスタイルプロダクトに関する情報収集と資料収集も行った。 次に地域調査については、調査対象として選択した地域の文化・歴史・農業・経済・社会などについて文献や史料を通じて調査し、染織技術や染織品が発達した背景について深く理解し、その社会的な位置づけを明確にするとともに、特徴を明らかにした。最後に調査結果を取り纏め、次年度の研究計画の調整を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度の研究計画により、1. 聞き取り調査と記録、2. 地域社会の調査、1.2.のまとめを行った。 1. 聞き取り調査と記録では、静岡県島田市の葛布、沖縄県八重山郡竹富町の芭蕉布に関する調査を数回に渡り実施した。聞き取り調査では、染織技術保持者より、過去と現在の現状、現在まで継承されてきた染織技術と制作工程について情報を収集・整理し、必要に応じて静止画・動画・音声での記録を行った。また現在制作販売されているテキスタイルプロダクト製品を資料として収集した。 次に地域社会の特徴について調査した。調査対象として選択した地域の文化・歴史・農業・経済・社会などについて文献や史料を通じて探索し、染織技術や染織品が継承されてきた背景について深く理解し、その社会的な位置づけを明確にするとともに、特徴付けを行った。 これらの基礎調査の結果は概ね取りまとめることができ、次年度の研究計画調整およびマーケティングリサーチのための資料とすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は平成25年度に収集した実物資料と基礎調査の結果をもとに、現状を再確認した上で検証を行う。まず、基礎調査で収集した実物資料(テキスタイル・プロダクト)については、染織技術の特性・地域性・持続可能性・デザイン性などの詳細について検証し、問題点を指摘するとともに、改善策を講ずる。次にマーケティングリサーチとして、アジア諸国にみられる伝統的な染織技術のうち、再生に成功した事例であるカンボジアの絹絣織物などの調査を行い、他国の染織の現状を把握するとともに比較調査を行う。一方、日本において伝統的な染織が民芸品として位置づけられ、非日常的な製品となってしまった問題点を明らかにし、改善策を地域社会の人々と話あいながら提案する。同時に、現代社会において受け入れられている伝統的な技術を駆使したヨーロッパの製品事例の調査、また現代のテキスタイル・プロダクトに関するマーケティングを行い、社会に求められるアイテム・デザイン・素材などについての見解をまとめる。
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Research Products
(1 results)