2014 Fiscal Year Research-status Report
アミドアミンオキシド誘導体を基盤とする機能性低分子ゲル化剤の開発
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25350067
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Research Institution | Osaka Municipal Technical Research Institute |
Principal Investigator |
懸橋 理枝 地方独立行政法人大阪市立工業研究所, 有機材料研究部, 研究主任 (70294874)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
東海 直治 地方独立行政法人大阪市立工業研究所, 有機材料研究部, 研究主任 (40416300)
前田 悠 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 名誉教授 (20022626)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | アミドアミンオキシド / 低分子ゲル化剤 / 増粘剤 / ゲル化温度 / アルキル鎖長 / スペーサー / 会合体 / プロトン化 |
Outline of Annual Research Achievements |
水や電解質水溶液、イオン液体および種々の有機溶媒をゲル化・増粘するアミドアミンオキシド型低分子ゲル化・増粘剤(AAO)を新規に開発し、その化学構造とゲル化温度Tgおよび会合体構造の関係について調べた。AAOは、疎水鎖長、アミド基の数と配列、アミド基間あるいはアミド基‐アミンオキシド基間のスペーサー長を調節することで、溶液物性や会合体構造を制御できる。 今回は、溶液物性におけるアミド基‐アミンオキシド基間のスペーサー長mの効果をより詳細に検討するため、疎水鎖長(C13)およびアミド基の数と配列(3個を向い合せに配置)を固定し、mを2から6まで変化させた試料を用い、Tgを評価した。また、会合体構造へのmの効果についても極低温透過電子顕微鏡(cryoTEM)観察により確認した。さらにアミンオキシド基のプロトン化の効果についても検討した。 プロトン化していない非イオン型AAOでは、mが3から5の領域でTgはmに対し直線的に増加するが、m=6で急増した。cryoTEMで確認された会合体は、mが5以下ではファイバー状、m=6では100 nm程度の幅を持つリボン状構造であった。一方、プロトン化したカチオン型AAOでは、Tgはmが3から6でほぼ直線的に変化し、劇的な変化は見られなかった。会合体もファイバーのみが観察され、リボン状構造の形成は認められなかった。非イオン型およびカチオン型AAOのいずれにおいてもmに対するTgと会合体構造の挙動はよく一致した。カチオン型AAOでは、プロトン化により極性基間の静電反発が生じ、相対的に曲率の大きいファイバー状会合体が形成されたものと考えられる。一方、非イオン型AAOでの曲率の小さいリボン状会合体の形成は、高い増粘温度に対応しており、ゲルの温度に対する安定性に強く寄与していると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今回、アミド基‐アミンオキシド基間のスペーサー長を精密に制御したアミドアミンオキシド型界面活性剤を新規に合成し、ゲル化温度と会合体構造を調べた結果、ゲルの温度安定性には形成される会合体構造が強く影響していることを明らかにした。つまり、スペーサー長およびアミンオキシド基のプロトン化を適切に制御することで、会合体構造およびゲルの温度安定性を制御できることを示した。この知見をもとに、今後の分子設計において、化学構造の絞り込みを行うことができる。 また、極低温透過型電子顕微鏡観察により会合体構造についての有益な情報を得ることができ、今後の展開にも適用できる道筋がついた点でも、順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究の結果、アミドアミンオキシド型低分子ゲル化剤の化学構造(特にアミド基‐アミンオキシド基間のスペーサー長)と会合体構造、およびゲル化温度について密接な関係があることが水系で確認できた。化学構造制御の重要なファクターとしては、ほかに疎水鎖長がある。疎水鎖長を変化させた試料についても、既に予備実験を行い、物性制御に有効に作用する可能性があることを確認している。今後はより詳細に疎水鎖長と会合体構造およびゲル化温度との関係について調べる予定である。 一方、アミドアミンオキシドは水だけでなく電解質水溶液、イオン液体やトルエンなどの有機溶媒もゲル化できる。これらの溶媒中で形成される会合体構造についても、低温電子顕微鏡観察を行う。水以外の溶媒中での会合体構造の知見は少なく、分子の化学構造との関係についての情報は、オルガノゲル化剤の分子設計を行う上で有益である。 また、アミドアミンオキシドが形成するゲルについて、コーンプレート型回転粘度計や動的粘弾性測定装置などを用いて評価を試みたが、再現性に問題があり、十分なデータが得られていない。新たな取り組みとして、音叉振動式レオメータを用い、ゲル化剤の化学構造とゲル物性の関係についても調べる予定である。
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Causes of Carryover |
必要なガラス器具を購入するには金額が不足しており、次年度の助成金と併せて使用することにしたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
検体乾燥機用のガラス器具(デシケーター)を購入する予定。
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Remarks |
Advances in Engineering(Canadian establishment)で論文を紹介された。 http://advanceseng.com/chemical-engineering/counterion-condensation-rapid-transport-polyelectrolytes-aqueous-polymer-solutions/
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