2015 Fiscal Year Research-status Report
体感温度の認知による居住環境バリアフリー化の促進-ヒートショック・熱中症対策
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25350079
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Research Institution | Kyoto Prefectural University |
Principal Investigator |
柴田 祥江 京都府立大学, 生命環境科学研究科(系), 特任講師 (20624357)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松原 斎樹 京都府立大学, 生命環境科学研究科(系), 教授 (80165860)
澤島 智明 佐賀大学, 文化教育学部, 教授 (40404115)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 高齢者 / 室内温熱環境 / 体感温度 / 温度認知 / 夏期・冬期 / 熱中症 / ヒートショック / 予防対策 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,生活者自身が住宅内で体感温度を認知すること(見える化)により,劣悪な温熱環境を我慢しすぎず,温熱環境を改善し住宅内での熱中症やヒートショック(以下HS)を予防することを目的としている。 これまでの研究実績は,25年度, 生活者の住宅内温熱環境把握(温度認知)とHS及び熱中症予防対策の現状調査,住宅内と温熱環境実態調査を実施し,京都府内の高齢者を対象に冬期73件,夏期74件の回答が得られた。夏期には熱中症危険域の高温になっている実態,冬期には多くの高齢者の住宅で寝室と便所の温度が10℃以下の低温環境で身体への負担が危惧される実態であった。温度認知は高齢者(65歳以上)は64歳以下と比較してあまり正確ではないことが分かった。 26年度には25年度の調査対象者から,訪問調査に同意を得られた対象者を抽出し,詳細なヒアリング調査及び温熱環境実態調査を実施した。ヒアリング調査は,住宅の状況,温湿度への関心と健康状況等,夏期には防暑行為を質問,冬期には防寒行為を質問した。冬期には協力を得られた対象者の住宅の便所と脱衣所の窓簡易断熱を施工し,効果を検証した。その結果,どの住宅でも心理的な効果を感じていた。 追加調査を実施し,冬期については入浴実態,暖房機器使用実態,室温保持に対する意識,温湿度計使用状況,夏期についてはエアコン使用状況,熱中症対策意識と行動変容を調査した。 27年度は,夏期と冬期の同一対象者毎に,夏期と冬期の結果を付き合わせて分析を行った。加えて,得られた知見についての論文投稿,海外の学会での発表を行った。具体的には,冬期の結果は「居住者視点によるヒートショック対策」として生気象学会誌に論文投稿し,受理された。夏期の結果は,香港で開催されたアジア家政学会において口頭発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25から26年度に行った郵送による夏期熱中症対策と冬期のHS対策調査,26年度に行った詳細なヒアリング調査,温熱環境実態調査と冬期窓簡易断熱の効果検証と,さらに追加調査も行い,当初予定していたデータは得られた。データの分析については,27年度に冬期,夏期それぞれの分析を行った結果をまとめた。 得られた知見を国内の建築学会,生気象学会,人間生活環境系学会で25年度,26年度に随時口頭発表を行ってきた。27年度には論文投稿,海外の学会での発表を行った。具体的には,冬期の結果は,「居住者視点によるヒートショック対策」として生気象学会誌に論文投稿し,受理された。夏期の結果は,香港で開催されたアジア家政学会において,"Study of consciousness and behavior for the prevention of heat disorders in elderly Japanese individuals" として口頭発表を行った。 上記のとおり,これまでの調査研究の実施については,おおむね計画通りに進んでいる。さらに,夏期調査での住宅における暑熱対策を実施した上での検証が望まれる。 情報発信では,夏期に得られた結果の論文投稿,夏期と冬期をまとめた分析結果の論文投稿と一般に広く情報提供が必要と考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的「体感温度の認知による熱中症とヒートショック対策」をより精微に達成するために,夏期の熱中症予防対策では,これまでの調査に加えて,有料老人ホーム(住宅型)において,ほぼ同一条件の住まいを対象に,追加調査を実施する。その方法は,まず熱中症についての認知,体感温度の認知実態,夏期の住まい方などの「事前アンケート調査」を実施する。その調査とこれまでの本研究で得られた知見を踏まえて「熱中症予防のための講演会」を実施,夏期に健康で熱中症予防に有効な住まい方を示唆した上で,温熱環境実態調査を実施する予定である。 これまで得られたデータの分析に加えて,体感温度認知による意識と行動変容について分析を深める。さらに夏期と冬期を付き合わせた分析と得られた結果について,論文投稿を行う予定である。 熱中症予防については,東京で開催される講演セミナー「熱中症を予防しよう!―こうすれば防げる 日常生活環境と熱中症予防―(日本生気象学会主催・環境省共催シンポジウム)において,屋内外の住居環境対策と題して講演を担当することになっている。 さらに,研究結果全体をまとめた「報告」を行うことと,Webを活用した情報発信を行う予定である。
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Causes of Carryover |
27年度調査実施にあたって, 夏期の遮熱効果を検証する実験を実施したが、8月下旬には、天候が変わって予定していた全期間に実施できなかったために、実験の予定額に残額が出たこと。 冬期の調査結果をまとめて論文投稿をしたが、論文誌の発行が3月の予定だったが4月にずれ込んだため,28年4月号掲載となり,別刷代金の支払いが次年度になった。そのため支払いは28年度に執行されるためが主な理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度は、有料老人ホーム(住宅型)における調査で夏期にシェイドなどによる遮熱効果の検証実験を実施する予定である。また、当老人ホーム入居者対象にした「熱中症対策のための講演会」を計画している。さらに今年度の環境省主催の夏の暑さ対策展において生気象学会共催シンポジウムで「屋内外の住居環境対策」のテーマで講演を行う。加えてwebでの情報発信など広く一般に情報提供をしていく予定である。 国際家政学会(韓国)での発表や、国内学会での発表を行うとともに、夏期の熱中症対策について論文を投稿する。さらに夏期、冬期の得られた結果から、夏期と冬期の住まい方の関連度、環境バリアフリー化の評価を合わせて分析し,論文投稿する予定である。
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