2013 Fiscal Year Research-status Report
使用済み紙おむつから高分子吸収材を回収・再生するための基礎研究
Project/Area Number |
25350080
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Fukuoka Women's University |
Principal Investigator |
吉村 利夫 福岡女子大学, 文理学部, 教授 (20347686)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤岡 留美子 福岡女子大学, 文理学部, 助教 (50199303)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 紙おむつ / リサイクル / 高分子吸収材 |
Research Abstract |
本年度は離水メカニズムの解明を中心に検討を行った。以下に取り組み内容を示す。 a. 高濃度食塩水処理:高分子吸収材の吸水メカニズムについては、吸収材内外のイオン濃度差から生じる浸透圧を吸水の駆動力とするモデルがよく知られている。たとえば、市販の高分子吸収材は、純水中の吸水倍率は約300g/gと高いが、0.9%の食塩水(人の体液に相当)中では、約60g/gと大幅に低下する。そのため、濃度を極限まで高めた食塩水中では吸水せずに固体状になり、これを脱水機にかけることで高分子吸収材が回収できる可能性がある。7%濃度の食塩水を使用したところ、高分子吸収材は大きく収縮し、上記推定の妥当性が確認された。 b. 溶剤処理:メタノールなどの有機溶媒中では浸透圧が発現しにくく、高分子鎖が広がりにくいため、高分子吸収材は膨潤せずに沈殿すると考えられる。そのため、いったん膨潤した高分子吸収材を有機溶媒に添加することで、効率的に回収できる可能性がある。この方法が最も効果的であり、再生品の吸水性が最も高かった。 c. 真空乾燥:膨潤した高分子吸収材を真空処理することで、強制的に離水が進行すると考えられる。ただし、元の形状(粒状)を保持することは困難であると推定され、本来の吸水性能を有しているかを確かめる必要がある。いわゆる凍結乾燥法で試みたが、脱水効率が低かった。 d. 熱風処理:膨潤した高分子吸収材を熱風処理することで、強制的に離水が進行すると考えられる。熱分解による変性を回避しなければならず、温度や風力の条件検討が必要である。条件によっては吸水性能が大幅に低下するため、最適条件を見いだす必要がある。 e. 圧搾処理:浸透圧以上の圧力で加圧することによって、離水が可能であると考えられる(逆浸透膜による海水淡水化と同様の原理)。加圧プレス機で試みたが、完全に脱水させることは困難であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度は高分子吸収材の離水メカニズムの解明を目的に中心に検討を行ったところ、いくつかの有用な知見が得られた。 (1) 高濃度食塩水処理によっては、高分子吸収材が大幅に収縮し、脱水が容易になった。(2) 溶剤処理によって最も効果的に脱水でき、再生品の吸水性が最も高かった。(3) 真空乾燥で脱水することは可能であったが、他の方法と比較すると脱水の効率が低かった。(4) 熱風処理することで、強制的な離水を行った。スケールアップや効率は高いが、条件によっては吸水性能が大幅に低下するため、最適条件を見いだす必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)離水方法の検討 平成25年度に引き続き、実用化を視野にスケールアップを念頭においた検討を行う。離水方法については、平成26年度中での基本技術の確立を目指す。 (2) パルプとの分離 紙おむつの吸収層の主要成分は、パルプと高分子吸収材である。吸水前の乾燥した状態ではふるい分けなどで両者を容易に分離することが可能であるが、吸水後はゲル状になった高分子吸収材の中にパルプが埋没した状態になっており、両成分を効率よく分離するための工夫が必要である。そのポイントは、いかにして高分子吸収材を効率よくゲル状から固体状に変換するかである。 現在は塩化カルシウム水溶液中で高分子吸収材を凝集・沈殿させることで、パルプと分離している。しかし、この方法では二価のカルシウムイオンが高分子吸収材のカルボキシル基と結合して強固な架橋構造を形成するため、新品と同等レベルの吸水性能を有する高分子吸収材を再生することは困難であると推定される。塩化カルシウム法に代わる高分子吸収材の凝集方法として、(1)塩化ナトリウム法、(2)溶剤処理法などを検討する。 以上のように、パルプと高分子吸収材との分離は、離水方法と共通する要素を含んでおり、両者を同時に達成できる可能性がある。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は、手持ちの試薬類、装置を活用することで検討を進めることが出来たので、支出を最小限に抑制することが出来た。 加熱による脱水に関する研究を効果的に進めるため、平成26年度に熱分析装置を購入する。これによって、加熱条件と吸水性能との関係解明を進める。
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