2014 Fiscal Year Research-status Report
赤ワイン由来成分ピラノアントシアニンに関する基盤的研究
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25350093
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
久本 雅嗣 山梨大学, 総合研究部, 准教授 (00377590)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ワイン / アントシアニン / ピラノアントシアニン |
Outline of Annual Research Achievements |
【目的】赤ワインの熟成が進むにつれて色調は赤から赤褐色へと変化する。それに伴い、赤ワイン中に新たに「ピラノアントシアニン」と呼ばれる赤色化合物を形成する。26年度はピラノアントシアニンの中でもMalvidin 3-O-glucoside pyruvate(Vitisin A)の生成機構の解析及び高産生条件の確立を目的とした。具体的には、ワイン醸造中においてMalvidin-3-O-glucosideよりも安定性の高いピラノアントシアニンであるVitisin Aを多く含むワインの醸造を行った。
【方法】Vitisin AはMalvidin-3-O-glucosideとピルビン酸による反応で生成することから、ピルビン酸を多く産生する酵母を用いることでVitisin Aの形成を促進できるのではと考え、赤ワイン醸造に用いられている7種類の市販酵母の中からピルビン酸高産生酵母の選抜を行った。また、選抜酵母を用いて、500 mLの小ロットによる赤ワインの醸造を行い、UPLC-TOFMSや色差計(Lab色空間(CIELAB, L*a*b*))を用いて、Vitisin Aの生成量を測定した。
【結果】供試した酵母の中でRhone2226株が最もピルビン酸を多く産生した酵母であった。さらに、このピルビン酸高産生酵母を用いた赤ワインの醸造行った結果、Vitisin A量に大きな差は見られなかったが、Vitisin Aの生成が確認された。分光色差計による色差の測定を行ったところ、発酵開始から120時間経過後(5日目)にa*の値が急激に減少し、その後徐々に増加し、その際b*も共に増加した。これは溶存酸素濃度が上昇し始めた時間と一致していることと、a*の値のみの上昇ではなく、a*b*共に上昇が見られたことから、Vitisin A以外に色調変化の原因として、高分子の色素重合体の産生が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時に、平成26年度の計画として、「発酵中のピラノアントシアニンの生成機構の解析及び高産生条件の確立」を挙げた。
1.前年度の結果より、ピラノアントシアニンの1つであるMalvidin 3-O-glucoside pyruvate(Vitisin A)は、Malvidin-3-O-glucosideとピルビン酸による反応で生成することから、ピルビン酸を多く産生する酵母を用いることでVitisin Aの形成を促進できるのではと考え、赤ワイン醸造に用いられている7種類の市販酵母を用いて、モデル果汁によるピルビン酸高産生酵母の発酵試験を行った。その結果、Rhone2226株が最もピルビン酸を多く産生する酵母であった。 2.上記で得られた選抜酵母を用いて、500 mLの小ロットによる赤ワインの醸造を行い、UPLC-TOFMSや色差計(Lab色空間(CIELAB, L*a*b*))を用いて、Vitisin Aの生成量を測定した。その結果、Vitisin A量に大きな差は見られなかったが、Vitisin Aの生成が確認された。分光色差計による色差の測定を行ったところ、発酵開始から120時間経過後(5日目)にa*の値が急激に減少し、その後徐々に増加し、その際b*も共に増加した。これは溶存酸素濃度が上昇し始めた時間と一致していることと、a*の値のみの上昇ではなく、a*b*共に上昇が見られたことから、Vitisin A以外に色調変化の原因として、高分子の色素重合体の産生が示唆された。以上より、26年度の計画はおおむね予定通り遂行されたと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
本課題の実施結果より、25年度にピラノアントシアニンは、耐光性・耐熱性を有することが認められ、26年度は「発酵中のピラノアントシアニンの生成機構の解析及び高産生条件の確立」の一部について結果が得られたことから、今までにない新しい特徴を持つ機能性色素素材を創出することが可能となった。現在、高機能性で付加価値のある食品の開発が活発化していることから、ピラノアントシアニンはこうしたニーズに対応した製品への適用が可能であると考える。 今後は、”ピラノアントシアニン”や、ピラノアントシアニンとプロアントシアニジンなどの複合体である”高分子色素重合体”の高効率・大量生産可能な方法並びに、化学構造とその呈味について明らかにする必要がある。これら課題を解決することにより、従来のアントシアニン系天然着色料では困難であった各種食品の品質が向上し、ブドウを利用した高付加価値のある新たな食品素材技術の創出が可能となり、食品のみならず、創薬、医学への応用も十分に考えられる。
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Research Products
(1 results)