2014 Fiscal Year Research-status Report
咀嚼・嚥下過程での食塊挙動と食品の物性に関する体系的研究
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25350102
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Research Institution | Showa Women's University |
Principal Investigator |
森高 初恵 昭和女子大学, 生活機構研究科, 教授 (40220074)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 咬筋 / 顎二腹筋 / 寒天ゲル / サイズ / 咀嚼 / 筋電位 / 官能評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は平成25年度の結果をヒトの咀嚼運動の観点からさらに追求するために、破砕寒天ゲルと一辺が3.5mmの3.5mm立方体寒天ゲルおよび一辺が15mmの15mm立方体寒天ゲルを試料として、摂食前の食品サイズの相違が咀嚼時および嚥下時の筋活動量に及ぼす影響について検討した。 ミートグラインダーにより破砕した破砕ゲルは、少ない咀嚼回数においても咬筋活動量は小さく、咀嚼回数の増加に伴う咬筋活動量の変化も小さかった。特に、咀嚼回数の増加に伴う咬筋活動時間の低下が緩慢であった。主観評価においても、他のゲルと比較して全ての咀嚼回数において咀嚼時の力は弱く、嚥下時の舌圧は弱いと評価された。 3.5mm立方体ゲルでは、5~20回咀嚼における咬筋活動強度は3種のゲルの中で最も高く、咀嚼回数の増加に伴う咬筋活動量および咀嚼終了から嚥下までに要する時間の低下は緩慢であった。主観評価においても、ゲルが咀嚼により破壊されている感覚は15mm立方体ゲルと比較して低く、咀嚼回数が増加してもまとまりにくく、嚥下時の舌圧は強いと評価された。 15mm立方体ゲルは、5回咀嚼では3.5mm立方体ゲルに比べ咬筋活動強度は低かったが、咬筋活動時間は長く、咬筋活動量も大きく得られた。咀嚼終了から嚥下までの時間も長かった。しかし、咀嚼回数の増加に伴い咬筋活動量および咀嚼終了から嚥下までに要する時間は顕著に低下し、主観評価においてもゲルが咀嚼により破壊される感覚は強く、3.5mm立方体ゲルと比較して、まとまりやすく、嚥下時の舌圧は弱いと評価された。 以上の結果から、摂食前の食品サイズの相違により、咀嚼時の咬筋活動量は異なることが判明し、今回用いた試料では破砕ゲルの咀嚼時の力が最も弱く、反対に3.5mm立方体ゲルでは最も大きな咀嚼力を必要とする結果が得られ、平成25年度の結果をヒトの咀嚼運動から明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度の目標を変更したが、変更した目標はほぼ達成されている。ミートグラインダーにより破砕した破砕ゲルと、一辺が3.5mmの立方体寒天ゲルおよび一辺が15mmの立方体寒天ゲルを試料として用い、3種類の摂食前サイズの異なるモデル食品の咀嚼および嚥下過程における咬筋および顎二腹筋の筋活動量に及ぼす影響について検討し、平成25年度の結果を支持する結論が得られた。その成果は、日本食品科学工学会誌(「寒天ゲルのサイズが咬筋・顎二腹筋の活動に及ぼす影響」第61巻、7号、293-301(2014))へ掲載され、研究成果を社会に還元することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は平成26年度と平成27年度に実施予定であった寒天ゾル・ゲルを用いて検討する。被験者は20歳代の女子大生20名とし、試料として0~0.9%濃度の寒天ゾル・ゲルを破砕したゾルを用いる。力学特性は、摂食前の寒天ゾル・ゲルを破砕したゾルのテクスチャー特性値をクリープメータ(RE-33005、山電製)を用いて、厚生労働省(現・消費者庁)が定めた嚥下困難者用食品の許可基準の試験方法に従い、硬さ、凝集性、付着性などから試料の力学特性について考察する。舌と硬口蓋の接触様相は、5個の感圧点を配列した極薄型シート状センサー(ニッタ社製)を用いて、舌と硬口蓋の定量的接触様相を座位にて計測する。測定位置は硬口蓋正中部前方部、中央部、後方部と後方周辺部の5点とする。測定回数は1試料につき、1人10回ずつとし、得られたデータから初期接触時間、ピーク出現時間、接触持続時間、接触解放時間、ピーク値、積分値、総積分値を求める。これらの解析値から、寒天ゾル・ゲルを破砕したゾル食塊の口腔から咽頭への送り込みの強弱について検討する。咽頭部における食塊の移動速度は、超音波画像診断装置(東芝メディカルシステムズ株式会社製)を用いて咽頭部における食塊通過時の時間―速度スペクトルを計測し、食塊の最大移動速度、平均速度、通過時間、面積などを求め、寒天ゾル・ゲルを破砕したゾルの力学特性と咽頭部での移動特性との関係について検討する。官能評価は、ヒトが破砕ゾルを摂食する際の「咀嚼の容易さ」、「まとまりやすさ」、「嚥下後の残留感」、「嚥下しやすさ」などについて、尺度法により評価し、検討する。 上述の実験手法により得られたデータについて総合的に検討し、咀嚼・嚥下過程における安全な食品の力学特性について究明する予定である。
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Causes of Carryover |
平成26年度は寒天ゾル・ゲルについて検討する予定であったが、平成25年度の結果をヒトの咀嚼運動の観点からさらに追求するために、破砕寒天ゲルと一辺が3.5mmの立方体寒天ゲルおよび一辺が15mmの立方体寒天ゲルを試料として用い、摂食前の食品サイズの相違が咀嚼時および嚥下時の筋活動量に及ぼす影響について実験を行い、結果をだした。そのため、平成26年度購入予定の物品を必要とせず、物品の購入を見合わせたために、予算を平成27年度へ繰り越すこととなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度は平成26年度の予算も合算した額の研究費について、研究を進めるために必要な舌と硬口蓋の接触様相の測定用極薄型シート状センサーの購入費用や、研究に必要な他の消耗品費などに用い、さらに実験結果を学会で公表するための費用や、学会誌へ投稿し掲載してもらうための費用などとして用いる予定である。
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