2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25350106
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nagoya University of Arts and Sciences |
Principal Investigator |
和泉 秀彦 名古屋学芸大学, 管理栄養学部, 教授 (80351211)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 精白米 / 低アレルゲン化 |
Research Abstract |
精白米を0.63%クエン酸溶液、1.3%NaCl溶液、1.3%クエン酸溶液に順に浸漬させ、各溶液に浸漬後に精白米に残存している総タンパク質量をケルダール法で測定し、タンパク質組成をSDS-PAGEで解析し、米の14-16kDaアレルゲンを特異抗体を用いたイムノブロットで検出した。総タンパク質量は、原料米と比較して0.63%クエン酸溶液浸漬後に約20%減少し、その後はほとんど変化しなかった。次に、各段階におけるタンパク質組成を解析した結果、0.63%クエン酸溶液浸漬時に分子量が25kDa付近と14kDa付近のバンドが薄くなったことがわかった。次に、14-16kDaアレルゲンをイムノブロットにより検出した結果、0.63%クエン酸溶液浸漬時にバンドが薄くなり、その後のバンドの変化は見られなかった。そこで、14-16kDaアレルゲンの減少量を算出するためにイムノブロットのバンド強度について輝度解析を行った。原料米と比較して0.63%クエン酸溶液浸漬後に約87.5%減少した。その後大きな減少は見られなかった。この工程で作製した低アレルゲン米はタンパク質の栄養価は約80%保持し、アレルゲンであるアルブミンやグロブリンが87.5%減少することがわかった。以上の結果より、14-16kDaアレルゲンの減少は0.63%クエン酸溶液浸漬時に起こり、その後の工程でのアレルゲンの減少は見られなかったことから、0.63%クエン酸溶液浸漬以後の工程を省いても同じ結果が得られると考えられた。 次に、製造工程の0.63%クエン酸溶液浸漬時にプロテアーゼM、デナプシン、ニューラーゼの3種の酵素を使用し、さらにアレルゲンが低減化されるかどうかを検討した。ニューラーゼを使用した場合、酵素処理後のアレルゲンは酵素を添加しない場合と比較して、顕著に減少しいた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定では、浸漬時に働く内因性の酵素が低アレルゲン化のキーになると予想して計画を立てたが、酸性の溶液浸漬のみで低減化が進行した。低アレルゲン化における内因性の酵素の働きは非常に低いと考えられたため、当初の予定を変更して、食品添加物として用いられている酵素を用いて低アレルゲン化されるかどうかを検討した。 結果として、酸性溶液および酵素の添加で、期待できる成果が得られた。 実際にアレルゲンタンパク質が10%ぐらいに低減化されていれば、米アレルゲン患者は食することが可能と考えられるので、この酸性溶液浸漬と添加する酵素に着目して、今後実験を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
酸性溶液および酵素の添加で米アレルゲンの低減化に効果が見られたことから、今後は、その両者を併せもつパイナップルの果汁などのプロテアーゼを含む溶液を利用して低アレルゲン化が可能かどうか模索する予定である。 また、低減化後に米粒に残存しているアレルゲンのペプシンおよびパンクレアチンに対する消化性をin vitroの系で、さらにそれらをマウスに経口投与した後の小腸内での状態を解析する。この結果、消化性が向上していれば、実際に低減化しているばかりでなく、ある条件での浸漬が精白米のアレルゲン性を抑制している可能性が考察できる。さらに、米アレルギーモデルマウスを作製し、実際に低アレルゲン米を摂取した際に、アレルギー症状(直腸温の低下、炎症など)が抑制されるかどうかを検証する。 最終的には、実際にヒトでも効果があるかどうかを検証する。方法としては、本研究で得られた新奇低アレルゲン米のアレルギー患者へのプリック-トゥ-プリックテストにて皮膚症状を観察する。その際に、炎症反応が見られなければ、実際に食べて頂き、摂食後の症状を医師の監督下にて観察する。これらの結果をもとに、新奇低アレルゲン米の実用化へと発展させる。
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