2014 Fiscal Year Research-status Report
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25350108
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Research Institution | Doshisha Women's College of Liberal Arts |
Principal Investigator |
真部 真里子 同志社女子大学, 生活科学部, 教授 (50329968)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | α波 / 嗜好性 / 官能評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度の研究より、脳波測定(α波発生量)による好ましさの客観的評価にいくつかの大きな問題があることが発覚した。そこで、今年度は、まず脳波測定による嗜好性の客観的評価法の確立をめざした。 まず、昨年度購入した簡易脳波測定装置(ミューズブレーンシステム)にて、α波発生量が検出できているかを確認するために、開眼、閉眼時の脳波測定を実施した。その結果、本装置で測定したα波発生量は閉眼時は開眼時よりも有意に増加し、本装置でα波発生量が検出できていることが確認できた。そこで、におい刺激によるα波発生量の上昇が刺激後どのタイミングで起こるのかを、α波発生の確認されているラベンダー香料と鰹だしの2種類の試料によって検討した。その結果、上昇するタイミングには個人差があるが、おおむね、上昇する場合は刺激後2分以内に起こることが確認できた。これらの結果を基に、被験者には、まず、α波の発生量をコントロールするため、2分間簡単な計算をしてもらい、その後、各種だしのにおいをつけた0.7%食塩水を飲んでもらって、その直後2分間の脳波を測定することにした。得られたデータから、計算時に対するだしのにおいをつけた食塩水摂取時のα波発生量の比率を算出し、被験者の申告した5段階の好ましさ評価との相関性を検討した。しかし、今年度の研究によっても、このα波発生量と好ましさの間には、全く相関が認められなかった。 他方、本研究は、だしによるうま味の発現について、日本のみならず台湾でも検討することを計画している。そのためにも、客観的な好ましさの評価方法の確立を目指していたが、捗々しい成果が得られなかったため、昨年度実施した官能評価と同様の評価を台湾で実施することにした。その準備として、官能評価の実施時期と使用できる場所、道具、人的確保を確認するため、台南市の嘉南藥理科技大學にて陳姿秀助理教授と打合せを実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究では、だしによるうま味の発現について検討するとともに、日本人を対象とした官能評価結果と同様の結果が他の食文化のもとにある人でも得らえるのかを検討することを目的としていた。そのため、「おいしい」「好ましい」という主観的な判断を、言語体系が異なる被験者でも共通して客観的に評価しうる指標を確立することを重要視してきた。そこで、α波発生量を候補指標として検討してきたが、α波発生には予想以上に個人差が大きく、また、測定中の様々な要因にて変化し、適切な結果が得られなかった。結論として、本研究課題において好ましさの客観的評価の確立することを断念したが、その決断の遅れ、そこまでの試行錯誤に時間が費やされたことが、遅延の原因である。
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Strategy for Future Research Activity |
上述のとおり、本研究課題には、予想外の著しい研究進行の遅れが生じている。そのため、残りの研究期間での好ましさの客観的評価の確立は断念した。そこで、官能評価方法は従来の方法に固定し、鰹だしに認められたような“うま味を惹起するにおいを有するだし”を検索するか、台湾にて昨年度実施した官能評価と同様の官能評価を行い風味認識に対する食文化の影響を検討するか、いずれか一方を選択せざるをえない。いずれを選択しても、十分な研究成果が得られる保証はないが、後者は、今年度の研究実績にも記載のとおり、既に現地での打合せを開始しているので、次年度は、後者を中心に研究を推進することとする。 今年度の打合せの結果、実施時期は、実施受け入れ大学の夏休み終了直後の9月~10月とする(新学期の新学期授業開始等が現在不明のため詳細は未決)。試料と器具の一部は日本から送付する。官能評価の実施は、現地大学生ならびに院生に依頼する(真部本人が現地に赴き、陳先生とともに現地大学生ならびに院生を指導。謝礼を支払う)。この官能評価実施協力者ならびに被験者の募集は、陳先生に依頼済である。6月に詳細を再度打合せ、具体的な計画立案を行う。
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Causes of Carryover |
主たる理由は、昨年度見合わせた脳波測定装置の購入を断念したことである。その一方で、官能評価の試験液調製に使用してた超純水製造装置が修理不能となり新規購入、ブイヨン等のアミノ酸分析に使用しているHPLCカラム等の不調が相次ぎ再充填が必要になるなど他の物品費の支出が拡大した。その差額によって、次年度使用額が生じる結果となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、昨年度実施した官能評価を台湾にて実施し、日本人との認識の差異を明らかにすることを主目的とする。台湾での官能評価には、塩分計と恒温槽が必要であることが明らかになったため、新たに購入する。また、真部の校務の関係上、継続的な官能評価の実施が困難であるため、数回に分けて、先方に行く必要が生じる見込みであるため、申請時に比べ、旅費と謝礼が多く必要となる可能性が高い。これらの費用に、今年度の差額を充てる予定である。
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Research Products
(1 results)