2013 Fiscal Year Research-status Report
生体抽出液を用いた田畑の土壌からの放射性セシウムの除去と微量元素の損失防止
Project/Area Number |
25350124
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
矢永 誠人 静岡大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (10246449)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 除染 / 放射性セシウム / 土壌 / 原発事故 |
Research Abstract |
(1)2011年3月に発生した東京電力福島第一原子力発電所事故により放出された放射性物質、特に放射性セシウムにより汚染された田畑の土壌の除染を目的とし、まず、市販の園芸用土壌をCs-137で汚染させ、その模擬汚染土壌について、純水、1M硝酸カリウム水溶液(1M KNO3)、、1Mヨウ化カリウム水溶液(1M KI)または2Mヨウ化カリウム水溶液(2M KI)による除染を試みた。その結果、カリウムイオンとのイオン交換と推定されるメカニズムにより一定の除染効果が認められたが、放射性セシウムにより汚染されてからの時間が経過するとともに、除染効率は低下していった。 また、基本用土たる黒ボク土、赤玉土、鹿沼土、バーミキュライト及びピートモスなどの有機物について、個別に放射性セシウムに対する吸着性及び化学処理による脱離挙動を調べたところ、バーミキュライトについては純水処理及びカリウムイオン処理のいずれにおいても除染効率は著しく低かったのに対し、黒ボク土、鹿沼土及び赤玉土並びにピートモスでは、カリウムイオンを用いた除染が効果的であった。これらのことから、化学除染と分級などの物理的除染を併用することにより、放射性廃棄物の発生を大幅に低減させつつ、効率的な除染を行うことが可能であることを示していた。 (2)福島県郡山市内の畑で採取した土壌、放射性セシウムで汚染させていない黒ボク土および標準土壌JSO-1について、(1)で記した方法や0.1M硝酸で処理したものについて、PIXE分析法により各土壌中の元素濃度の定量を行い、無処理のもとの比較を行ったところ、これらの方法により化学除染を行った場合には、いずれも塩素およびカルシウム濃度の低下が認められた。このことは、田畑の土壌について化学除染を適用した後の作物の生育に関して注意を払う必要があることを示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
不溶性の放射性セシウムの粒子に対する生体抽出物による可溶化実験については、現在経過観察中であるが、ヨウ化カリウム水溶液などを用いた化学除染については一定の成果を見ることができており、模擬汚染土壌を用いた除染実験の成果を公表することができる段階にすることができた(Journal of Radioanalytical and Nuclear Chemistry誌に修正原稿投稿中の段階)。 また、化学除染により土壌中の予期せぬ元素の損失を確認することができたとともに、その損失割合が土壌の種類や除染方法により異なっているようであり、今後の研究展開に新たな道筋を見いだす結果が得られたと考えたためである。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)平成25年度に着手した土壌中に存在する不溶性の粒子状の放射性セシウムの可溶化、特に、動物の臓器・組織からの抽出物や植物の葉からの抽出物を用いた可溶化実験を継続する。この実験では、平成25年度に採取した実汚染試料を用いる。 (2)分析用標準土壌および市販の園芸用土壌から放射性セシウムを用いて模擬汚染土壌を作成し、可溶性のセシウム(イオン性のセシウム)除去についての実験を行う。 (3)(1)および(2)の処理を行った際に土壌から失われる必須微量元素と土壌成分との関連性について検討し、除染後の田畑の施肥について提案する。この分析では、機器中性子放射化分析法およびPIXE分析法を併用する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
放射線計測のタイミングから、測定器の定期交換部品の交換を当初計画の平成25年度から平成26年度に変更したため。 放射線測定器の定期交換部品の費用に充当し、研究計画を遂行する。
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