2014 Fiscal Year Research-status Report
生体抽出液を用いた田畑の土壌からの放射性セシウムの除去と微量元素の損失防止
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25350124
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
矢永 誠人 静岡大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (10246449)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 除染 / 放射性セシウム / イネ / 土壌 / 用水 / 原発事故 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)福島第一原子力発電所事故により放出された放射性セシウムの除染を行った際に影響を受けることが予想される生体必須元素その他の少量および微量元素の挙動の基礎データを得ることを目的として、福島市内山間部において、2014年5月~10月にかけて継続的に用水(ため池水および湧水)並びに田水の採取を行い、PIXE分析法により微量元素の分析を行った。また、田の土壌および出穂後のイネを採取し、土壌、イネの葉および穂に含まれる微量元素の分析を行い、水については18元素、イネの葉については18元素、稲穂(籾付)については15元素、また、土壌については21元素を定量することができた。これにより、現時点では籾付コメについての暫定値であるが、当該地域における放射性セシウムの移行係数を求めるとともに、多元素同時定量分析法であるPIXE分析を行った成果として、同一の試料について他のアルカリ金属やその他の元素の移行係数と比較することができた。また、種々の元素のイネ体内における分布を同一個体内で調べることができた。さらに、RIイメージングを行うことにより、事故由来の放射性セシウムの移行係数が他のアルカリ金属と比較して低くなる原因が推定された。
(2)生体関連物質としてのペーパースラッジを用いて、放射性セシウムの土壌中吸着・固定に係る試験を行った。市販のCs-137溶液を用いた反応速度論的吸着実験および福島市山間部の田の土壌についての試行を行ったところ、放射性セシウムが農作物に吸収されないように、より強固に土壌中に固定されることを示す結果が得られた。本方法は、農作業に携わる者の被ばく線量の低減化としては不適当ではあるが、食物中への移行を防御するには優れた方法であると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)模擬汚染土壌を用いた種々の除染剤を用いた化学除染の予備実験の成果をまとめ、公表することができた。 (2)水田や畑の土壌のように、物理的あるいは化学的除染を行った際に挙動の変化が予想される生体必須微量元素をはじめとする多数の元素について、実際の除染を開始する前の基準となる正常時における挙動、田水あるいは土壌からの吸収挙動、イネ体内における微量元素の分布などの基礎データを取得することができた。 (3)また、除染とは逆に土壌中への完全固定化についても検討し、土壌中において放射性セシウムが固定化物質に移行することを確認することができ、土壌中固定への道を開くことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
福島市内山間部の田から採取した水田土壌を用いて、実験室内でイネのポット栽培しながら除染実験および土壌中への放射性セシウムの固着実験を行い、放射性セシウムの追跡を行うとともに、各生育段階においてイネの葉を採取してPIXE分析法による多元素同時分析を行う。また、土壌およびコメについての分析も行い、除染または固定化の影響について検討する。
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