2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25350135
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Prefectural University of Kumamoto |
Principal Investigator |
友寄 博子 熊本県立大学, 環境共生学部, 講師 (10347700)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 栄養学 / 食品 / 脂質 / 糖尿病 / 低栄養 |
Research Abstract |
メタボリックシンドロームの成因は、食事による影響がかなり大きいと考えられている。糖尿病の予防と治療には、食後高血糖をコントロールするだけでなく、インスリンの過剰分泌を抑える事も必要である。申請者は、先の研究で海苔から経口摂取可能な糖尿病の予防と治療に役立つインスリン様作用成分を抽出することに成功した。そこで、本研究ではこの画分に含まれる作用物質の分離・精製を進めた。これまで、インスリンはタンパク質であること、活性成分が耐熱性を示すことなどから、活性成分はペプチドやアミノ酸と仮定して研究を進めてきた。しかし、本年度までの成果からその可能性がかなり低いことが示され、それ以外の成分であることが明らかとなった。今後も引き続き活性成分の探索を進めていく予定である。 一方、低栄養状態におかれている国民の存在も無視できない状態にあり、その栄養状態改善のために脂質吸収改善の一助となる研究を行っている。具体的には先の研究で、海苔が脂質吸収を促進する作用を持つ事を明らかにしており、その作用成分の探索を進めた。本研究で明らかにした脂質吸収を促進する試料は、海苔に加熱加工を施した試料である。海苔は加熱することで水溶性食物繊維が増えることが報告されており、本年度はその点に着目し、海苔加工品から水溶性食物繊維や水不溶性食物繊維画分を抽出し、それらの脂質吸収に及ぼす影響について検討を行った。さらに、比較を行うために、水溶性食物繊維として食品に良く用いられているアラビアゴムを用いて脂質吸収に及ぼす影響についてさらに検証をおこなった。その結果、いずれの試料も脂質の吸収を促進しなかった。以上の結果から加熱によりその含有量が増加するのにもかかわらず、水溶性食物繊維は脂質吸収を促進しなかったことから、それ以外の成分が作用することが明らかとなった。今後も引き続き作用成分の探索を進めていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
海苔由来成分のインスリン様作用物質の分離・精製の研究計画では、その作用物質の同定を目的として挙げている。本年度は、海苔に4割含まれているたんぱく質に着目し、海苔に含まれているアミノ酸だけでなくその他のアミノ酸についてもインスリン様作用を比較した。しかし、海苔試料の活性に比較して高く作用を示すものはなかった。以上のことから、作用成分は海苔に含まれるその他の耐熱性を示す低分子物質であることが示され、さらに同定へと近づくことができた。海苔微粉末の脂質吸収促進作用の研究計画では、その作用機作解明に、エマルション安定性がどのように脂質吸収に影響を及ぼすかについて評価することを挙げている。本年度は、海苔に含まれる水溶性食物繊維に類似し、食品によく利用されているアラビアゴムを比較対象として実験を行った。さらに、加工の違いによる脂質吸収への影響を評価するために、脂質吸収を促進した海苔加工品より分画した試料を用いて、脂質吸収に及ぼす影響を検討した。これらの成果から、脂質吸収を促進する物質は食物繊維関連画分ではない可能性が示され、関与成分の解明がかなり進んだと実感した。以上の成果より本研究はおおむね順調に進展しているものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画を大幅に変更することはなく、下記の方針で今後進めていく予定である。いずれも先に示した通りおおむね順調に進展し、成果を得ている。 1) 海苔成分のインスリン様作用物質 前年度作用物質の分離・精製を進めていたが、同定には至らなかった。これまで作用物質としてアミノ酸やペプチドに着目して進めてきたが、活性成分には当たらないことが示されたことから、今後はその他の成分について新たな分析方法を検討するとともに探索を進めていく予定である。 2) 海苔微粉末の脂質吸収促進作用 前年度進めていた脂質吸収促進作用に関与する成分については、継続してその作用物質の探索を進めていきたいと考えている。なお、これまで進めていた中性脂肪の吸収への影響だけでなく、計画にも示しているように脂溶性のビタミンや抗酸化色素等の吸収に及ぼす影響についてもさらに検討していく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の予定では、人件費・謝金として計上していたが、雇用する人員の確保がうまく進まず、おおよそ計画していた費用が未使用になってしまった。 本年度も上記と同様に雇用できる人員の確保が難しいことが予想される。したがって、器具や試薬でそれを補い、研究計画通りに進めていきたいと考えている。
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Research Products
(2 results)