2013 Fiscal Year Research-status Report
大学生の味覚と自律神経機能に影響を及ぼす要因-食生活・心身ストレスとの関連
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25350140
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyorin University |
Principal Investigator |
苅田 香苗 杏林大学, 医学部, 准教授 (40224711)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
原田 まつ子 帝京短期大学, その他部局等, 教授 (60413077)
吉田 正雄 杏林大学, 医学部, 講師 (10296543)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 自律神経機能 / 平衡機能 / 食生活習慣 / 気分・感情状態 / 心迫変動 |
Research Abstract |
初年度は、大学生の自律神経機能と平衡機能の評価を行い、相互の関連性と不顕性の機能低下をもたらす因子について調査・研究を行った。 都内の某女子短大生67名(平均年齢19.6±1.1歳)を対象に、重心動揺計を用いて開眼・閉眼の順でそれぞれ60秒間の足底圧の垂直作用力を検出し、重心動揺面積、動揺総軌跡長、動揺速度を算定して平衡機能を評価した。また自律神経・加速度脈波測定器を用い、2分30秒間の心迫変動データをパワースペクトル解析により超低周波成分(VLF)、低周波成分(LF)、高周波成分(HF)に分け、対数変換したLn(LF/HF)を交感神経系の活動指標として解析を行った。検査同日に自記式質問票による健康・食生活習慣の調査および、気分・感情状態をPOMS(Profile of Mood States )、不安の程度をSTAI(The State-Trait Anxiety Inventory)質問票により評価し、各検査指標を比較し関連性を検討した。 解析の結果、閉眼時動揺面積とLnVLFの間には正の相関関係が認められた。またLF/HFとHF間には負の相関があり、STAI状態不安が高いとLF/HFが低くなる傾向にあった。開眼時重心動揺面積を上位、中位、下位(n=22,23,22)の3群に分け、各心迫変動成分を比較したところ、上位(動揺大)群は下位(動揺小)群に比べ、LnVLFとLnLF/HFが高値であった。対象者の平均睡眠時間や運動・食生活習慣と各検査指標との間に関連性は認められなかったが、検査前日の各対象者の睡眠時間は、POMS疲労得点と負の相関関係があり、「毎日ぐっすり眠れる」と回答した者(22.4%)では、POMSの抑うつ・敵意・疲労・混乱得点が低く、活気得点が高かった。 若年女性の一部でみられた平衡機能の低下は、特定の交感神経および副交感調節の指標と関連していることが示唆された。次年度はさらに対象者数を増やし、味覚感度を評価するとともに心身の不調が反映され得る指標について検討を行いたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は女子短期大学生を対象にフィールド調査を実施し、自律神経機能評価を主とした各種検査と質問票調査によるデータ収集を横断的に行った。それらの解析結果をまとめ、2つの学会で成果の発表を行った。 さらに男子学生を含めた大学生を対象に、味覚検査と各種指標・ストレスに関する検査を実施し、当初の研究目的に沿った調査・研究を継続中である。
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Strategy for Future Research Activity |
継続中の調査を履行し、機能検査と各種質問票について記述統計の結果をまとめ、以下の手順で解析を行う。 1)調査対象学生の味覚感度、心迫変動成分、平衡機能の分析と評価を行う。 2)STAI質問票より、対象者の検査時の不安状態と不安になりやすい性格傾向を分析し、またPOMS質問票により、緊張・抑うつ・怒り・活気・疲労・混乱の6気分尺度について気分プロフィールの評価を行う。 3)栄養調査票MMITQを分析し、各対象者の摂取栄養素量を算出するとともに、質問票から得られた生活習慣(飲酒・喫煙習慣、運動習慣、睡眠、嗜好品、サプリメントの使用、外食等の食習慣行動)、属性(住居形態、家族構成、既往歴)および身体計測値(身長、体重)を集計し、統計要約表を作成する。 4)運動習慣については、多メモリー加速度計測装置付き歩数計により推計した身体活動量をゴールド・スタンダートとすることにより、用いた質問票の運動関連項目の妥当性を評価する。 5)自律神経指標、ストレス指標、味覚閾値や各種質問票項目との相互の関連性について、相関及び正準相関分析、重回帰分析、多重ロジスティック分析などの統計手法を用いて解析を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
大学生を対象としたフィールド調査を拡大し、次年度にまたがって継続させることになったため、調査関連費を繰り越した。引き続き、自律神経機能については重心動揺計と加速度脈波測定器を用いて自律神経系バランスの分析を行い、味覚機能検査については濾紙ディスク法により4基本味質の閾値・感度を詳細に検討する。 主に自律神経機能と味覚機能の各種検査と質問票調査にかかわる消耗品、物品に使用する。具体的な使用用途は、味覚検査の濾紙ディスクキット、唾液ストレスマーカー測定用のアミラーゼ活性チップ、不安・気分感情状態の検査(STAIおよびPOMS)および食事・生活習慣調査(MMITQ)用質問票、身体活動量評価のための多メモリー加速度計測装置付き歩数計の購入等である。 また、調査のための機材運搬費、通信費、および研究打ち合わせ会議費のほか、研究成果発表のための旅費を予算に計上する。
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