2014 Fiscal Year Research-status Report
大学生の味覚と自律神経機能に影響を及ぼす要因-食生活・心身ストレスとの関連
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25350140
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Research Institution | Kyorin University |
Principal Investigator |
苅田 香苗 杏林大学, 医学部, 准教授 (40224711)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
原田 まつ子 帝京短期大学, その他部局等, 教授 (60413077)
吉田 正雄 杏林大学, 医学部, 講師 (10296543)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 自律神経機能 / 身体重心動揺 / 身体活動量 / ストレス状態 / 状態不安 / 心拍変動成分 / 気分・感情状態 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度研究に引き続き、大学生の自律神経系機能と身体重心動揺の評価を行い、両者の関連性と不顕性の機能低下をもたらす因子を調べるため解析を行った。さらに、自律神経機能指標の各心拍変動成分や唾液中ストレス指標が、若年女性の日常の身体活動量と関連があるのかについて検討を行った。 大学生の男女計86名を対象に、重心動揺計により開眼・閉眼時の平衡機能を計測し、また、自律神経・加速度脈波測定器により心迫変動データをパワースペクトル解析した。検査同日に気分・感情状態をPOMS、不安の程度をSTAI自記式質問票により評価したところ、POMS混乱(C)得点と副交感神経系の活動指標であるLnLF間に負の相関関係が認められた。また、閉眼時重心動揺面積を上・中・下位の3群に分け、各心迫変動成分を比較したところ、上位(動揺大)群は下位(動揺小)群に比べ、LnVLFとLn(LF/HF)が有意に高値であった。 女子学生(n=67)に限ると、交感神経系の活動指標となるLn(LF/HF)とSTAI状態不安尺度との間に負の相関関係が認められた。女子学生のうち56名に活動量計を10日間連続で装着してもらい、平日・休日の消費エネルギー平均量を算定するとともに、超音波骨量測定装置により骨密度、および交感神経モニタにより唾液中のアミラーゼ活性値を測定した。その結果、平均身体活動量の高い学生では副交感神経系の活動指標であるLnHFが高く、またストレス状態の指標となる唾液中アミラーゼ活性は低値であり、有意な相関がみられた。他の検査指標間や骨密度、体脂肪率、BMI、エネルギーおよび栄養素摂取量との間に有意な関連性はみられなかった。運動量や生活活動度の高い若年女性では、安静時に副交感神経系が優位でストレス状態は比較的低いことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
大学生対象の自律神経機能評価を主とした各種検査、唾液中ストレスマーカー、日常の身体活動量と骨密度計測値、および自記式質問票より得た各種データを分析し、それらの結果を学会(平成26年度計4演題)で発表した。さらに詳細なデータ解析を行うとともに、成果を論文にまとめる準備を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
1.前年度までに検討できなかった事項に関する追加調査およびデータ解析: 濾紙ディスク法で判定した対象者の味覚認知閾値と自律神経機能指標、ストレス指標や各種質問票項目との関連性について、相関及び正準相関分析、重回帰分析、多重ロジスティック分析などの統計手法を用いて解析を行う。また、平成26年度の調査により、日常の運動習慣が自律神経機能を活性化する可能性が示されたため、対象者の平日と休日の生活強度や活動量を交絡因子として考慮し、自律神経系と味覚機能の不顕性の機能低下をもたらす要因について再検討を行う。 2.本研究テーマに関する成果の発表: 本研究成果および既存報告との比較検討事項について、学会・論文等で公表する。成人若年期において良好な心身機能を保持するために何が優先的な因子となり、将来的な疾病予防につながる指標値として活用できるのかを考察する。 3.今後のフォローアップ調査に関する立案と準備: 栄養・運動習慣・ストレス状態を含めて評価できる質問票を開発し、可能な限り長期間フォローアップするための調査について準備を始める。すなわち、自律神経・平衡機能や味覚の機能低下に影響を与え得る因子と転帰について追跡するため、内的整合性が保たれている項目は集約の上、寄与率の低い因子項目を除外し簡易型質問票を作成する。将来的に、潜在的な影響指標として着目した味覚と自律神経機能指標を20歳代より適正に維持することで、心身の疾病を効率的に予防できるか検証を進める。
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Causes of Carryover |
大学生の男女を対象としたフィールド調査は概ね終了したが、男子学生の参加率が低かったため、次年度にも追加調査を実施したいため。平成27年度は特に味覚機能と自律神経機能および食・運動習慣との関連や相互作用に焦点をあてた研究・解析を行い、さらに検証データを追加して仮説を再検討したい。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
保存期限や耐用年月を過ぎた物品、追加調査用に足りない消耗品の購入にあてる。具体的には、生活強度計測用の活動量計、アミラーゼ活性測定用の交感神経モニタ簡易機器、味覚検査やストレス検査にかかわる消耗品類、および追加の各質問票入手のために使用する。 また、これまで本課題から得られた研究結果を相互に報告するため、研究分担者・協力者との会議を開催した上で、学会や国際ジャーナルへの発表を進め、そのための会議費、旅費、印刷費、校正料、雑誌投稿料等にも使用する予定である。
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Research Products
(4 results)