2015 Fiscal Year Research-status Report
大学生の味覚と自律神経機能に影響を及ぼす要因-食生活・心身ストレスとの関連
Project/Area Number |
25350140
|
Research Institution | Kyorin University |
Principal Investigator |
苅田 香苗 杏林大学, 医学部, 教授 (40224711)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
原田 まつ子 東京家政大学, 家政学部, 教授 (60413077)
吉田 正雄 杏林大学, 医学部, 講師 (10296543)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 味覚感度 / 自律神経機能 / 食生活習慣 / 身体活動 |
Outline of Annual Research Achievements |
大学生の味覚感度や自律神経機能への関連因子について検討を加え、以下の研究成果を得た。 1)これまでの調査対象者249名のうち、調査当日の健康不良者を除き、繰り返し3回以上調査に参加できた女子学生84人を解析対象とし、総体的に評価した味覚感度と食習慣・栄養摂取量との関連性を調べた。濾紙ディスク法により判定した甘・塩・酸・苦味の各閾値のうち3味質以上で全対象者の最頻値区分より高閾値だった者を味覚感度低下群(n=24)、それ以外を味覚妥当群(n=60)として比較したところ、味覚感度低下群では味覚妥当群より亜鉛の平均摂取量が有意に少なく、飲酒やサプリメント摂取習慣のある者の割合およびマグネシウムと食塩の摂取量が有意に多かった。 2)追加調査への協力が得られた56名に対し、味覚検査とともに自律神経機能検査と身体活動量の計測を行ったところ、甘味と塩味に対する認知閾値は、休日の平均消費エネルギー量が多い者で低下しており、有意な負の相関関係がみられた。一方、酸味に対する閾値は、副交感神経系の活動指標LnHFとの間に負の相関関係が認められた。甘味の平均認知閾値の最頻値域を基準に、対象者を味覚感度低下群・妥当群・良好群の3群に分けて比較したところ、甘味感度低下群では休日の身体活動量が良好群に比べ有意に少なかった。酸味閾値に対する同様な比較において、LnHFに3群間で有意な差異が認められ、大学生の味覚感度は運動量や生活活動度の高い者が良好であり、自律神経の副交換系活動指標とも関連することが示唆された。 3)同年齢層の男子学生109名を対象に各種質問票調査を追加で実施し、女子学生の集計結果と比較したところ、STAIによる不安状態には性差が見られなかったが、POMSによる抑うつ・怒りなどの気分プロフィールは、男子の方が良好であった。自律神経機能等の評価を行う際に性差も意識する必要があると思われた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度研究実績の概要(1)の成果に関しては、すでに国内の学術雑誌に投稿し、修正後に受理された(論文題目「若年女性の味覚感度低下と食生活習慣およびストレスとの関連性について」)。 また唾液中ストレスマーカーを用いて味覚の変動を評価した解析結果については、「女子大学生の味覚感度の変動と気分状態および唾液中ストレス指標値との関連」という仮題で成果をまとめ、現在投稿の準備を進めている。 なお平成27年度は、所属の学会にて2演題の成果発表を行った。
|
Strategy for Future Research Activity |
食生活習慣と摂取栄養素(栄養調査票MMITQによる)データのほか、対象者の性格傾向(STAI質問票による不安状態)と気分プロフィール(POMS質問票による緊張・抑うつ・怒り・活気・疲労・混乱)を分析し、自律神経指標、ストレス指標、味覚閾値との相互の関連性について、相関及び正準相関分析、重回帰分析等の統計手法を用いて解析を行う。それらの解析結果をまとめ、学会誌への投稿の準備を進める。 今後のフォローアップ調査に関して研究打合せ会議を実施し、共同研究者らと協議しのうえ栄養・運動習慣・ストレス状態を含めて評価できる質問票を開発する。将来的に自律神経・平衡機能や味覚の機能低下に影響を与え得る因子と転帰について追跡していくため、寄与率の低い因子項目を除外して作成した簡易型質問票について予備調査を実施し、その妥当性を評価する。味覚感度や自律神経機能に係わる潜在的な影響指標を成人若年期より適正に維持することで、中高年期の心身の疾病を有効に予防できるか検証を行う。
|
Causes of Carryover |
昨年度は研究分担者および連携研究者の所属変更と移籍があり、共同研究者らを召集して今後のフォローアップ調査に関する打ち合わせ会議を開催できなかったため、立案・協議を次年度に持ち越し、簡易版質問票の作成と予備的調査による妥当性評価を実施したい。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
追跡調査のための会議費、共同研究者との研究打合せ交通費、調査補助者の謝金、質問票等の印刷費および通信運搬費に使用する。 これまでの調査の解析結果をまとめ、国際学会誌に公表するため、英文校正料、投稿・掲載費、論文別刷り代にも使用する予定である。
|
Research Products
(3 results)