2014 Fiscal Year Research-status Report
炎症を背景としたマウス大腸発がんモデルに対するキダチアロエ低分子成分の修飾作用
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25350152
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Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
新保 寛 藤田保健衛生大学, 藤田記念七栗研究所, 教授 (10142580)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | キダチアロエ / エモジン |
Outline of Annual Research Achievements |
平成25年度(初年度)は、アゾキシメタン(AOM)/デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘発マウス前がん病変(MDF)形成に対するアロエエモジン(AE)とエモジン(EM)の修飾作用を検討した。しかし、その結果はAEまたはEMの抑制効果は見られず、むしろ大腸MDF数と大腸腫瘍数は増加傾向を示した。これらの結果はDSS負荷(炎症)の有無に拘わらず大腸腫瘍の発生に抑制作用を示した低用量AEの先行報告(低用量AEはMinマウス大腸腫瘍形成を抑制する。Shimpo et al, APJCP 2015)と一致しなかった。 そこで、平成26年度は先行研究と並行して行ない抑制効果が予備実験的に得られたEM(AEの類似成分)によるMinマウスの腸腫瘍抑制作用の抑制機序を明らかにした。実験はMinマウスに普通食または50 ppm EM混餌を12週間与えた。その結果、腸管ポリープ数はEM投与で抑制傾向を示し、大型ポリープ数では特に小腸部位で有意な抑制効果を示した。免疫組織染色では、細胞増殖能を抑制することは示されなかったが、大腸部位で有意なアポトーシス誘導の亢進作用が見られた。血漿マーカーでは中性脂肪は変化しなかったが、総コレステロールが減少傾向を示した。種々のmRNA発現レベルを調べた結果、肝Adipo-nectin Receptor 2(AdipoR2)発現はEM投与で有意に上昇し、また大型ポリープ数と有意な逆相関性を示すことを見出した。 さらに、キダチアロエ抽出物の調製。分画に取り組んできた。2014年Hamizaらによって、アロイン(アロエ主薬成分で下剤成分)のラット大腸前がん病変の抑制効果の報告があったので、キダチアロエからアロインを取り除いた抽出物の調製に取り組んできた。一方、新規に再購入したMinマウスの自家繁殖率が低く、同動物実験は平成27年度に実施する見込みとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
(理由) 平成25年度の年度末に本研究所が移転したが、平成26年度当初も移転に伴う研究室の整備が続き、本研究の今年度の着手が遅れた。なお、平成26年度に実施予定であった「アゾキシメタン(AOM)/デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘発マウス大腸前がん病変形成に対するアロエエモジン(AE)とエモジン(EM)の修飾作用」を検討する実験は、前述のように、AEまたはEMの抑制効果は見られず、むしろ大腸MDF数と大腸腫瘍数は増加傾向を示した。そこで、平成26年度は先行研究結果(前述;低用量AEはMinマウス大腸腫瘍形成を抑制する)との相違点を検討する予定だったが、むしろAEやEMに関する過去の報告からそれらの腫瘍促進傾向を示すことの理由も理解できたので、本モデル実験は中断することにした。 また、同じく実施予定であった「DSS炎症刺激によるMinマウス大腸発がんに対するキダチアロエ抽出物・活性成分の修飾作用」の研究は、研究所移転に伴い平成26年度新たにMinマウスを米国から輸入して自家繁殖して実験に供する予定であったが、理由が不明だったが、繁殖率が極めて低く、平成26年度中に同実験を行うことができなかった。しかし、その後Minマウスの繁殖率も上昇し、平成27年度はこの動物モデルを用いた実験が可能な状態になってきている。 また最近の論文報告を受けて、試験試料であるキダチアロエからの有効成分の分離精製方法も変える必要が出てきた。すなわち、キダチアロエ抽出物中の主成分であるアロインは市販品が購入可能であるので、アロインを除いたキダチアロエ有効成分の分画生成の必要が出てきた。そこで、過去のアロエ抽出物の精製報告を元にいくつかの処理方法を予備実験的に検討し、平成26年度中に概ね良好な抽出法が確立され、平成27年度はそのスケールアップした方法でキダチアロエ有効成分を収集して動物実験に供したい。
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Strategy for Future Research Activity |
(今後の推進方策) 2014年、HamizaらはDMH誘発ラット大腸前がん病変をアロインが抑制することを報告し、その抑制機序として、DMH投与によるCOX-2や誘導型NOS、IL-6、TNF-αの発現をアロインが抑制することを明らかにした。しかし、Hamizaらの報告は長期発がん試験ではないので、長期にアロインを与えて大腸腫瘍形成に対する影響がどうなるかは不明である。古いが、Siegersら(1993)はDMH誘発マウス大腸発がんモデルで、アロインは発がんを促進しないことを報告している。一方、申請者らは最近アロエベラゲル抽出物(AVGE)が高脂肪食負荷Minマウスの腸管ポリープ形成を抑制することを報告した(Chiharaら、2013&2014).高脂肪食負荷発がんモデルも炎症関連発がんモデルの一種であることが知られている。 そこで、平成27年度申請者らは、Minマウスを用いた腸管ポリープ形成実験を普通食と高脂肪食に分けて、キダチアロエ抽出物の修飾作用を検討したい。キダチアロエ抽出物においても上述のように アロインが主成分としてポリープ形成に及ぼすことが考えられるので、まずは試料としてキダチアロエ抽出物とアロイン(市販品入手可能;キダチアロエ抽出物のアロイン含量と同濃度)で実験を行い、これらでもしポリープ形成に及ぼす作用で相違があれば、次にキダチアロエ抽出物の成分分画を行ない、アロイン以外の例えばアロエシン誘導体などの分画精製を行ない、同様にMinマウスの腸管ポリープ形成抑制作用を調べる。これらは普通食下および高脂肪食下で行なう。また、以上の実験でMinマウスの腸管ポリープ形成の抑制効果(場合によっては促進効果)が見出されたら、Hamizaら(2014)および申請者ら(Chiharaら、2013&2014)の報告を参考にして、それらの抑制メカニズムを明らかにしたい。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、(1)研究所の平成25年度末移転に伴い、平成26年度当初も各研究室の整備があり、研究の着手が少し遅れたこと、(2)実験で主として用いるMinマウスは研究所移転に伴い米国から新規購入して自家繁殖に努めてきたが、平成26年度中繁殖率が低く、年度末でようやく実験に供する程度に繁殖があがったこと、(3)平成25年度中に実施した研究テーマ「アゾキシメタン(AOM)/デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘発マウス前がん病変(MDF)形成に対するアロエエモジン(AE)とエモジン(EM)の修飾作用」で、結果として抑制効果は見られず、むしろ大腸MDF数と大腸腫瘍数は増加傾向を示したことであった。これらの結果を踏まえて、平成26年度は関連する他者報告とで文献的考察を行ない、主たる動物実験は予備実験的なレベルのみで、その分キダチアロエ抽出物の分画精製の検討に時間をかけた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度申請者らは、Minマウスを用いた腸管ポリープ形成実験を普通食と高脂肪食に分けて、キダチアロエ抽出物の修飾作用を検討したい。キダチアロエ抽出物においても上述のように アロインが主成分としてポリープ形成に及ぼすことが考えられるので、まずは試料としてキダチアロエ抽出物とアロイン(市販品入手可能)で実験を行い、これらのポリープ形成に及ぼす影響を検討したい。またキダチアロエ抽出物の成分分画を行ない、アロイン以外で抗炎症作用のあるアロエシン誘導体の分画精製を行ない、同様にMinマウスの腸管ポリープ形成抑制作用を調べる。これらは普通食下および高脂肪食下で行なう。以上の実験でMinマウスの腸管ポリープ形成の抑制効果(場合によっては促進効果)が見出されたら、Hamizaら(2014)および申請者ら(Chiharaら、2014)の報告を参考にして、それらの抑制メカニズムを明らかにしたい。
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Research Products
(3 results)