2013 Fiscal Year Research-status Report
骨粗鬆症性骨折・再骨折の予防における脂溶性ビタミンの意義に関する研究
Project/Area Number |
25350157
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyoto Women's University |
Principal Investigator |
田中 清 京都女子大学, 家政学部, 教授 (90227132)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 骨粗鬆症 / 骨折 / ビタミン / 身長低下 |
Research Abstract |
まず骨粗鬆症による再骨折リスクの高い患者を見いだすための方策を検討した。高齢者に高頻度に見られる身長低下は単なる加齢現象ではなく、骨粗鬆症による椎体圧迫骨折はその最も重要な原因である。また椎体圧迫骨折は、大腿骨近位部骨折のような、より臨床的に重大な骨折のリスクを何倍にも高める。そこで若い時からの身長低下が、既に椎体圧迫骨折を持つ例を有効にスクリーニングできるのではないかと考えて検討を行った。胸腰椎X線写真にて椎体圧迫骨折の有無が判定できている例を対象に、身長低下を評価し、その結果をROC解析にて分析を行ったところ、身長低下は椎体圧迫骨折の予測に対して、感度・特異度とも優れた判定能を示し、そのカットオフ値として4cmが適切であるという結果が得られた。高齢者においては、若い時の身長を記憶していないこともあるが、そのような状況での代替指標として、身長/膝高比を考案した。身長低下者にあっても、膝高はほとんど変化しないことから、この比は椎体圧迫骨折の予測に対して有効な指標であった。 このようなスクリーニング手法に基づいて、再骨折リスクの高い患者を見いだすことと平行して、再骨折リスクに関係する栄養学的背景因子を検討するために、骨粗鬆症性骨折(大腿骨近位部骨折・橈骨遠位端骨折・臨床椎体圧迫骨折など)患者より採血を行い、血液中ビタミン濃度を測定することとした。骨に必須のビタミンとして最も重要なビタミンDに関しては最も良い指標である25(OH)D、ビタミンKについては肝臓・骨における欠乏のマーカーであるPIVKA-II・ucOC、また血液中ビタミンE濃度などが測定項目である。なおビタミンEについては、ビタミンE過剰は骨折リスクを高めるという動物実験データが最近発表されたためである。臨床血液試料の収集ができたので、現在これらの測定を行っているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記「研究実績の概要」に述べたように、本調査研究において、まず再骨折リスクの高いリスクを見いだす方法を検討し、身長低下及び身長/膝高比という、簡便な方法を確立することができた。各自治体においては、検診にかける予算が乏しいことから、骨粗鬆症検診が行われている例が少ない。そのような状況にあって、今回我々の確立した方法は、ほとんど費用がかからず、実地面での活用が期待できる。 次に骨粗鬆症性骨折(大腿骨近位部骨折・橈骨遠位端骨折・臨床椎体圧迫骨折など)受傷直後の患者より採血を行い、これまでに数十例のサンプルを収集することができた。これらの試料は、そのほとんどにおいて、4週間後の血液がペアで採取できており、また臨床的な背景因子に関するカルテ情報も集められている。 以上のような状況は、研究開始1年目としては、ほぼ想定された研究の進展状況であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初予定していた以外に、ごく最近骨粗鬆症検診を受けた患者血清を入手することができた。椎体圧迫骨折の有無がX線写真にて判定でき、骨密度測定も行えており、さらに食事調査もできているというサンプルである。これと上に述べた、骨粗鬆症性骨折直後に採血を行った血液試料について、ビタミンD栄養状態の最も良い指標である25(OH)D、ビタミンK欠乏のマーカーであるPIVKA-II・ucOC、血液中ビタミンE濃度などを測定する。 得られた結果に関して、統計ソフトSPSSを用いて、多変量解析を行い、骨折・再骨折の危険因子としての、これらビタミンの意義について検討を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
初年度においては、再骨折リスクの高い患者を見いだす方法の確立を行うとともに、ビタミン濃度などの分析を行うための血液試料の収集に力を注いだ。かなりの例数の貴重なサンプルを収集することができたが、初年度中には分析までは行うことができなかった。このため分析関連費用が次年度使用額となったものである。 血液中ビタミンおよび関連物質濃度の測定に要する費用、一般的試薬、文具類、関連資料(文献・書籍)、統計解析ソフトの費用、成果発表のための学会出張費用などに充当する予定である。
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