2013 Fiscal Year Research-status Report
児童・生徒を揺さぶり、学びをつなげるための教材開発とモデル授業の構築
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25350196
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
佐藤 節子 岐阜大学, 教育学部, 教授 (60196243)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 理科教材の開発 / 環境教育 / IT学習 / 授業実践による検討 / 大気浮遊物画像 / 雪状氷結晶成長画像 / 小中学校授業研究 / 学会・論文発表 |
Research Abstract |
人と環境、地球環境へつながる視点を育てるための大気浮遊物観測データを活用したウェブ教材に、雪状氷結晶成長過程の動画を加えて、ウェブ教材を再構築した。この教材について第5回アジア化学教育国際研究会で「Web-based teaching material connecting science and environment education in primary school and junior high school」と題して発表し、また化学教育電子ジャーナルに「Web-based teaching material connecting science and environmental education in primary school and junior high school, Part II. Microscopic demonstration of snow-like ice-crystal growing and reconstruction of website」として発表した。 現在の児童生徒は生活体験も乏しく、物も情報もあふれた生活の中で知識欲や好奇心を表出しにくくなっている。このような児童生徒を揺さぶり、実感を伴った理解に結び付けるために、見えない水蒸気から氷結晶が成長する姿の実画像を活用した授業や児童の自発的な学習やIT学習の可能性を検討した。この結果を「Web-based material for pupils to understand the existence of invisible matters」と題して上記国際学会で発表した。さらに中学校で、「自然と人間―人間と環境」に結び付くこのウェブ教材を活用した授業実践を行い、その結果を「大気浮遊物の理科授業への活用」と題して、日本理科教育学会第64回全国大会で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度に計画したミクロの雪状氷成長動画教材の改良は、これまで以上に枝分かれした雪状結晶を成長させることが難しく、進められなかった。しかし児童にとっては、実際に自分たちで結晶を成長させる経験が一層好奇心を呼び起こすと考えられ、小学校の45分授業で水蒸気から氷の樹枝状結晶を成長させるキットと実験手順の開発を試みて作成した。 水蒸気を肌で感じる実験教材は、実験手順を作り上げ、学校外の子ども科学教室においてその教材を用いた実験実施を試みた。児童の驚く様子を観察できたが、45分内で終えることができなかった。改良が必要であることが分かった。 動画教材の改良は十分ではなかったが、これまでに得た見えない水蒸気から氷結晶が成長する姿の動画等を活用した、児童を揺さぶり、実感を伴った理解を促す授業や児童の自発的な学習、IT学習の可能性を検討して、アジア化学教育国際研究会で発表した。 大気浮遊物画像の活用の検討と授業実践では、中学校で、これらの画像と現在までの雪状氷結晶画像を活用した授業実践を進めた。雲を作る実験も加えて、大気浮遊物が雲の凝結核の役目を担うことを認識させ、自然界の現象について興味関心を高めるとともに、PM2.5という現在の環境問題との関連にもつなげることができ、実感を伴った理解を促したという結果を得た。今後、花粉や宇宙塵などの大気浮遊物を導入した授業の実践と検証が必要である。また、学習内容を拡充したり、自然を総合的に捉えるためのモデル授業構築には、実践を重ねて検証しながら、効果的なウェブ教材の導入と教材の再検討が必要であることが明確になった。これらの教材を導入した授業実践とその結果を日本理科教育学会全国大会で発表した。データ整理と動向解析を十分行えず、予定の支出をかなり下回ったが、学会での発表も十分でき、おおむね順調に進んでいると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
結晶成長実験と大気浮遊物動向の解析・データ整理を進める。 小学校理科室で実際に水蒸気から氷の樹枝状結晶を25分で成長させる実験キットと実験手順を開発したので、この実験を取り入れ、ウェブ教材で公開した氷結晶の動画も活用した45分の授業実践を行う。水蒸気を肌で感じる実験教材の改良を進め、それを活用した授業実践を行う。これらを4年生単元「みずのすがたとゆくえ」に位置づけてモデル授業を構築する。理科室での実験で、自分の目で見て、肌で感じて、実感をもち、さらに雲の中での雪の成長と同様の氷成長の動画を通して、視点を地球大気へ広げ、児童を揺さぶり、実感を伴った理解に結びつける。 中学校において、花粉や宇宙塵、スス等の大気浮遊物を導入した授業の実践と検証を行い、自然を総合的にとらえるためのモデル授業の構築につなげる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究資料等の印刷の他に、観察した全大気浮遊物の電子顕微鏡画像とX線分析結果は、すべて印刷して紙面でも保存している。このためトナー等の購入を科研費で請求したが、科研費での研究以外への使用(2割程度)があったため、科研費を使えなかった。科研費でない公費で購入した印刷機を使用していて、科研費の研究のためにのみトナーを交換することは無理である。印刷機の消耗も考慮して、このような使用のトナー、コピー用紙等を科研費で請求できるようにしてほしい。 先に予定していなかった国際学会に発表する機会ができ、大気動向調査に向けた浮遊物のデータ解析より、発表に向けた研究のまとめと準備に多くの時間を割き、データ整理を予定した通りに進めることができなかった。またより枝分かれした雪状氷結晶の成長も予想のようには進まず、画像管理と大気浮遊物解析データ管理用のソフトウェアとハードディスクの購入も控えてしまった。 結晶成長実験と大気浮遊物のデータ解析と整理に、実験系の大学院生あるいは経験者を雇って重点的に進める。
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Research Products
(5 results)