2014 Fiscal Year Research-status Report
「化学基礎・化学」教科書の新記載・発展的内容の理解と指導を支援する教材の開発
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25350203
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
網本 貴一 広島大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (60294873)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古賀 信吉 広島大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (30240873)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 化学教育 / 実験教材 / 光化学 / 熱化学 / 有機化学 / 無機化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
「化学基礎・化学」における学習内容に基づきながら、科学的探究力と思考力の育成を意図した化学実験教材を開発することが本研究課題の目的である。前年度では新教科書で単元として登場した「化学反応と熱・光」を中心に教材開発を推進したが、本年度はこの単元にかかわらず広く「化学基礎・化学」新教科書における発展的内容の学習を支援する教材開発を積極的に推進した。本年度の主要な研究成果は以下の通りである。 (1)定性および定量実験の結果を踏まえて生徒自らがヒドロキシ酸4種をそれぞれ識別できる実験教材と学習活動を開発し、高等学校での授業実践を踏まえて実験教材の有用性を議論した。本成果は「科学教育研究」誌に論文として採録された。 (2)GSC(グリーン・サステイナブル・ケミストリー)とESD(社会の持続的発展のための教育)を架橋した化学学習プログラムとして、環境負荷の低い酸素や有機還元剤による芳香族化合物の酸化還元反応を素材とした教材実験を確立し、理科・科学教育の関連学会で公表した。 (3)人工甘味料であるアスパルテームをアミノ酸やペプチドの性質を学習する素材と捉え、金属錯体形成によってアスパルテームを定量する教材実験を新規に開発し、理科・科学教育の関連学会で公表した。 (4)教材として取り扱いやすい固体状態でよく光る有機色素を探索する過程で、一般に吸収色素としてふるまうカルコン類を過酸化水素処理するだけで発光性色素となることを新たに見いだし、その分子構造と発光特性を明らかにした。 (5)無機物質や有機高分子の熱化学挙動に関する基礎研究および無機物質・熱化学を素材とする化学実験教材の開発を、研究分担者(古賀)が精力的に推進した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度において、研究代表者(網本)は化学教材開発に関する著書(共著)1編、論文1報、学会発表6件を行うことができた。なお、本年度公表されたヒドロキシ酸の識別に関する論文は前年度に開発された化学教材の成果が結実したものである。本年度学会発表された成果が来年度以降論文として順次掲載されることを期待している。一方で、今年度の研究計画に挙げていた「化学反応と熱・光」の学習を支援する化学センサの教材利用について、本研究課題の支援によって装置等は措置できたものの、環境整備に手間取り、成果までには思ったように到達できなかった。この点については次年度の課題として継続することにしている。 「光・熱・エネルギー・物質」の関連性を元にして自然科学の広い領域に関わる教材・学習活動の開発に向けて、発光や吸収など光に関わる諸現象の教材素材となりうる有機化合物の基礎研究についても推進している。研究代表者(網本)は学会発表4件(うち招待講演1件)の成果公表を行った。特に、わずか1段階の物質変換で吸収色素が発光色素となる有機色素の発見は基礎理学的にも興味深く、色素の多彩な機能に触れる化学実験素材としての可能性を現在検討中である。 研究分担者(古賀)は、化学教材開発に関する著書(共著)1編、学会発表5件、無機物質の基礎研究については論文6報、学会発表18件(うち招待講演3件)の成果公表を行った。古賀は本年度熱測定学会の学会賞を受賞している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25-26年度の2年間で、「光化学・熱化学」および「有機化学・無機化学」に関する化学教材や学習活動例を相当数開発することができた。研究最終年度となる平成27年度は、これまでの成果を論文誌に掲載することに注力する。また、「光・熱・エネルギー・物質」の相関性を取り扱う教材実験・学習活動の開発に向け、光・熱感応性化合物の性質検討も進める。さらに、これまで継続的に検討してきたものの、センサ開発など検討すべき点が今なお残されているために開発中途となっているいくつかの教材研究について、それら問題点を解決して関連学会における成果公表にこぎつけたい。具体的には以下の(1)-(3)の事項について、研究を推進する。 (1)これまでに開発してきた化学教材・学習活動の成果を理科・科学教育の論文誌に掲載する。 (2)光・熱感応性化合物の構造・物性に関する基礎研究を進め、その成果を光・熱とエネルギー変換に関する教材および学習活動開発に適用する。 (3)化学現象や生体関連物質の挙動を捉えるツールとしての化学センサを有効活用する学習活動の開発を進める。
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Causes of Carryover |
年度末において、成果公表に関する旅費ならびに研究分担者の支出額を精算した結果、45円の余剰を生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度交付分と合わせ、物品費および旅費の一部として使用する予定である。
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Research Products
(20 results)