2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25350215
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Research Institution | Kurume Institute of Technology |
Principal Investigator |
巨海 玄道 久留米工業大学, 工学部, 教授 (00111146)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 物理学 / 基礎教育 / 物理学実験 / 個人指導 / 国際交流 / 情報交換 / アクテイブラーニング / 総合教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで本研究では本学学生の物理・数学における基礎学力の調査を行ってきた。この調査は比較のため入試偏差値の異なるいくつかの大学でも行いその大学で行われている物理学基礎教育のカリキュラムなどを総合的に比較検討し、本学における現状と問題点を探りだし,本学における新しい物理基礎教育体制の確立に向けてその指針を得ることを目的としている。結果としては本学の学生の基礎学力は国立大学を別にしても他のいわゆる私立ブランド大学の文系の学生にも及ばない学生が大半を占めていることがわかった。このような中でいかにして工学部の基礎教育である物理学教育をなすべきか。しかし本学も基礎学力支援のためその体制を整えつつあったがたとえどのような体制を作っても肝心の学生が動かなければ徒労に終わる。全学的な補修や週1時間という講義では限界があることは確実であった。そのような状態を打破するため物理学の他の教員に協力を求め「物理駆け込み寺」を創成した。これは本学で行っているラーニングコモンズの一環として導入した。要するに空き時間に学生を呼び出し個別指導するというものであった。但し本学の学生は学ぶ意欲に劣っており、黙っていたら呼び出しても来ることはない。このような事情を鑑み、小テストなどをやり、成績不振の学生を割出、その学生を呼び出して指導するという「指名方法」をとった。このようにしないと学生は教官室やラーニングコモンズの部屋には来なかった。そのようなシステムにしても来る学生は6割程度であり、この指導方法の限界が見えた。しかし個別指導ではいろいろな相乗効果があり。少なくともそれまでの本学の学習支援センターでは予想もできなかった多くの学生が駆け込み寺で指導を受けることとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
物理学基礎教育はその大学に在籍する学生の目線に合わせることが肝要である。このためには教える側に教員の資質も当然ながら問われることになる。申請者は他大学の教員と連携し、情報交換をすることにより、広くこのような資質を持つ教員の採用・養成も行ってきた。多くの学会に参加し、他大学の情報も勘案しながら、本科研費の援助を受けて「物理駆け込み寺」の創設に踏み切った。このシステムは極言すれば単なる個別指導であるがその内容は広く本学の学生が抱えている問題(学習方法の問題、生活の問題、また自尊感情の養成など多岐にわたる)の解決も念頭に入れた。特に本学の学生は初等・中等教育の家庭において見捨てられてきた学生が多いのでそのことは十分考慮することとした。駆け込み寺のやり方はこれまでの本学の基礎教育支援センターやラーニングコモンズの課程おいて最大の欠陥とされていた学生が来ないという点を避ける形で講義中に来る学生を指名するとい形で行った。このやり方でなんとか学生は教官室などへ来るようになったが問題はこれまで長い思考に慣れていないため集中して1時間もやると切れてしまいそれ以後はなんらの施行もしない学生も多かった。しかし中にはリピーターや友達に誘われて来る学生もいて思いもかけなかった波及効果があることが分かった。さらに当方の熱意が伝わったのかクラスを開設している間は熱心に耳を傾け、さらに家で学習している学生も増えた。いずれにせよ一番重要なことは学生と教員の信頼関係であることが判明した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の方針としてはこれまでの駆け込み寺のシステムをさらに充実させることである。このためには具体的な結果の検証を行わなければならない。昨年はクラスの中で最低レベルの学生の成績向上を心がけたが成績がもともと上の学生に対する配慮はなかった。今年度はこの方面の指導の充実も念頭に置いて本計画を充実させたい。またこのシステムは教員個人の労働時間を縛るもので担当者は時間の確保に苦慮するものであった。だがさしあたってこのことに関する妙案はなく、本プロジェクトの間は教員は少し時間の配置や生活設計になお一層の工夫が要求されることになるのは責任者として心苦しいものがある。しかし少なくとも今年度は昨年同様本システムを活用し基礎学力の養成と成績向上にまい進したい。今年の新たな目標として現在わが国の進学率は50%を超えているがこれは国際的にみると決して高いものではない。隣の韓国などすでに70%を超えており、オーストラリア等さらに90%を超える。このため進学率が50%より低い、あるいは高い国の物理基礎教育体制はどうなっており、どのような運営がされているのか知ることが重要となる。26年度はこのことにかんがみ進学率が25%と言われているベトナムハノイ大学の副学長N.H.Duc氏に来ていただき研究会をするとともに学生の進路などについて情報交換を行った。発展途上国の掲げる高い理想と前向きな姿勢には感動すら覚えたがそれに比べてどちらかというとやや停滞気味で隘路に陥ったような我が国の基礎教育体制に大きな危惧を感じた。従って今年度の大きな目標として物理基礎教育についての国際的視点に立ちその体制について情報を集めたい。そこから新しい物理教育の展開を図っていきたいと考える。
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Research Products
(12 results)