2013 Fiscal Year Research-status Report
被災地の放射線教育と地域教育資源活用システムの構築に関する基礎的研究
Project/Area Number |
25350231
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
岡田 努 福島大学, 総合教育研究センター, 准教授 (50431648)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 放射線 / 地域 / 教育資源 |
Research Abstract |
本研究の目的は放射能汚染地域という特殊な状況下で暮らす福島県民の視点で放射線教育プログラム作成のためのシステムの構築である。特に放射能汚染という不安を抱えた学校現場での屋外活動の制約や動植物の観察・実験の敬遠といった問題の解決と県内の行政諸機関、大学、企業等が今まさに取り組む「放射能汚染対策」という被災地特有の身近な教育資源を小中高校の教育現場で活用可能な教材として取り込み、関連機関と協力して教育プログラムを作成できる連携システムの構築も目的とする。そのために(1)「理論的な枠組みの検討」は本研究の基盤となる重要な調査であるが,当初の計画通り,福島県内と県外の小中学校・高等学校ならびに社会教育施設(科学博物館・科学館等)・その他における「放射線教育」の実践事例を調査し、その特徴について考察した。(2)学校現場における既存の放射線教育プログラム・関連教材の特徴や実践事例の調査については,協力校における校内研修,研究授業の実施と事前事後の研修などに自ら指導助言者やゲストティーチャーとして積極的に関わった。小学校では理科や放射線関連分野を得意としない教員が多いが,彼らと調査研究を通じて交流を深め,所在する市の指導資料の作成指導に関わり,また複数教員による校内研修の継続・発展にも協力した。(3)福島県は原発事故による様々な放射能汚染対策に取り組んでいるが,これらの取り組み自体を放射線教育のプログラムとして抽出し,学校現場で学年や発達段階に応じて実践することに着手できた。具体的には除染の方法,水産農産物等の放射能濃度モニタリング,店舗での販売にあたっての広報,学校給食での取り組みなど,多様である。これらのひとつ一つが被災地における放射線教育の特徴といえる。 今年度は上述の調査内容について関連学会等で報告し,論文等の執筆も行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は放射線教育に携わる県教育庁,市町村教委等の教育行政諸機関や放射線教育を実践している小中学校,高等学校の協力者をえられたことが大きな成果である。そこでは研究の協力だけでなく自らも授業の指導助言者として協力関係が構築できたことも順調な進展といえる。 また教育行政との協力関係の構築のみならず,協力校へは自ら何度も出向き,研究授業ではゲストティーチャーを務め,またそのための事前事後指導にも何度参加して,良好な協力関係を築くことができたことも理由にあげられよう。 さらに福島県内で放射能汚染対策に取り組む行政諸機関・研究機関,企業,社会教育施設等において,学校の放射線教育の教材として活用できる事例も数多く発掘したため今後の研究の展開が期待されることなども理由の一つに挙げられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度の成果を踏まえ以下の5点に留意し研究を推進していく。 (1)平成25年度の調査の継続:特に復興支援活動や除染活動に取り組む施設等の調査は継続する。それにより放射線教育に関して教材化が可能なコンテンツの増加を目指す。(2)教材や教育プログラム活用のための協力学校の開拓:本研究の成果が学校現場で十分に活用可能なものとなるように現場での試行を重視する。そのため協力校や協力教員を選定する。(本学附属学校ならびにすでに連携協力の実績のある小中学校,SSH指定校や科学部等を有する周辺の高校など。)(3)多様な教育プログラムの開発と共有化:本研究には下記に示すように県内の多様な施設の協力が必要とされるため,同じ放射線教育といえども県外のそれとは異なるアプローチが想定される。そこでこれまで全国各地で実施されてきた放射線教育の授業や教材との特徴の対比し,それらの特徴を整理する。その際に,多様な協力施設の開拓と,無関心層・関心層・探求層に対応するための放射線教育プログラムの構築を目指し,研究協力施設が利活用可能な「放射線教育プログラムデータベース」を試験的に活用して,協力者自身が同システムを活用することでプログラムの共有化が図れるようにする。(4)科学史技術史の視点での放射線教育の再構成:従来の単なる発明発見史的(年表の羅列・単位名)な科学史に当該時代の産業や技術との関連という視点を加え,学校教育において関連する単元や分野,理科以外の教科との関連など総合的な視点を持った教育プログラムの再編成を目指す。(5)「放射線教育」がつなぐ学校と周辺施設とのネットワークの構築:本研究を通じて,新学習指導要領が強調するところの「地域の教育資源活用」に向けて,学校周辺の諸施設とその取り組みによって強力なネットワークを構築し,今後の放射線教育の在り方について,学会や論文等で全国に発信する。
|