2014 Fiscal Year Research-status Report
ホロカソードランプを用いた新しい仕事関数測定法の開発とその物理実験教材への応用
Project/Area Number |
25350235
|
Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
大向 隆三 埼玉大学, 教育学部, 准教授 (40359089)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
近藤 一史 埼玉大学, 教育学部, 教授 (40178421)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 光電効果 / 仕事関数 / ホロカソードランプ / セシウム |
Outline of Annual Research Achievements |
ホロカソードランプを用いた仕事関数測定において、セシウムの仕事関数を求める実験に着手した。光学系を改善して効率的にハロゲンランプ光がセシウム陰極へ照射されるように配置し直し、バンドパスフィルターで単色化した光を使って光電効果信号の検出を試みた。入射光波長を590nmから700nmまで10nmごとに変化させ、光電効果信号強度を測定した。その結果、入射光波長590nmから610nmにかけて信号強度は急激に減少し、特に610nmで完全に信号が消失した。そのあと620nmから信号強度が回復し、630nmで最大になったあと、640nm以降で再び信号強度は減少するという変化が見られた。 このような複雑な変化の様子を示す原因を、ホロカソードランプ中に封じられたネオンガスによる光吸収と推測し、ネオンガスの封入されていないランプを使って同様の実験を実施したところ、入射光波長590nmから660nmまで単調に光電効果信号が減少するというデータが得られた。 2つの実験結果を比較すると、波長590nm~610nmの領域で顕著な差がみられ、この差がネオンによる入射光吸収の影響と断定することができた。次に光電効果信号強度の入射光波長依存性について考察し、両者の関係を定量的に解析するための式を求めた。その式を実験データにフィッティングし、得られた2つの係数の値から陰極セシウムの限界波長を計算した。その結果、674nmという値が得られた。セシウムの限界波長値として640nmという値が報告されており、その値と比べ得ると今回得られた値は34nmだけ大きい。この差を生じた原因として印加された電場、および陰極中に含まれる不純物の影響が考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H26年度において、入射光の単色化、それを用いたホロカソードランプによる光電効果信号検出、セシウム限界波長値の測定まで実験を進めることができた。いままでに報告されたセシウムの限界波長との比較や、それらの間で差が生じた原因も検討できた。 ただし、H25年度に購入予定であった物品が性能変更されたことに伴い、代替品をH26年度に購入して研究に着手しているため、研究の進捗は本来(当該研究計画申請時)よりも少し遅れている。
|
Strategy for Future Research Activity |
放電プラズマのインピーダンス変化を利用した金属の仕事関数測定法を確立する意味から、ホロカソードランプに封入されたネオンの影響を受けない光電効果信号の検出を試みる。具体的には640nm近辺の波長可変単一周波数レーザー光により、ネオンの吸収波長を避けて光電効果信号を検出することを試みる。そのために、ネオンの吸収波長の正確な把握と、照射すべき波長の特定をまず行い、H26年度と同様の実験を波長可変レーザーにて実施し、限界波長値を求める予定である。
|
Causes of Carryover |
初年度に購入予定であった光源装置の性能変更があり、その購入を2年目のH26年度に持ち越した。それに伴い、光学機器や計測機器の購入がずれ込み、当初購入予定であった機器を購入して使用する段階にまで研究が進展しなかった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
性能変更された機器の代替品をH26年度に購入完了し、引き続き装置類を購入して研究を進めた結果、研究の遅れの大半を取り戻すことができた。次年度には、当初H26年度中に購入するはずであった安定化電源、高感度CCDカメラ、それらの使用に必要な光学機器や電子回路製品などを購入し、本来のH27年度購入予定物品とあわせて執行する予定である。
|
Research Products
(2 results)