2014 Fiscal Year Research-status Report
疑似科学的思考における認知バイアスの影響と批判的思考教育の研究
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25350243
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
菊池 聡 信州大学, 学術研究院人文科学系, 教授 (30262679)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 批判的思考 / 疑似科学 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に行った中高生316名への調査データをもとに、疑似科学信奉を中心に、批判的思考能力や態度、科学への態度、自己認知のバイアスといった諸変数間の関連性を多面的に分析した。その結果、疑似科学信奉との関連性が予測された批判的思考能力や態度などの諸変数の間には、必ずしも強い関連性は認められなかったが、中高生を対象に新規に用いた批判的思考(論理的思考)能力テストには一定の外的妥当性が認められた。この結果を後続の調査データの分析に応用するとともに、その一部を、平成26年11月に行われた日本教育心理学会第56回大会にて発表し議論を行った。これらに加えて、引き続き高校生451名を対象に実施した同様の調査データ、および26年7月に学校教員114名を対象に行った調査データとあわせて総合的に再分析し、最終年度に公表する予定である。 大学教育における批判的思考教育の状況について、日本心理学会の調査データを利用して独自の分析を行った。その結果、心理学教育の目標となる批判的思考スキルは、心理学に基礎を置くものと従来の論理性を重視する方向性があり、互いに関連性は低いことが示された。この結果を26年9月の日本心理学会第78回大会シンポジウムにて報告した。 疑似科学と批判的思考に関する従来の知見にこれらの諸調査結果を加味し、疑似科学的思考の特徴を心理学的な視点から総説にまとめ、批判的思考の概説書『ワードマップ批判的思考』に発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究計画では、第一段階として大規模な質問紙調査のデータを得て、超常信念や疑似科学的態度、批判的思考、自己認知バイアスといった多岐にわたる関連変数の相互の影響を評価することを目指した。この計画をもとに、幅広い年齢層を対象とした質問紙調査は、ほぼ予定通り中学生から社会人まで、多様な集団で昨年度に引き続き実施することかできた。その点で、おおむね順調に推移している。ただ、これらの調査データの解析にもとづく諸変数の関連性や発達的変化の分析は、一部の観点から完了して学会での報告を行っているものの、最終年度にさらに調査データが追加されるのを待って、総合的に分析し報告することとした。 また、26年度の予定として潜在的態度を実験的手法を用いた測定により、質問紙法の欠点を補完する知見を得る予定であったが予備実験の段階にとどまり、当初の目的を達成していない点で、十分に予定が達成されていないものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度までに質問紙調査を性質の異なる複数の母集団に実施できただけでなく、次年度にも当初予定以上の高校等の協力を得て、発達段階に対応した青少年のデータの収集できる見通しを得た。最終年度には、これらを対象に総合的な調査を行うとともに、蓄積したすべてのデータの多面的な分析を十分に行うことで、中高生の科学への態度が科学と疑似科学へと分化する要因について知見を得られると考える。また現在、進行状況が不十分な実験的手法を用いた潜在的態度の測定も、質問紙法で得られた知見を補完する観点から実施することとした。これらの諸研究結果をまとめてH27年8月の日本心理学会心理学第17回大会で報告するとともに、学術雑誌に投稿できる論文にまとめることを目標とする。
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Causes of Carryover |
主として、質問紙調査の実施に調査対象校等の組織的協力が予想以上に得られたことと、データの入力整理に関する効率化により、調査にかかわる諸費用が圧縮できたこと、および実験的手法の実施が停滞したことによる被験者への謝金等の執行が圧縮されたことにより、次年度使用額が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今後の計画計画の推進方策に示したとおり、次年度には予定以上の高校等の協力が得られる見通しであり、拡大調査を実施して十分なデータを確保して最終的な成果のとりまとめを行う。この拡大調査と実験の実施にかかわる諸経費や謝金、データ分析にかかわる費用等にH27年請求額とあわせて未使用額を充当させる予定である。
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