2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25350244
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
小南 陽亮 静岡大学, 教育学部, 教授 (30221980)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤本 潔 南山大学, 総合政策学部, 教授 (50329752)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 生物多様性 / 里山 / 環境教育 / 理科教育 / 教材 / 第2の危機 / 生態系サービス / 二次林 |
Research Abstract |
初年度である当該年度では、生物多様性教育の教材として里山がどのように利用できるかを検討するための調査地として、静岡市内に3つの調査区、愛知県西部に2つの調査区を設定した。各調査区において、中学校・高等学校の生徒が測定可能な方法を想定して、調査区内に生育する樹高1.3m以上の樹木の種名、胸高直径、樹高、ナラ枯れ発生の有無などを記録するセンサスを開始した。また、哺乳類と鳥類の群集の変化を把握するために、カメラトラップ法による調査も開始した。さらに、調査区を設けた地域周辺の航空写真・衛生画像を入手し、教材となる里山二次林の広域的な把握にも着手した。当該年度の結果から、里山二次林を対象とした簡易な樹木センサスによって得られるデータでも、種の多様性や調節的サービスについて具体的に学習できる可能性を示した。特に、群集構造に関する基本的な解析方法のほとんどは、学校教育でも指導可能であると見込まれた。そのための調査面積については、20m×20mまたは30m×30m程度の面積を扱うのが、学校教育における作業量や結果の確かさの点で現実的であることがわかった。また、「生物多様性はなぜ劣化しているのか」を学習する方法を検討した結果、樹木のサイズ分布にみられる傾向を読みとることで、里山二次林において未利用放棄後はそれまでの主要樹種が衰退する一方で、今後の自然植生への推移は不確実であると推定でき、里山において第2の危機が進行していることを1回のセンサスデータからでも探究できることが示唆された。これらの成果から、定量的な分析結果に加えて、関連する定性的な情報をできるだけ組み合わせて結論を導く指導計画のモデルケースを提示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
自然に対する働きかけの縮小による里山二次林の変化とその生態系サービスへの影響について、学習可能な内容を検討できる基礎データの収集を研究実施計画のとおりに順調に開始した。また、現時点までのデータを解析し、里山二次林の群集構造の変化、二酸化炭素蓄積量の推移、第2の危機の進行について学習する方法と内容を、2報の原著論文にとりまとめることができた。これらの成果は、本課題の最終成果物である学習モデルの中核を構成するものとなった。以上のことから、本課題は、当初の研究実施計画どおりに順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
現時点では研究を遂行する上で問題となる事柄は発生しておらず、今後も当初の研究実施計画に従って研究を推進する。平成26年度は、初年度に開始した野外調査を継続するとともに、里山二次林の群集構造の変化について学習可能な内容をさらに解析をすすめる。また、里山二次林の供給サービスについて学習できる内容の解析にも着手する。平成27年度以降についても、当初の研究実施計画を変更する必要はない。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究分担者が平成25年度に購入予定であった衛星画像と空中写真については、平成25年度に見積もった予算内では愛知県西部の対象地域において解析に適した画像・写真を購入することができなかったため、繰り越して平成26年度の予算と合わせることで、適した画像・写真を購入することにした。また、研究代表者が平成25年度の使用予定であった旅費については、調査地の現地にある大学に所属し、旅費の必要が生じない学生の補助が当初の想定以上に得られたため、データ取得に要した日数は当初予定よりも少なくなった。その分、旅費として使用する予定であった金額に剰余が生じ、平成26年度に繰り越した。 研究分担者が平成25年度から繰り越した助成金については、平成26年度分と合わせて、研究目的に適した画像・写真の購入に使用する。研究代表者が繰り越した助成金については、旅費の必要が生じない学生補助が十分に得られなかった場合に備えるとともに、成果の学会発表にも使用する。
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Research Products
(2 results)