2015 Fiscal Year Annual Research Report
ナミアゲハの植物への適応の生態学的研究とその成果に基づく探究教材開発および実践
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25350247
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Research Institution | Kyoto University of Education |
Principal Investigator |
今井 健介 京都教育大学, 教育学部, 准教授 (80447888)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村上 忠幸 京都教育大学, 教育学部, 教授 (20314297)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 進化生態学 / 生物教育 / 植食者 / 進化 / 適応 / 前適応 |
Outline of Annual Research Achievements |
ナミアゲハが通常利用しているカンキツ類に対して持つ適応を、適応が不十分であると予測されるヘンルーダを比較対象として調査した。昨年度までは葉が一枚はいる程度の小型容器における行動や成長の観察調査を行ったが、本年度はヘンルーダの鉢植えを用いて、植物体上の立体空間の利用様式について観察、調査した。 昨年度までの容器内飼育や学校授業での実践が行われている鉢植え上での複数個体飼育では、枝や葉の切り落としが見られた。これは切断部より先に摂食可能な部位が残っているにも、生じる現象であり、ナミアゲハがヘンルーダに対する非適応を示したものである可能性があった。すなわち、柑橘類に比較してヘンルーダの葉や茎は柔弱で、幼虫たちが誤って切り落としている可能性があった。 本年はこの仮説を確かめるべく、20株のヘンルーダ上にそれぞれ2個体のナミアゲハ弱齢幼虫を供試し、その成長と、葉や茎の切り落としを観察した。しかしながら、鉢植え上では、葉や茎の切り落としはそれほど頻繁に見られず、幼虫も正常に成長した。このことから、ナミアゲハは一鉢上に多くの個体が飼育される過密状態や、葉や茎以外にも足場がある飼育容器の中では切り落としを行うものの、実際の植物の上ではよりうまく行動し、無駄なくエサを利用していることが判明した。 ヘンルーダ上の幼虫は、摂食行動中以外は決まった場所に静止していた。静止場所を決める際にその周囲に糸を張り巡らせており、これは柔弱で不安定な足場であるヘンルーダにもうまく適応出来ていることを示していた。これは、幼虫がカンキツの柔弱な若葉を利用する際の適応である可能性、その適応がヘンルーダ利用の前適応となっている可能性を示唆している。
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Remarks |
具体的成果については、論文発表の後掲載
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Research Products
(1 results)