2014 Fiscal Year Research-status Report
防災意志決定訓練のための臨場感提示環境とコンセプトマップによるシナリオ作成支援
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25350261
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Research Institution | The Open University of Japan |
Principal Investigator |
近藤 喜美夫 放送大学, 教養学部, 教授 (40249925)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
武藤 憲司 芝浦工業大学, 工学部, 准教授 (30259832)
浅井 紀久夫 放送大学, 教養学部, 准教授 (90290874)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 臨場感 / 仮想空間 / 可視化 / 遠隔画像伝送 / サムネイル画像 |
Outline of Annual Research Achievements |
大規模災害のような厳しい条件下では、災害状況の把握、退避救助活動での意思決定が難しい。本研究では、1) 災害状況を具体的にイメージできるようにするため、臨場感を伴った可視化を行う立体視提示環境を構築する。また、このような状況での地上の通信回線の破綻を想定し、2) 衛星回線による効率的な画像伝送支援システムを検討する。 臨場感を伴う可視化を行う立体視提示環境として、没入型投影ディスプレイによる立体視映像提示システムを構築してきた。大型ディスプレイは、見かけ上同じ大きさの映像でも、作業効率を改善したり、立体視映像が3次元空間における形状の認識性を改善したりすることが指摘されている。しかし、没入環境では、臨場感を送出するのに、大型ディスプレイが有効なのか、立体視が有効なのかが明らかになっているわけではない。そこで、本年度は、没入型投影ディスプレイを使って立体視映像と立体視でない映像を提示し、どちらが臨場感を創出するか、比較実験を行った。その結果、ディスプレイがある程度広い視野を覆う状況であれば、両者とも臨場感を伴っていることが示され、必ずしも立体視しなくても良いことが示唆された。 大規模な災害が発生した場合、救助や救援活動には被災地の状況を外部に正確に伝える必要がある。情報伝達に画像や動画を利用することで、状況の把握が容易となる。地上回線が損傷して、不通となる可能性があるため、代替手段として衛星回線が有効である。しかし、衛星回線は地上回線に比べて通信速度が遅いため、データ量の少ないサムネイル画像を使って迅速に伝送し、その中から所望の画像を選択し、高解像度画像を伝送する仕組みを提案した。サムネイル画像はデータ量が少ない方が良いことから、低解像度で伝送されるが、その分視認性は低下する。評価実験により、サムネイル画像サイズがある程度より小さいとき、画像検出時間が長くなることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
臨場感を伴った立体視提示環境を構築し、効率的な画像伝送支援システムを整備するという目的に対し、システムの改良、コンテンツの構築、評価を計画していた。 システムの改良については、没入型投影ディスプレイにおいて、立体視映像を提示するためのプロジェクタ映像を効率的に校正するシステムを構築した。左目及び右目の映像の提示位置をそれぞれ、簡便に調整することができる。 また、視覚的臨場感に加えて、音像定位の仕組みを没入型投影ディスプレイに実装した。投影スクリーンを考慮した音響制御は実現できていないが、1つの音源であれば、音圧レベルによる音像定位が可能である。コンテンツの構築については、大規模な災害が発生する状況は再現できていないが、海岸近くの干潟の3次元空間を構築しており、経時変化を部分的に実装している。当初、コンテンツを容易に構築する仕組みを検討する計画にしていたが、3次元空間を構築するシステムをGUIベースで提供するには手間がかかりすぎるため、テキストベースながら、シーングラフを容易に構築する仕組みとした。 評価については、まず、計画通り、視覚的臨場感について、干潟コンテンツを提示した上で、その3次元空間を動き回ったり、3次元空間中の情報を表示したりする作業を実施し、利用性や臨場性を評価した。次に、災害発生時の活動の支援に対して、衛星通信による遠隔画像伝送システムの構築に向け、サムネイル画像のサイズと視認性との関係を明らかにした。上記のように研究が進んでおり、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度と同様、システムの改良、コンテンツの構築、評価について研究を推進する計画である。災害環境の構築や防災における意思決定の検討には至っていないが、今後は音響を含めた提示環境の臨場性向上、コンテンツの構築及び評価、画像伝送支援の検討に重点を置いていく予定である。 システムの改良については、これまで構築してきた没入型投影ディスプレイの視覚的・聴覚的臨場性を改善するための技術的要素を組み込む。視覚的要素として、水面の様子を細やかに表現する機能や、多数の物体を違和感なく、かつ実時間で表示するための機能を実装する。物体を配置するとき、その範囲を指定できるようにしたり、重なりが生じないようにしたりできるようにする。聴覚的要素として、音響環境を制御する機能を検討する。 コンテンツの構築については、3次元空間を動き回るだけではなく、視点からの距離に基づいてイベントを発生する仕組みを利用し、3次元空間中に配置されたものについての視覚情報を提示する。また、音を発するものについては、同様のイベント機能を利用し、3次元空間中に配置されたものについての音を提示する。そのための音収集が必要である。 評価については、システムの評価を中心に行う。視覚的及び聴覚的臨場性についてコンテンツを提示した上で、実際に利用してもらって主観的評価を得る。視覚的臨場性については、特にディスプレイの視野角の臨場性への影響を調べる。聴覚的臨場性については、距離に基づく音圧レベルの制御の臨場性への影響を調べる。また、災害時の活動の支援については、衛星通信による画像伝送支援システムの構築に向け、高精細画像の圧縮、サムネイル画像の伝送、その提示環境や伝送遅延、視距離の影響などの検討を行う予定である。
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Causes of Carryover |
計画していたシステム改良において、音響環境を制御するハードウェアの問題で、当初の計画を変更して、制御機能を設計していたが、実現できる機能に制約が多いことがわかった。単純な機能のみを実装したため、次年度使用額が生じた。また、評価実験を大規模に実施する計画であったが、実験参加者を思うように集められず、規模を縮小せざるを得なかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今後は、システム改良を縮小し、コンテンツの構築やその評価を重点的に実施する計画である。未使用額については、音響環境を制御する機能の実装を含め、コンテンツの改良、評価実験に当て、滞りなく執行する予定である。
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