2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25350271
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
中村 隆宏 関西大学, 社会安全学部, 教授 (60358439)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 安全教育 / 危険体感 / 危険感受性 / 危険敢行性 |
Research Abstract |
危険事象を擬似的に体験することで事故・災害の防止につなげようとする「危険体験型教育」は、危険感受性の向上を図る教育手法として普及してきた。しかし、客観的評価に基づく教育の手順や規準、手続き等は未だに確立されておらず、その教育効果も十分に把握されていない。 本研究では、研究計画の1年目において、危険体験型教育の開発の経緯、及びこれまでの変遷、現状の実態について改めて把握するため、教育実施機関等を対象としたヒアリング調査を実施した。調査対象は、体験型教育を実施する4施設であった。組織内若年者の危険感受性低下が懸念されたことを契機として教育手法の開発に着手し、やがて外部へも対象を広げた施設がある一方、既存の教育手法を参考にしつつ自らの組織の実態に合致するようアレンジを行ったケースもある。このように、開発および展開の経緯については、従来の知見を改めて確認することが出来た。教育効果については、定量的評価が困難という課題を抱える一方で、受講後のアンケート等から意識変化をとらえることで一定の評価を行っていた。繰り返し受講する場合には、説明方法の工夫、導入部分の変更、事例の変更等で、マンネリ化の防止に努めている実態が伺える。 また、本研究においては、自動車の運転を対象とした危険体験型教育の受講経験がある大学生を対象に、教育時の知識の定着度、およびかつて教育を受けた経験が現在の安全行動に及ぼす影響等について、質問紙による調査を実施した。受講時に普通自動車運転免許を取得していた群(A群)、受講後に免許を取得した群(B群)、受講時・調査実施時ともに免許を取得していない群(C群)の間で比較を行った。知識の定着度については大きな差が認められなかった一方で、受講後には一定の意識変化が生じていたことが伺える結果となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画通り、複数の教育実施機関等を対象としたヒアリング調査を実施し、それぞれの教育機関が危険体験型教育に取り組む契機やその後の展開、および現状の課題等について情報収集を行っている。また、教育効果の検討については、過去に、自動車の運転場面を対象とした体験型教育を受講した経験がある大学生を対象に質問紙による調査を行い、教育時に獲得したはずの知識が現時点でどの程度定着しているか、および教育時の経験等が現在の安全行動にどのような影響を及ぼしているか等について調査を行っている。 これらの結果は、研究計画において想定した内容を概ね満たすものであり、今後の研究を推進する上で有用である。 なお、教育手法・内容等については、今後も様々な変遷が予想されるため、研究計画の最終年度に至るまで、予備的な調査を継続する。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの調査結果を踏まえ、教育実施者(インストラクター等)のスキル向上、擬似的な体験を踏まえた教育的ポイントの整理および体系化、効果的提示方法、指導・教育上の重点事項等について検討する。検討にあたっては、一般社団法人全国登録教習機関協会が展開する「危険再認識教育」の実施教習機関をはじめ、民間の教育実施機関、体験型教育を採り入れた新たな展開を模索している民間企業の安全教育部門等と協力し、相互の情報提供と意見交換を重ねながら、危険体験型教育の諸課題とその解決策について検討する。また、検討結果については、前述の教育実施機関へフィードバックするとともに、既存の教育プログラムに対する提言として整理する。 加えて、擬似的な危険体験が行為者の技能向上、特に緊急時やトラブル発生時の対応能力の向上に及ぼす影響にも着目し、航空機の操縦等を対象とする模擬運転装置を利用した教育・訓練についても検討に含める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
調査対象となった事業場等が比較的近隣に存在したことから、ヒアリング調査の交通費等を当初予定通りに執行するに至らなかった。また、研究計画の初年度であったことからデータ量がそれほど大きくはなく、調査実施補助者やデータ分析要員が不要であったため、雇用に要する人件費等を当初予定どおりに執行するには至らなかった。 研究計画2年目においては、より詳細なヒアリング調査、面接調査等のほか、危険体験型教育の実施機関との間での教育手法の検討等を計画している。調査実施に当たる補助者・データ分析要員が必要となるため、これらの人件費として使用する予定である。 また、模擬運転装置による擬似的な危険体験の影響を検討するため、模擬運転装置の使用料(レンタル料)として使用する予定である。
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