2013 Fiscal Year Research-status Report
博物館における「土地の履歴を読み解く防災教育」の実践
Project/Area Number |
25350277
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Natural History Museum and Institute, Chiba |
Principal Investigator |
八木 令子 千葉県立中央博物館, その他部局等, 研究員 (00250134)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 自然災害 / 防災教育 / 博物館 / 千葉県 / 地形区分 / 景観 / 地震性隆起海岸 / 屏風ヶ浦 |
Research Abstract |
阪神淡路大震災や東日本大震災の発生を契機に、近年自然災害やその原因となる地学現象への関心が高まり、これらの知識や理解を深めること、とりわけ身近な地域の地形やその成り立ちを読み解くことが、学校や自治体を単位とした地域防災力につながることが認識されるようになった。本研究では、博物館という社会教育の場において、地域の特性を踏まえた防災のあり方を検討するため、千葉県内の地形やその成り立ちの類型化を行い、それぞれに対応した災害の起こり方(の差異)をモデル化することを目的に、平成25年度は以下の内容を実施した。 (1)千葉県の地形やその成り立ちの類型化を行うため、地形分類図や土地条件図、地質図などを基に、県内を9つの地形区(①東京湾岸の台地と開析谷②下総台地と谷津③東京湾岸の埋立地④三角州平野⑤九十九里浜低地⑥利根川低地⑦山地丘陵地⑧海岸(砂浜・岩石)⑨山間部の堆積平野)に分け、そこに起こりうる災害の種類や起こり方の差異を検討した。 (2)上記の地形区のうち、⑧海岸について、房総半島北東部の屏風ヶ浦及び南部の地震性隆起海岸の地形、災害関連景観資料(航空斜め写真、各地域の段丘区分図など)の把握、収集を行った (3)博物館における「身近な地域の地形を知ることは災害に備えるための第一歩」をテーマとした教育普及活動として、千葉県立中央博物館平成25年度地学観察会「街なかの自然観察1~3」、地学講座「地形模型を作ろう」、ミュージアムトーク「9月1日は防災の日 関東大震災と房総半島南部の地形変化」を実施した。なお当初の計画にはなかったが、平成25年10月に発生した台風26号による伊豆大島土石流災害について、伊豆大島地質模型や航空斜め写真などを使って、トピックス展示「緊急報告!台風26号による伊豆大島の土石流災害」を行った(展示期間:平成25年11月2日~12月15日)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今後本研究を進めていく上で重要となる千葉県の地形やその成り立ちの類型化について、県内を9つの地形区に分けるという見通しがたったことから、今後はそれぞれの地形区ごとに起こりうる災害の種類やその具体例を検討し、土地の履歴を読み解く技術やプロセス、災害関連景観の資料化を行う枠組みができたことが大きな進展である。ただ25年度は具体的な地域の事例研究が計画通り進まなかったことから、今後地域の特性を踏まえた防災のあり方を示していくため、重要性の高い地域から進めていく必要がある。 博物館における身近な地形を知ることをテーマにした教育普及活動は、ほぼ計画通り終了し、また計画にはなかったトピックス展示も行ったことから、研究全般について、おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26~27年度については、9つの地形区ごとに、地形の成り立ちとそこの起こりうる災害の種類や起こり方の差異をモデル化し、図や地形模型などを作成する。平成26年度は、東京湾岸の台地と開析谷、埋立地、房総南部の海岸について事例研究を行う。27年度は利根川低地、九十九里浜低地を中心に行う。 博物館の教育普及活動は、事例研究に基づいて地域を選定し、災害関連景観の観察など講座・観察会を積極的に行っていく。 最終年度には普及書「土地の成り立ちを知って災害に備えよう―千葉県版―」の制作と展示を行う予定である。
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Research Products
(1 results)