2014 Fiscal Year Research-status Report
問題解決を基本原理に遡って振り返る学習支援に関する研究
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25350287
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
竹内 章 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 教授 (00117152)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 学習支援システム / 探求的学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、昨年度に扱うデータの概要設計を行っていた電子ノートを実装した。実装に当たっては、物理系を物理概念・法則を用いて理解していく過程について考察し、学習者が対象の系を物理的に解釈していくことができるように誘導するインタフェースを設計し実現した。 物理概念・法則は知っていても、それを現実の物理系に適用して現象を正しく分析し把握することができない学習者が少なくない。そこで、考え方を習得できるように、段階的に分析を進めるよう誘導することのできるインタフェースを提案した。分析は次の5段階ならなる。①物理系にある物体の運動を直感的/経験的に認識する。②物体が連続的に運動する範囲ごとに、物体間に働く力を認識する。③力の発生原因とその力の作用から、力間の因果関係を整理する。④力間、力と物体間に成り立つ物理法則を整理する。⑤各物体に働くすべての力と最初のステップで直感的に考えた物体の運動との関係を整理する。電子ノートにはこれらの分析に関係するすべての物理量や法則の関連を明示的に整理するためのツールを用意している。学習者が①から⑤の段階を繰り返しながら分析を進めることで、現象について深く考える態度を身につけるものと期待している。 実験装置を与えて、実験目的を設定し解析方法を作成させる大学1年生を対象にした物理実験に実現した電子ノートを導入して、有効性の評価を行った。評価では2ないし3名で構成されたグループごとに電子ノートを利用させ、グループメンバー間の会話内容とツールの利用履歴を収集した。収集したデータを分析した結果、電子ノートに提示された情報をきっかけにして現象にかかわる物理的要素を吟味するなど、力学的分析を誘発できていることがわかった。また、電子ノートの利用履歴から、一般的に力学で用いる力の図示だけからはわからない学習者の誤った認識を取得することが出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究が実現を目指している学習支援システムは、大きく分けると、学習者の入力を診断する機能、学習者が設定した実験系に応じて診断に必要となる因果ネットワークと定性的振る舞いを生成する機能、診断結果を利用して学習者との質問応答を行う機能、学習者が実験の設計作業を行う電子ノートの4つのモジュールから構成する予定である。今年度までに、診断機能と電子ノートを実現した。また、電子ノートを実際に実験の授業で利用して、学習者の誤った認識に関する情報を取得することが出来た。これは学習者との質問応答機能を設計する際に有用な情報をもたらす。因果ネットワークと定性的振る舞いを自動生成する機能の実装がまだすんでいないが、この部分は手作業で用意することも当初から想定していたところであり、本研究の本質的な部分の進展具合から判断すれば、おおむね順調に進んでいると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度得られた学習者の誤った認識に関する情報を分析し、学習者と質問応答を行う機能の設計と実装を中心に進める予定である。その後、電子ノート、診断機能、質問応答機能を統合して、学習支援システムとしての有効性を確認する実験を行う方針である。
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Causes of Carryover |
年度の終わりに研究発表のための旅費支出を行った。必要額は見積もっていたものの、予定よりも若干少ない支出ですんだ。支出額が確定したのが年度末間近であり、見積もりと実支出の差額がわずかに残った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
消耗品等の物品購入費用の一部として利用する計画である。
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Research Products
(1 results)